襲来
どうぞよろしく頼みます。
2話
襲来
高級品のフェアリーアンブレラを胸の前で抱えて嬉々として村へ使うフレデリカ。
待っていたのは村人の熱烈の歓迎や家族の笑顔、いつも子供扱いする友達の悔しがる顔では無かった。
風に乗って煙の焦げ臭い匂いがする。またここからだと小さいが悲鳴が聞こえた。
方向は自分の村のからだ。
この辺りには危険な魔物や盗賊は皆無で生まれてこの方出会った事は無い。
ならば煙の匂いから察するに火事だろう。誰か怪我をしてないか、自分の家族が住む家に火が燃え移ってないか心配になり転んだ後の事など考えず全力でフレデリカは走った。
村に近づくにつれ家を燃やしているであろう黒煙は以外と細い事が分かり火事はそれほど大きくないことを察して少し安堵する。
だが、それは一瞬だった。
村から吹いた突風が運んで来たのは強烈な血の匂い。
以前森で捕まえた「ジャンピーク」を村民総出で解体する際誤って血抜きの血しぶきを顔面で受け止めた事があるがそれの比ではない。
体験したことの無い悪臭に脳が半ば放心状態になったが村の人達が心配で村に向かった。
だがフレデリカは先程まで聞こえていたのた悲鳴が今では聞こえていないことに気付いていなかった。
村に着いたフレデリカは息をするのを忘れた。そこで見たのは家の塀や地面に染み付いた大量の血痕や小さな肉片だった。遺体はない。
呆然としながら村の中に入る。
見渡す限り血の海、歩く度にピチャッピチャッと革で編んだ靴が赤く染まる。
もしここで遺体が転がっていたなら彼女も無防備な状態で村に入ることはなかったかもしれない。
彼女は夢遊病患者のように頭を揺らしながら道の真ん中を歩いていく。
無意識に自宅の方へ歩いていたが突然扉が開き肩を掴まれ無理矢理家の中に引きずり込まれた。
「きゃっ…!」
悲鳴を上げようとしたが男の手が口に覆い被さり口を塞がれてしまう。
「ん!んんーん!」
フレデリカは抱き抱えられておりバタバタと手足を暴れさせ男の拘束から逃れようと抵抗する。
「痛っ…!痛い!待てフー!俺だ!俺!」
「!?」
小声ながらも強い芯を持ったら男の声を聞いたフレデリカはピタッと手足の動きを止める。
男の名前は「ヒル」金髪を短く刈り、村の中では恵まれた熊のような体格を持ちフレデリカの事をフーと呼び幼い頃から共に育った。
自分の事をいつも子供扱いして遊んでいるが家族当然の男友達だ。
「…見つかって良かった…よし、一度しか言わないぞ?質問は却下だ。分かるだろうけどここは危なすぎる…今すぐ逃げるぞ。」
ヒルは早口で言い終わると篭を捨てるように促した。非常にかさばるフェアリーアンブレラを持っていくのはこの村を捨てて隣の村か街に避難した時にお金に困らないようにするためだ。
私は両親がどうなったか聞きたいが…今はヒルの言う通り避難が先決だ。
無事であることを祈るしかない。
ヒルは床に置いていた木こりの斧を右手に短く持って扉の隙間から辺りを見渡す。
斧もヒルの体も血だらけなのに気が付いた。
…一体どんな戦いをしたらそんなに酷い有り様になるのか。
私は篭を置いてフェアリーアンブレラだけを胸の前で抱き抱えた。
「…静かに姿勢を低く、ゆっくり進むぞ?あいつら今は広場に集まってるみたいだから今しかチャンスはない俺から絶対離れず頭を上げるなよ?…」
私が一度頷くとヒルは深呼吸をして扉を開けた。
むせかえるような血の匂いがムアッと顔に押し寄せ鼻腔を犯す。
ヒルを先頭に私は後ろに付いていく、周りを見たら歩けなくなるような気がしてヒルの背中だけを見続けた。
私の家は比較的村の外側にあるため一番近い柵を越えれば直ぐに出られる。
だけど立ち止まって動かなくなった。
「…ヒル?どうしたの?」
「…サーシャおばさんだ。塀を梯子を使って越えるみたいだ。」
「えっ!」
サーシャおばさんと聞いて頭を低く保ちながらヒルの影から前を覗いた。
遠くだから良く分からないけど確かにあの長い赤髪はサーシャおばさんに見えた。おばさんは男勝りな性格でいつも旦那さんを尻に敷いていた姉さん女房だ。
「良しっサーシャおばさんと合流…」
するぞ! とヒルが言いかけた、その時
前の方からゴッ!と鈍い音と「ギィッ!」
と短い悲鳴が聞こえた。
私とヒルは慌てて伏せてサーシャおばさんに目を向ける。
サーシャおばさんはうつ伏せで倒れており傍らには拳大の石が転がっていた。
「まだ生き残りがいたか。危ねぇ危ねぇ」
建物の脇から一人の中年の男が頭を掻きながらサーシャおばさんに歩み寄った。
顔に見覚えがあった。名前は知らないが隣の村で何度か挨拶をしたことがある。
不精髭を生やし此方の挨拶に笑顔で返してくれていた。
今も以前と変わらない笑顔のまま血で汚れたツギハギの服を纏ってサーシャおばさんの髪を左手で掴み軽々と持ち上げる。サーシャおばさんは髪を引っ張られても呻き声を上げるが手足をダランと人形のようにぶら下げている。
男は小振りのナイフでサーシャおばさんの首、左右の二の腕と太股を躊躇いなく切りつけていく。
切られた所は以前血抜きをしたジャンピークの時のようにシューっと音をたてて辺りを一面に赤い霧を撒き散らす。
サーシャおばさんは青白く、血飛沫と一緒に命は地面の血溜まりに零れたのだと感じた。
「よーし!血抜き終わり!さっさと戻るか」
男はサーシャおばさんを引摺り広場の方へ向かった。
今…血抜きって?
「…ヒル?今あの男の人…」
「サーシャおばさんの事は残念だけど早く行くぞっ安全な場所で分かる範囲で説明はするから」
私の言葉を遮るようにヒルは言うと私の腕を掴んだ。
掴んだその手は力強く、微かに震えていた。
「…」
「…」
サーシャおばさんの血溜まりを踏んで梯子をよじ登る。あの男は居ない、私達はすんなりと塀を越え森へ駆け出した。
森へ入りどのぐらい進んだだろう?
いくら進んでも不安で男が後で石を構えているのではと何度も振り返った。
気が付くと太陽は木の葉に隠れるくらい低くなっている。いつもなら皆仕事に区切りをつけて家に帰っているだろう。
あぁ…本当なら今頃はシチューを食べていたのかもしれない。
そう思っているとヒルが立ち止り私に振り向いた。
「フー、ここまで来れば一先ずは安心だと思う。少し歩くと小屋があるからそこで休もう。かなりボロ小屋だけどたまに俺が干し肉持ち込んだりしてたから食事にもありつける。」
「…うん」
暫く歩くと生い茂る草木に囲まれた年期のはいった小屋が現れた。
小屋に入った私は倒れるように藁のベットに横になる。地獄から解放された気分で先程までの緊張感が一気に無くなる。
「フー、本当なら暖をとるためにも火を使いたいがあいつらに気付かれるかもしれないから今日は我慢してくれ…」
ヒルはそう言うと奥の方から干し肉を手渡してくれた。
「分かった。でも食べ終わったら何があったか教えて?」
「…いや食べながら聞いてくれ。と言っても直ぐに終わるけどな。」
ヒルは胡座をかき私に向き直って話してくれた。
「襲ってきた奴らは皆隣村の奴だった。知ってる顔が幾つかあったから直ぐに分かったよ。何事かと思ったら全員がナイフとか鉈とか、弓矢もいたな。とにかく何かしらで武装してた。…それに気付いた時にはあっという間だったよ。大人も子供も関係無い。虐殺されるだけだった。
…俺は腕っぷしには自信があったし運良くこの斧もあったから生き残れたよ。そのあとは逃げるのに必死だったよ…そこでお前に会ったんだ。」
ヒルは干し肉を一口噛み千切り飲み込んだ。
「でも奇襲だけで私達の村が潰滅するなんて…それに何で隣村の人達が私達の村を襲ったの?」
「襲った理由は分からない…でも奴らはおかしい…何日か前までは俺達と同じだったのに素人目でも分かるくらいのまとまった戦い方をしてた。」
「まとまった戦い方?」
「その…なんだ、俺が騎士になりたいって話したろ?」
「それ子供の頃の話でしょ?覚えてるわ」
「実はまだ諦めてなくてな街に行くときに仲の良い兵士に色々話を聞いたことがあるんだけど…連携って言葉知ってるか?」
「ううん?初めて聞いた」
「連携って言うのは簡単言えば…ほらジャンピーを狩る時に色々作戦を立てたろ?それと似たことをあいつらは俺達にしたんだ。」
「うーん…何となく分かったよ。」
「うん、実は連携ってのは長い時間練習が必要になるんだ。分かるか?俺達を潰す為だけに年をまたいで練習してたんだ。おかしくないか?一体何の為に…」
「…」
「…どうした?フー?」
「怖いけどやっぱり聞くね?私のお父さんとお母さん、ヒルのおじちゃんおばちゃんは?どうなったの?」
ヒルは床に目線を反らして、私の目を見て答えた。
「俺は自分だけ逃げるので必死で…皆どうなったか分からない…すまん!」
ヒルは頭を下げて後頭部を私に晒す。
だったら何で私の家に居たの?
なんて野暮な事は聞かない。
これがヒルの精一杯の気遣いなのだ。
多分私とこいつの両親は…
遺体を見てないので現実味が無いからなのか不思議と悲しくならない。でも、お父さんとお母さんがサーシャおばさんみたいに殺されたと思うと。
ん?まってよ?
「ねぇヒル?あいつらは広間に何しに行ってたの?サーシャおばさんを殺した男が言ってた血抜きがどうのって言ってたのと関係あるの?」
ビクッとヒルの体が一瞬大きく痙攣した。
何か核心を突いたのだろうか?
ヒルはゆっくりと顔を上げて言う。
「フー明日は朝一番に街へ向かって村の事を話す。信じてくれるか分からないけどそれが一番良いと思うんだ。」
「それはそうだけど質問に…」
「フー!」
ヒルが突然大声を出し今度は私の体が固まった。
「…ごめん。でも今日はもう寝よう。」
ヒルは有無を言わさせない雰囲気を出し広間の事は謎のままその日は終った。
私達はそのまま一睡も出来ずに小屋を出た。昨日から水を飲んでいないため口の中がカラカラだ。
途中木に成っている果実を食べながら進む。
今は地図も無くヒルの記憶と太陽だけが街にたどり着く為の道標だ。
勿論村に戻れば道があるがあんなところに戻るなんて選択肢は二人には発想さえ無かった。
疲れた体に鞭を歩くと木の根に足が引っ掛かり私は派手に転んでしまった。
「きゃっ!」
「おいおい怪我はないか?」
ヒルが私を抱き抱えようと頭をさげた。
ビュッ ズダン!
ヒルの頭があった場所に矢が通過し延長線上の木に深く突き刺さった。
ビィィ…ン…
と矢羽の震えが止まってから矢の飛んできた方向を見たのは二人同時だった。
「くそっ!動くんじゃねえ!」
私達と同じような継ぎ接ぎの服を着た男が次の矢を引くのが分かった。
ヒルはすかさず私を小脇に抱き抱え走り出した。
矢はまたもやヒルの頭スレスレを掠め木に刺さる。
「ヒル!あれって!?」
「もしかしなくても追っ手だろ!でも何で追ってくるんだよクソ!」
ピィーーー!ピィーーー!
すると後で指笛の音がした。こんな時の指笛って嫌な予感しかない。
もし私がさっきの男ならきっと仲間を呼ぶ。
「ヒル!急いで!」
「うるせぇ分かってる黙ってろ舌噛むぞ!」
私はヒルの首に腕を回しヒルの肩越しに後ろを見た。すると斧を持った男が二人左右から追いかけてくるのが見えた。
男たちはかなり早く斧を持っているとは思えなかった。
このままじゃ追い付かれて二人とも殺されてしまう。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
ヒルも今は良いけど私を抱き抱えたままでは長くもたないだろう。
せめてヒルだけでも助けるために私が…
「おいフレデリカ!余計なことすんなよ!」
ヒルが立ち止まり私を横目で睨み付けながら続ける。
「騎士様ってのは護るために居るんだ!覚えとけ!」
右から来た男が追い付いた。
ヒルが突然立ち止まった事でスピードを抑えきれない。
そこにヒルが男の脳天に目掛け斧を振り下ろす。
男は咄嗟に武器でガードするが熊のような大男の乱暴な一撃を止められず武器ごと頭を割られる結果になった。
すると左側から来た男が攻撃が止まったヒルの隙を逃さず横凪ぎで足を狙う。
「うおぉあぁ!」
足を狙われている事に気付いたヒルは咄嗟に間合いを詰め体当たりした。
男は吹き飛び斧を手離してしまう。
そのまま男は地面に後頭部を打ち付け白目を剥いて動かなくなった。
「フレデリカ!俺は強えんだ!変な気ィ使うな!」
ヒルは刃が潰れてしまった斧を手放し、気絶した男の斧を奪って踵を返し再び走り出す。
普段私をずっとからかってきた男友達の荒く逞しく頼れる姿を間近で見て胸の鼓動が少し早まったのを微かに感じた。
だがそれも直ぐに吹き飛ぶ。
「ヒル!また来た!今度は四人!さっきより速そう!」
「っ!クソが!」
今度の追手は鉈、鍬、鎌、少し遠くに先程の弓矢の男が走ってきている。
弓矢の男以外は斧を持った二人よりも速い。特に鎌を持った女は他の男達の追随を許さない。
「アッハハハハハハハハハ!」
女が笑いながら鎌を振りかぶった。
明らかに投擲の体制…
「ヒル!危ない!」
「アハハ!!」
ブンッ
女の鎌が音を立てて放たれる。ヒルも私の警告を聞いてくれて木を盾にするように動いてくれる。
しかし無駄な努力だと言わんばかりに鎌はヒルに吸い込まれていく。
「アハッ!ハハハハ!」
女が笑う。鎌の行方を想像して。嗤う。
ガギンッ!
「アッハハハハハ…あ?」
女の鎌が金属音を響かせて地面に転がす。
「ん!何だ!フー!何した!?」
ヒルは走りながら私に問いかける。
私が何かしたと思ったようだ。
「わ、分からないよ…いきなり鎌が…」
「おい!ヒル!大丈夫か!」
男の声が聞こえた。鉄の籠手と脛当、革鎧の胸当てを着た長身の薄茶の短い髪の青年だ。
「トレットさん!」
トレットと呼ばれた男は此方に駆け寄ってくる。どうやらヒルの知り合いのようだ。私達の隣まで来ると並走してきた。
「ヒル!短く詳しく説明しろ!」
「村があいつらに襲われました!皆殺しです!」
「良し!じゃあ殺しても問題ねぇんだな!?」
「はい!でも油断しないで下さい!あいつら連携がとれてます!」
トレットがじろりと睨む。
「…ヒル?舐めるなよ?こちとら素人じゃねぇんだ…パール!殺れ!」
トレットが叫ぶ。すると数秒間間が空いた後追ってきた集団の中から
パパパパパパパンッ!
という音が火花と一緒に鳴り響いた。
追手は光と音で反射的に足を止めてしまう。
そこに黄色い液体が入ったビンが茂みの奥から4つ追手の先頭に立っていた鉈男二人に投げ込まれた。
ガラスが割れ液体が男達にかかった瞬間二人は火だるまになった。
「グアアアァ!」
「ぎゃああ!」
二人分の炎眺めているとトレットが剣を抜き放ち後ろに走り出す。
「ア~ハハハハハハハハハ!」
予備があったのか女が再び鎌を持って襲ってくる。今度は投げることはせず、接近して確実に仕留めるつもりらしい。
「…確かにこんなのが自分の村に襲って来たなら恐ぇよな?」
女は木を蹴り三角飛びでトレットの制空権を奪う。
「だけど…」
ドバキッ!
トレットの剣が女の首を骨ごと貫き、胴と首が千切れドサッと音を立てて事切れる。
「そんな戦いかたじゃ…死ぬぞ?」
涙を流しながら嗤っている生首にトレットは説く。
安全が確保され、ヒルは私を地面に座らせ緊張と一緒に息を吐き出す。
「いやぁ…トレットさん、助かりました。お陰で命拾いしました。」
「あ、あの!ありがとうございました!」
ヒルは地面に座り込み、私は地面に頭を擦り付けてお礼を言った。
「あはは!お嬢ちゃん、そんなことしなくて良いよ!ヒルとは友達だしお互い様だよ」
トレットは方膝を付いてしゃがみこみ私の頭を撫で始めた。
「う!う~…」
「トレットさん、そいつ俺と同い年です。」
「え?えー!!ご、ごめんなさい!つい!」
「いいんですよ。そいつ慣れてますし?」
「確かにそうだけど…ヒル!何であんたが言うの!て言うかいつもあんたが!」
「おっと!忘れてたトレットさん。こいつはフレデリカ、フレデリカ?ご挨拶は?」
「あっ、初めまして、フレデリカです。って…また子供扱いして!……うぅ…」
溜まりに溜まった緊張感と恐怖が一気にそげ落ち、安心してしまったら涙が溢れてしまった。自分や友達に遠慮なしに殺意を向けられ死にかけたのだ。ヒルは何故か平気なようだがただの村人である私が泣いたって仕方がないだろう。
「たく…」
ヒルは膝立ちになり、私を抱き寄せる。
「良くやった。」
たった一言だったが普段見せない優しい行動と言動に堪えたかったが後から後へと涙が止まらなくなり、知らずのうちに声を上げていた。
「トレットまずいぞ…」
不意に声が聞こえた。静かな声で短かったが緊迫感が十分に伝わった。
声のする方向を見てみると黒いローブを纏った女性が立っていた。
青色の瞳、黒髪から覗く黒い猫耳、彼女は恐らく猫人の種族なのだろう。たまに偽物もいるが忙しなく動く猫耳が本物である証拠である。
「パール何があった?」
「囲まれつつある。早く移動しないと間に合わない。」
「さっきの奴らの仲間か?数は?」
「多分こいつらの仲間。数はわんさかといる。」
数瞬トレットは黙り混むと再び口を開ける。
「パールお前が先行して俺達を誘導しろ。今は一般人がいるから道は選べ。」
「了解」
パールは短く返しローブの機能を発動させる。パールの姿が薄くなりやがて消えてしまうと、微かな足音を残して気配さえ消えてしまった。
「ヒルはその子を担いで俺に付いてこい。離れるなよ。」
「わ、分かりました!」
パールの技を見て放心仕掛けたヒルだったが自分の役割を思いだしフレデリカを抱き上げる。ただ今度は荷物を持つような格好ではなく、いわゆるお姫様抱っこだ。
「ふぇ?」
突然の事に頭が混乱して変な声が出てしまった。
「…しっかり捕まってろ。」
「…はい……」
ヒルが凛々しくそう言ったのでびっくりして思わず敬語で話してしまった。
「…ちゃんと護れよ?騎・士・様?」
トレットはニヤつきながら騎士様の部分を強調して喋るとヒルの顔が真っ赤になる。
トレットとパール、二人の助っ人を加え私達への襲撃は再開されようとしていた。
主人公「ブクブクブク…」




