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無名の異人  作者: ALFRED
6/18

友達

遅くなった上に短くてすいません!おまけに内容も薄いかもです!

6話


友達


湖の畔で僕は朝日を眺めながら膝を抱えて座っている。一人で。




『…行っちゃうの?』


『えぇ、予定より少し早いですが前にも言った通りしばらく帰らなければいけません。』


確かに話は聞いていたけど…分かっててもやっぱり嫌だなぁ。

自然と顔は地面に向いた。


やっぱり嫌だなぁ…。


意心は自分の考えが相手に伝わるからお姉さんが困らないように本音を心の奥に無理矢理押し込んで悟られないようにする。

でもお姉さんは頭を撫でてくれて頭の回りがポカポカ暖かくなった。


『よしよし…貴方はとてもいい子です。寂しい思いをさせてしまって申し訳ありませんが…また会えるから。』


『うん…ねぇお姉さん?どのぐらいで帰ってくるの?』


『そうですねぇ、1ヶ月…程でしょうか。ごめんね、本当はもっと早く帰ってあげたいんだけど…』


『ううん。僕平気!お姉さんから教えてもらったあや取りとか、影絵とか、おとぎ話があるから!寂しくないよ!ほら、ワンワン!』


両手で影絵の犬を作りながら僕は精一杯明るく言う。

お姉さんに心配させちゃいけないから。


『っ!うぅ…そうですか。…絶対に!早く帰ってきますからぁ!』


『うわわ!』


お姉さんがギュルギュルと凄い勢いで頭を撫でたので少し熱い。でも、心は温かくなって寂しい気持ちや不安は少し無くなった。

これが三日前の出来事。森の木々の間から朝日が出たのを見ると地面に『3』と指で書き込む。

最近までは枝で地面に文字を書いていたけれど小さいし直ぐに折れちゃって書きづらいから女の子を助けた時みたいに指を釘みたいに細長くできるように練習してて最近ようやく出来るようになった。


指を元に戻して地面に書いた『3』の文字をじーっとみつめ、あともう少し…もう少しと心の中で自分に言い聞かせる。

きっといい子で待ってたらお姉さんに褒めて貰えるから。

でも早く会いたいなぁ…言いたいことあるのに。


ガササ


森の中から音がした。顔を向けるとそこに居たのは熊に似た動物だった。

だけど僕の記憶の中にある熊と違うのは全身の体毛が黒と緑の縦じま模様で最初に見たときはスイカみたいと思った。

熊さんは僕の方をじーっと見ると顔中に皺を作って牙を剥き出し突進してきた。


「グガアアアアアアア!」


ドドドッ!ドドドッ!低い足音を響かせながら一直線にこっちに来る。

みるみるうちに距離は縮まりドスン!と音を立ててぶつかり熊さんは倒れた僕に覆い被さるように立っていて涎を垂らしながら口を開ける。


「グアア!」


そのまま息をつかず僕の首に噛みつく。

だけど一回では満足できないみたいで二度、三度と何回も噛みついてきた。

そしてトドメとばかりに頭を激しく振って僕の頭がガンガンと地面に当たり肉を食いちぎる勢いだ。

僕は熊さんになされるがままだった。


「グルルルルル!」


聞こえるのは熊さんの唸り声だけ。


『熊さーん!ありがとう!今日もきてくれたんだねぇ!』


「グ、グア!?」


僕は感謝の気持ちを込めて熊さんの体を両手で撫で回す。ついでに両足でも。

実は熊さんはお姉さんが帰っちゃったその日から毎日僕の所に来てくれて今みたいに遊んでくれる。

最初は怖かったけどこの熊さんは優しくて手加減してくれるから噛み付かれても爪で叩かれても全然痛くないんだ!

お姉さん!僕に初めてのお友達ができたよ!


『よーしよしよしよし!!ありがとう!熊さん!』


「グ、グガアアアア!?」


『ウフフ!熊さんも喜んでくれてるみたい!』


太陽が少し高くなって回りも明るくなってくると熊さんは僕にお腹を見せてゼェ…ゼェ…と息をたてながら寝ていた。うーん?日向ぼっこかなぁ?それとも疲れちゃった?

太陽が沈むのを待ってたり熊さんと遊びながら過ごすとすっかり暗くなり熊さんは帰って行った。

また遊ぼうね!熊さん!

でも何でだろう?帰り際の熊さんの後ろ姿はいつも小さく感じる。


次の日の熊さんと湖に一緒に入って遊んだ。


『キャッキャッ♪』


ドボーン

「グボボボボボ!?」


その次の日は何と!いつもの熊さんより大きい熊さんと2人で遊びに来てくれた!

この日は僕達三人一緒にお相撲して遊んでもらった!


『よいしょお!』


ポポーイ

「「グガガアアアアア!?」」


そのまた次の日は森の中で鬼ごっこした!


『あーれ?熊さん達どこー?』

ガササササ


「「……!」」

ブルブルブル!


またある日は湖の大きなお魚を二人にプレゼントしたんだけど…電気鯰?だったみたいで皆で食べようとしたら感電しちゃった。ごめんね熊さん。


『うぅ…指先がビリビリするよぅ…』


「「………」」

ビクンッ!ビクンッ!ビクンッ!


そんなこんなで楽しい毎日を過ごして『10』日目。

今は昼間、熊さん達はまだ来ない。


『どうしたんだろ?いつもなら朝に来るのに…』


熊さん達が来るように願いながら森に顔を向けてしばらく眺める。

すると聞こえてきた。


「…グ…アァ…ァ!」


『!?』


悲鳴に驚いて森の鳥達が色んな声を上げながら空へ逃げていくのが遠くで見えた。

…今の悲鳴、熊さんの声?


……


気が付いたら森の中を全力で走ってた。

いつもみたいに両手を使わず頭に枝が当たっても気にせず二本足で走る。


走れ、走れ、急げ!


あの悲鳴が必ず熊さんとは限らない。

前の記憶の熊なら森や山じゃ一番強い動物だったはず。


『でもこの前の村人さん達が熊さんを駆除しに来たなら…』


でも人は危険な動物を駆除する事があるという記憶がある。

黒と緑の毛並みが赤く染まった熊さんのイメージが頭に浮かぶ。

首筋から背中にかけて何かが走るみたいに冷たさが広がって胸も苦しくなる。


『っ…熊さん!!』


自然と背筋を伸ばしたまま腰を曲げ、頭を突き出し、脇を絞ったまま肘を伸ばし腕は振らず足だけを動かしていた。

すると枝に邪魔されることはなくなり速度が増す。

すると遠くにスイカみたいな模様がみえた。


『あっ!熊さんだ!』


腰を低くして左足をたたみ、右足を伸ばして両手の指先を『釘』に変え地面に突き立てながら減速する。


土と小石が辺り一面に飛び散って地面を削るガガガっという音がうるさい。

勢いが強すぎて土煙が舞い回りが少し見えなくなったけど倒れた熊さんの所に辿り着いた。


『熊さん!』


土煙から出て見えたのは右に倒れている小さい方の熊さんと寄り添って僕の方を向いて牙を剥いていた大きい熊さん。

でも大きい熊さんは僕に気付いたら牙を引っ込めて力なく「オオン…」と呻いた。


小さい熊さんの後ろ足には矢が一本刺さっててるだけで他には傷らしい傷はない。

なのに小さい熊さんはお腹を必死に動かして浅い呼吸を繰り返してた。

取り合えず刺さってる矢を引き抜く。


『痛かったらごめんね!』


力を込めたけど矢は矢じりの所までしか刺さってなくて直ぐに抜けた。

どうして?

何でこれぐらいで動けなくなるの?

いくらなんでもこんなに小さな矢一本で…

もしかして?


『毒?』


そうだ。それしかない、でもどうやって熊さんを助けられる?

それが分からなきゃ意味がない!

考えろ。考えなきゃ。

どうするどうするどうする??!

うぅ…お姉さんがいたら…あの力できっと


『オイ…白黒、模様』


拙い言葉が聞こえた。この感じ意心?

混乱しかけた頭が冷えて顔を上げると大きい熊さんが僕を正面から見て意心で話し掛けてきた。


『頼ム、弟ヲ、殺シテ、ヤッテクレ』


『!!…何で!何で助けないの!!』


何で熊さんが意心を使えるのかは今はどうでもいい。


『弟ハ、モウ、助カラナイ』


『何で決めつけるの!分からないでしょ!』


『…親父モ、人間カラ、同ジ、矢デ、殺サレタ、ダカラ…』


『っ!…で、でも!』


『聞ケ!』


『!』


僕の体に何かぶつけられた気がした。


『…弟モ、コンナ、小サナ、傷デ、死ヌヨリ、強イ、オ前ニ、止メヲ、刺サレタ、ホウガ、報ワレル…弟ヲ、救ッテ、クレ、頼ム』


『……』


大きい熊さんはどこで覚えたのか、頭を下げお辞儀した。

いや、小さい熊さん、弟の顔を眺めてるだけなのかもしれない。

やっぱり家族の死別は辛い…んだろうな。

そして熊さんのお願いを聞いてふと頭に『尊厳死』と言う言葉が浮かんだ。


意味は分からない、お姉さんから教えてもらったこの国の言葉じゃない別の言葉。

多分人だった時の記憶の言葉かな?意味までは思い出せない。

でも訳の分からない『尊厳死』っていう言葉はこの場とはとても大切な言葉のような気がして僕の背中を押して決意させた。


『熊のお兄さん…分かったよ、家族が苦しむのは辛いもんね…』


『……スマナイ、手間ヲ、掛ケル』


『ううん、熊さん達友達だから…謝らないで』


そう、謝られる事じゃない。

これから友達を殺すのんだ、殺そうと思って殺すんだ、この前みたいな事故みたいな殺しかたじゃなく。自分の手で直接。


僕は指先を『釘』に変える。



『殺しを楽しんではいけない』

お姉さんの声が頭で響く。お姉さん、僕苦しいよ。これを楽しめる人がいるの?



右手を振り上げる狙うのは脳幹、ここを壊せばどんな生き物も殺せる



『他人を守るそのその心が大切なんです』

お姉さん…

死んでいく人の意思を守るために殺すのは良いことなの?悪い事なの?分からないよ。教えてよ。



倒れた弟の熊さんがこっちを見てる。

まだ目には光が残っていてまだ活力を感じる。

でも諦めたみたいに瞼を閉じて身体中の力を抜いていくのが分かる。


いつでもいい。


そう言われた気がした。


『デハ、アリガトウ。弟ヲ、苦シミカラ、救ッテクレテ。』


熊のお兄さんが優しく言ってくれた。

僕は返事をしない。

右手の指を揃え伸ばす、このまま尖った指先をぶつければ頭蓋骨を砕いて脳幹を破壊出来る…気がする。

僕は弟の熊さんを安心させるように頭をゆっくり2回撫でて目を覆う。

出来るだけ怖がらせたく無かったから。

熊さんの目を見たら殺せなくなりそうだから。


『………』


いざやろうとすると迷ってしまう。手が震えて、決意もぐらつく。

どうにか助けられないか、どうにかして…

と目の前の現実から目を背けて卑怯に逃げてしまいそうになる。

でももう駄目だ。弟の熊さんは今も苦しいんだ!

早くしなきゃいけないのに…

熊のお兄さんの言う通り苦しみから助けなきゃ……うーん?…苦しい?助け…る?

あっ!


『ちょっと待って!ねぇ熊のお兄さんこの矢は人間が射ったんだよね?』


『ン?何ダ、ソンナノ、ドウデモ』


『大切な事なの!弟が助かるかも知れないの!!』


『……下手ナ!、嘘ヲ!、ツクナ!』


『嘘じゃない!!友達の命が懸かってるのに嘘なんかつくわけないでしょ!早く教えてよ!もし人ならその人はどこに逃げたの!!』


『!』


熊のお兄さんがビクッと体を震わせる。

僕は気が付いたら地面に手を叩きつけながら体を乗り出してお兄さんの鼻先と顔がぶつかりそうになる。

でも気にしてる場合じゃない、もっと早く気付けなかった自分に腹が立って仕方がない。


『早く教えて!』

ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。未だに主人公は森の外に出ていないのでそろそろ街へお使いに行かせてみようかなぁ…と思っていましたが今回のスイカ熊さんのネタを思い付き主人公の成長に一役かってもらおうかと思った次第です。

すまない主人公よ君はまだ森の民だ。


熊の兄弟は主人公とガキバトルしてるつもりだったらしいです。


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