幕間
どうしても中途半端になるので冒頭予定だったものを投下
幕間
かつては穏やかながらも平穏な日々が流れていたであろうその村は侵略者によって暖かい家庭が築かれていたであろう家々は炭と煤に作り替えられ、変わりに四角い鉄の塊と五角形のテントが鎮座していた。
そして、その侵略者の長たる白い服を着た少年、或いは少女が深緑のコートを着た黒い鉄面を被った側近たちを横に携え前方にいる集団に言葉を掛けていた。
「皆さん!僕の大好きな被験者の皆さん!ついにこの日が来ました!」
明らかにサイズが大きい白衣は裾は地面ギリギリに垂れており、袖は手が出ておらず白衣の子供が身ぶり手振りで話をする度にもて余した袖は腕の動きに合わせて暴れていた。
「今!ここにいる被験者の皆さんは多大なる犠牲の上に立って存在していて…具体的には廃棄357、失敗71、事故13ですね。そう!あなた方はその中の施行回数の中で選ばれた希少な被験者さん達なんです!」
被験者と呼ばれた集団の中には明らかに子供も混じっており全員鮮やかな緑色のコートを羽織り大きなリュックを背負って鼻から下を隠す鉄面の仮面を装着している。仮面から溢れる呼吸音はコー、ヒューと無機質な音を繰り返し休めの体勢で整列し瞼一つ動かさず白衣の子供に注目していた。
「汗を流し血を流し涙を飲んだ日々は今日この日の為にあります!ですが今日を乗り越えてもまた新しいスタートでしかありません…悲しい事ですがここにいる全員が戻ることは叶わないでしょう…」
白衣の子供は分厚い眼鏡を外しハンカチで目元を拭う。
「ですが私は敢えて厳命します!私にデータを、生きてここに戻り私にデータを提出してください!以上!」
集団は踵を音を立てて合せ一糸乱れぬ動きで白服の子供に敬礼する。
すると集団の後方の地面に巨大な穴が出現する。
穴の中に空気が流れ風が発生し大きな街が写っている。
「各員突入体勢!」
集団は回れ右をし、ヘルメットと円いゴーグルを装着、そしてL文字型の黒い物体を両手で持ち待機する。
「対人猟試兵大隊!出撃!」
対人猟試兵大隊は迷うことなく穴に飛込み姿を消していく。
穴を抜けた先にあるのは曇一つない大空。
頭を下にしたまま目的地に自由落下で急行し命令を遂行せんとする。そこに意思はない。
かつて心優しい村人だった彼らに与えられた命令は
<殲滅>
防壁街ジュガルガンに地獄が迫っていた。
ここまで読んで頂きマジでありがとうございます!