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無名の異人  作者: ALFRED
15/18

下から

最近一話から最新話まで一気に読んでいただいている片がいらっしゃるようで大変嬉しいです!( ´∀`)

15話 下から


『うわぁっ!まただ!』


何とか上に向かって進もうとしてるけど少し動けば瓦礫が崩れて全然進めない。

一緒にいる男の人と女の人はまだ目が覚めないし…大丈夫だと思うけどやっぱり心配だなぁ。


うーん…どうしよう。手を使ったら直ぐに崩れるからなぁ、でも道具もないし…。

…痛くて嫌だけどウネウネさん増やしてみうかな?でも増やしてもどうすればいいんだろう?うーん…


『…とりあえずウネウネさん出してみよ』


えい!


バリッ!と音が出て痛いのを我慢しようとしたけど今度は全然痛くなかった。

それに肩からウネウネさんを出した時よりも思い通りに動くし力も強いみたい。

何でだろ?

でも何だか上手くいきそうな予感がする!


『よし!もっと増やそ!』


バリリリリリ!


沢山ウネウネさんを出そうと思ってやってみたら腰の辺りの背骨の両側に3本ずつウネウネさんが出てきた。


『おお!凄い!』


何にも変な所もないし、このまま上に掘って行けるかも!…手でやるのと何が変わるんだろう?

でもなぁ…このままだと男の人と女の人が危ないかもしれないし…

取り合えず上に伸ばしてみようかな?


ん?うわわ!凄い!もう外に着いた!それにまだ伸びそう!

凄い!凄い!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「な、何だよこれ?」


「ヒルぼさっとするな!走れ!」


「は、はい!」


突然足元の瓦礫を掻き分け白く長い触手、一度目撃したパールとトレットは一目見て異人、『シャドーフォレスト』の物だと気付き自分達を取り囲むように伸びてきた触手の間を駆け抜けて距離を取る。

すると触手はトレット達が居なくなったタイミングで外側に勢い良く倒れ僅かに地面を揺らす。

突然の出来事でパニックこそ無いものの冒険者や衛兵達に動揺は広がった。


「ヒル!予定変更だ!お前はギルドに戻って想定戦力の増加を報告しろ!」


「分かりました!っけどトレットさん達は!?」


「はぁ…ヒルはお馬鹿?」


わざわざローブのシェームの効果を切って肩越しにヒルを睨むパール。

クラルスティーの裾からは重りの付いた鎖がジャラジャラと音を立てて零れ落ちる。


「ここからが私達の仕事、でしょ?」


「そういう事だな」


トレットも氷牙刃(アイスサーベル)と盾を構える。


「俺達の心配するな、元々時間稼ぎ程度の戦闘だしな。それに俺達の他にもパーティーは居るんだ。本当に心配なら早く行け…それに」


「新人と臆病者は下がれ!」


「ほら来た」


辛うじて残った高い石垣の上から凛として遠くまで届きそうな男の声が辺りに木霊する。

片方しかない丸眼鏡の奥には切れ長で知的な蒼い瞳が輝いている。

瞳と同じ色の髪は全て後ろに流れており何かで固めているのか、少々の光を反射している。

首からは懐中時計を下げており異国の軍服を模して作られた制服を着込んでいる。


冒険者パーティー『孤軍』のリーダーであり名前をパトリック。

『孤軍』での彼の役割は後衛である魔導師であり司令塔。前衛への魔法的な援護や周囲の観察力、そこからもたらされる的確な判断能力と決断力は九死から確実に一生を得ると言われている。

几帳面で神経質な性格であるともしれられ私生活ではともかく実戦では同業者達に信頼されている。


黒駆(スキップシャドー)の二人!この中でシャドーフォレストの戦闘経験があるのは君達だけだ!何か情報はないか!?」


恐らく魔法の補助があるのだろうが良く通る声だとトレットは思った。


「報告以上の情報はないが触手の数と大きさが増してる!俺達に任せて様子を見ていて欲しい!」


トレットが異人の事についてギルドに報告したのは身体的な特長や戦闘スタイルは勿論白い触手。両断された足が独立して動き、何事もないように再生出来ること、恐らく冷気に弱い事に一度見たり受けた魔法や技をある程度までは確実に模倣することが出来るという事。


「それともしかしたら呪縛師の呪術も模倣しれるかもしれん!注意してくれ!」


一度頷いたパトリックは声を張り上げてシャドーフォレストを包囲するように指示を出す。

はっきり言ってトレットが言っているこの役目は必要であるがかなり危険だ。いくら戦闘の経験があると言っても以前はリオザが居たことが幸いしていた場面がいくつかあったのに今ここにリオザは居ない。

倒れたあの日から目覚めないのだ、恐らくシャドーフォレストとの主従契約と関係があると思われたが呪解師、治癒師に見せても原因が解らず今は施術医院で眠っている。


「ヒルそれとも何か?リオザが居なきゃ俺達は負けると思ってるのか?」


「あっいや!そんなことは!」


「だったら行きなさい、パトリックも言ったでしょ?新人は下がれって」


パールは少し冷たい口調で言ったがその言葉がヒルの評価を物語っていた。


「…分かりました。役に立てずにすいません!」


そう言いながら以前より多少早くなった走りでヒルは去っていった。


「よし…これでフーちゃんとの約束は守れた」


「パール?いつの間にフレデリカさんと仲良くなってたんだ?」


「内緒」


「まぁいいや。さてそろそろかな?」


シャドーフォレストの触手が瓦礫の下の物を引き摺り上げているように少しずつ山なりに折れ曲がっていくのが見えた。

それにしたがい瓦礫も地面から盛り上がっている。


「総員警戒!『痛覚鈍化(エイペラルゲィジ)』」


パトリックはトレットとパールに支援魔法をかけた。

痛覚鈍化(エイペラルゲィジ)は痛覚による集中力や思考を未然に防ぐ為の支援魔法だ。

俊敏性や防護性を上げれば突然の身体的な変化にトレットとパールが瞬時に対応出来ないとパトリックは判断した。

そういった強化魔法の効果は魔導師の力量に左右され長年連れ添った魔導師がパーティーに居なければ実戦では逆に危険だ。


パールはシャームに魔力を流し姿を消すがトレットはパトリックに親指を立てて感謝を示す。

そして盛り上がっている瓦礫に目を向けた。


「さて、お前はお前のご主人様の言う通り良い子なのか?」


ガラガラガラ…


盛り上がった瓦礫の山の頂上からシャドーフォレストの姿は一同の予想していた姿とは異なっていた。

一糸纏わずその白い肌を大いにさらし、両手両足を重ねて踞っていて幼児を思わせる。

以前とは違い両肩から生えていた二本の触手とは別に腰の辺りから三対六本の新たに生えていた。


六本の触手で浮いていたシャドーフォレストは反転し瓦礫の頂に降り立つ。

その姿も一同を驚かせた。

異様に膨らんだ腹部を両手で大事そうに抱えて。

まるで中のものを起こさないように気を使いながらゆっくりと…ゆっくり降り立ったのだ。


その姿は子供を愛でる母のようでもあった。


そしてシャドーフォレストは左右をゆっくり見渡し知り合いに巡り会えたかのような仕草でトレットに向かって右手を親しげに振った。


さて、あの時の言葉が主人の前だけだったのか。

もしくは本当の言葉だったのか…

リオザが目覚めないのはお前の影響なのか、賭けになるが友になれるか敵になるか見極めなきゃならない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『よし!上手くいった!』


やっと外に出られたぁ…良かった…早くこの人達を病院に連れていかないと!

…あれ?何だろ?武器持ってる人達が沢山いるぞ?

はっ!もしかしてここを壊したの僕だと思ってる!?

違うよ!欠陥住宅だったんだよ!?僕なにもしてないよ!

でもぉ僕が言っても誰も信じてくれないよね…

うぅ怖いよ…

あれ?トレットさん!?


『トレットさん!助けて!』


あっそう言えばトレットさんには僕の言ってること通じないんだっけ?

まぁいいや。

僕は一歩踏み出す。


「…動くな」


えっ?何で槍を向けるの?…トレットさんも僕の事犯人だと思ってるの?

僕…捕まるのかな…でも、せめて。

僕はお腹の二人をゆっくり地面に下ろす。


「動くなって…!」


『待って!ちょっとだけ待って!もう終わるから!』


二人を包んでたウネウネさんをほどいて地面に下ろしてから三歩後ろに下がる。

んっと…両膝をついて、両手を…頭の後ろにつけるんだっけ?

確か…このポーズが降伏のポーズだっけ?

僕は何もしてないけど男の人と女の人も何も悪くないもん。

そうじゃなくても怪我してるから早く病院に連れていかないと行けない。

トレットさんに通じるかな?


「……」


トレットさんが近付いて二人にの様子を見ているのが気配で分かる。


「…もしだ、もしあの時の謝罪が本当なら、触手をしまって這いつくばってくれ」


『うん分かった』


聞こえないだろうけど思わず返事をしちゃった。

僕はトレットさんの言う通りにする。

すると首元に薄くて冷たいものが当てられた。


「俺がその気になればお前は一瞬で氷り漬けだ。…動くなよ?」


首が少し凍てつくのが分かった。トレットさんの言い方も冷たくて怖かったけど何だか優しかった。


「パトリック!大丈夫!クリアだ!早く呪縛師の二人を施術医院に運んでくれ!」


「待ってトレット」


一瞬パールさんの声が聞こえると太股の間に何かが突き刺さる感覚がすると体が動かなくなった!

えっ!何!刺さってないよね!?


「これくらいしないとパトリックは動かない」


「そうだな…すまないパール」


「どういたいまして」


「分かった!黒駆(スキップシャドー)の二人ご苦労!治癒術が扱える者は呪縛師の二人の元へ!そこの衛兵諸君は担架の準備を頼む!その他の冒険者はシャドーフォレストの監視及び拘束!必要なら殺せ!」


男の人が色々な事を言って皆に指示を出してる。

あの人がパトリックって言う人かな?

じゃあシャドーフォレストって僕?どういう意味なんだろ?

…待って殺すって何?僕じっとしてればいいのかな?


「ふぅ…何事もなく終わって良かったね」


「油断なんて珍しいなパール?まだ終わってないぞ?」


「それならトレットは気を張りすぎてた。らしくない」


「そうか?」


「まぁこの子とリオザが同じタイミングで気を失ったんだから下手にこの子を傷付けたらリオザにも影響ないかとか。トレットは心配してたからね。」


この子が素直で良かったね。

最後にパールさんはそう言った。リオザさん体調悪いんだ。

ちょっと心配だなぁ。


「っんだよんだよ!もう終わったのかぁ~?ちっ…折角暴れられるかと思ったのによ?」


ドカンドカンと大きな足音を立てて女の人?の声が近付いて来る。

足音を聞いてみると結構大きな人見たいだけどここからじゃ見えないなぁ?


「何?またじゃじゃ牛?また邪魔しに来たの?」


えっ?何だかパールさん怖いよ?


「あぁ?居たのか泥棒猫、小さくて貧・相だから気が付かなかったぜ」


太股の間に刺さってる何かがプルプル震えてるのを感じる。

パールさん怒って手が震えてるのかな?


「パール、抑えてくれ…ジェシカ何しに来た?」


「何って?勿論お前の手伝いだよ…っと!」


『!?』


ズン…と背中に何か重いものを乗せられた。


「おっ?こいつ意外と頑丈だな?…トレット~お前のみたいだな?」


「…トレット?こんな女と?」


「おいジェシカ!誤解招くような事言うんじゃねえ!パールお前も真に受けるな!」


「カッカッカッカッ!いやぁ~すまねぇ!パールさっきのは謝る!けどおもしろかったぞ!」


「そこ真面目にやれぇえーー!」


パトリックさんの怒鳴り声で二人のケンカは終わって鎖とか光る文字が書かれた布とかで僕はぐるぐる巻きにされた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして僕はジェシカさんが持ってきた檻の中で座ってる。

この時初めてジェシカさんの事見たけど牛さんの角が頭から生えた大きな女の人だった。

身長は僕の胸ぐらいはあって真っ赤な髪は長くて髪型はポニーテールっていうんだっけ?

顔は笑ってる時のリオザさんみたいでちょっと怖いけど綺麗な人だと思う。

着てる鎧は胸の所と腰と両足だけ鉄の鎧を付けてる。

寒くないのかな?

でも一番凄いのはお腹で六つに割れて腕の筋肉も凄かった!触ったらどんななのかな?

あと、おっぱいが大きい。


「なぁ?本当にこいつがあのシャドーフォレストか?めちゃくちゃ大人しいじゃねえか?」


「ふむ、最初こそ驚いたがリオザ氏との交戦報告とはかなり異なるな?トレット氏、本当に?」


「あぁ報告したと思うが何でも友達の森爪(クロウサイン)が襲われて怒っていたらしい」


「主従契約を結んだリオザ氏の証言だ、信頼に値する。だが信じられんな…どんな文献にもこんな姿の生き物は見たことはない…顔も生殖器も見当たらないとは…うーむ。興味深い」


「あたいは…一撃で二十人殺した技に興味あるけどなぁ~」


ジェシカさんは僕を見て右手に持ってた大きなハンマーをゴンッと地面に叩き付けて笑いながら言った。

うぅ~…その顔怖いからやめて欲しい…


「パトリック?」


「うおっ!パール氏か!?…ゴホン、それで何か?」


「うんっこれからは私達は何をすればいい?」


「シャドーフォレストをこのまま監視しつつ領主様とギルドマスターが来るまで待機。その後はお二人に任せる」


「了解」


『ん?あれ?皆気付いてないの?』


この時上の方で嫌なモノを感じたのは僕だけだった。

ここまで読んで頂き誠にありがとうございます( ノ;_ _)ノ

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