夢から覚めて
いつも中途半端でつまらない作品ですがいつも読んで下さっている方に報いれるようにこれからも頑張ります!
14話 夢から覚めて
ゴツン!
『あぅ!?…』
おでこを強くぶつけてビックリして目が覚めた。うー…ん!久しぶりに寝たから何だかスッキリした!
でも何で僕は急に寝たんだろう?この体になってから今まで眠気も無かったのに?
とりあえず起きよ、あれ?僕縛られてる?
「先輩!もう封印が破られます!」
「弱音吐くな!見てみろ奴の抵抗も弱まってる踏ん張れ!」
「でもっ!」
「俺達しか居ないんだ!俺が30秒粘る!拘束術式を完成させろ!」
「っ!分かりました!」
男の人と女の人の声が聞こえる。
僕は今体中を白い布でグルグル巻きにされて足を縛られて胸と顔が床に着いた状態で吊るされてる。多分頭が上の状態で吊るされてたのが何かの拍子でほどけてこうなっちゃったんだと思う。
うーん…でもここ何処だろ?頭を動かして見えるたのは四角い石で出来た床と壁、それに灯りなのかな?白く光ってる石が壁に埋まってるのがチラッと見えた。
「先輩終わりました!」
ん?そう言えば封印とか拘束術式って何?……何だろ嫌な感じがする…
「よしっやれ!」
「はい!…絞めろ蛇縛!」
『痛っ!?痛い痛い痛い!』
体に巻かれた白い布が一気に締め付けてきた!いや?、よく見たら頭が無い薄い青色の大きな蛇さんが僕に巻き付いてる。
やっぱり嫌な事が起きた!何でこんなことになってるの!
「よし効いてるぞ!俺はこのまま封印を修復する!もう少し粘れ!」
「はい!でも早くお願いいたします!予想以上に頑丈ですっ!」
すると白い布が少しずつだけど顔に貼り付き始めた、これが封印の修復?何だかよく分からないけどこれは本当に嫌な感じがする!怖い!早くこの布を取らないと!
『んぎぎぎ!』
「くっ!こいつまた!」
『もう!…少し!!』
バリッ!
布が顔の左半分に張り付いた所で何とか左腕を出すことが出来た。
そこからすかさず顔についた布を剥ぎ取る。
布が独りでに動いて僕の頭を包み込むんだから怖かった…
でも、このままじゃまた布が顔に来るかもしれない。早くこの布を全部取らないと!
え?っうわ!
「蛇縛!蛇縛!蛇縛!!」
男の人が叫ぶ度に布がさっきより強く締め付けて凄く苦しくなる。
ウグウゥゥゥ…何でこの人達こんなことにするの?
僕何もしてないのに!もう怒るよ!
『ウンリャアー!』
ビリリリリ!
僕は仰向けになって胸の部分の布をビリビリに破いた。すると青色の蛇さんは小さな光になって消えた。
フフーンどうだ!…頭無いから生き物じゃないよね?僕殺してないよね?
「せ、先輩!」
「もう10秒粘れ!…そうすれば避難が完了すると連絡があった!」
「避難!?それって…」
「………」
「…っ!多頭蛇縛ァ(デュード・ディア)!」
『うわぁ!』
右腕が出た所で残った足の部分の布に蛇さんが巻き付いてきた。さっきと違うのは少し小さくて沢山居ることと今までで一番強く締め付けてくる事、僕は慌てて両手で布を破る。
さっきよりも布も丈夫になってて破りにくいけどどうにか破いて狭い部屋に立った、本当に狭くて天井に思いっきり頭をぶつけて少し頭が痛い。
そして今気付いたけど僕は裸だった。
『えっ!服は!?何で裸!?』
「先輩!まだですか!」
男の人が杖を僕に向けてそう言った。
うぅ…恥ずかしいから服を返してよ…
「もう…終わったよ…秒読みも始まってる」
「…ふう、そうですか…」
「すまない…巻き込んで…」
ん?何だろ?男の人が杖を下ろして腕の力が無くなってダランってしてる。
女の人も何もしないでただ立ってる。
「……良いですよ、貴方と一緒なら」
「えっ?」
『ん?』
何だろ?今の二人…んん?何だかよく分からない。
『…ね、ねえ?ここ何処?』
「先輩、残り時間は?」
『僕の服は?』
「あ、えっと3秒くらい?」
『ねぇ?ねぇったら?』
「分かりました。…ふう、動くなよ?」
「え?ちょっ、え?」
『えっ?えっ??』
うーん?無視されてる?と言うより聞こえてない?意心が使えない人もいるのかな?
…ちょっと待って?残り時間って何?
男の人は女の人に歩いて近寄ると自分の方に抱き寄せて。
『へっ!?』
「!?」
「…」
キスした…
何してるの?この人達?
女の人は凄くビックリしてたみたいだけど瞼を閉じて男の人に抱き付いた。
うわあ…見てるだけで僕もドキドキしちゃう。
でもこのドキドキは次の瞬間別の意味になった。
ゴゴゴゴ…
低い唸り声のような音が部屋全体に響き渡る。すると天井が少しずつ下に凹んで今にも崩れそうになる。
慌てて側にあった扉を開けると上に続く螺旋階段の壁も歪んできてた。
これってもしかして!?
『早くこっち来て!ここ欠陥住宅だよ!』
二人に呼び掛けるけど抱き合ったまま動かない。
んもお!!
僕は二人に駆け寄って両手で抱き抱える。
「うわ!」
「きゃっ!」
早く行かないと!叫ぶ二人を無視して階段を駆け登る。
うぅ!長いよこの階段!それに壁が歪んで狭いから走りづらい!
ズズゥン…
すると後ろの方で重い物が崩れるような音が聞こえた。もしかしてさっきの部屋が崩れた?危なかったぁ…もう少し遅かったらと思うと…。
すると今度は階段の上の方から瓦礫が転がり落ちてくる。
『早く早く!』
でも僕たちを上から押さえ付けるみたいに壁が崩れた。
『!?』
僕は慌てて二人をお腹で包み込むみたいに丸くなって瓦礫の津浪に耐えて前に進もうとするけど。凄く重くて二人を潰さないようにするので精一杯で両手をついたまま動けなくなった。
『…止まった?』
どれぐらい経っただろう、僕達はかなり長い時間瓦礫に埋もれて閉じ込められていた。
周りは真っ暗、じゃないかな?光る石が瓦礫の間から少しだけ僕たちを照らしてくれてる。
下を向くと男の人が女の人に覆い被さってた、女の人は男の人を抱き締めたまま二人とも動かない。胸が動いてるから息はしてるんだろうけど。
どうしよ…僕は瓦礫を支えて動けないし、誰かが助けに来てくれるのを待つ?
でも二人が危ないかもしれない。
うーん…よし!上手く出来るか分からないけどウネウネさんを使お!
『…と思ったけどウネウネさんはどうやって出すんだろ?』
あの時は確か肩に穴が開いててそこからウネウネさんが出てたけど…今は肩が治ってて穴が無いんだよね…誰かが治してくれたのかな?
…もしかして穴が無くても出せる?
んんー…分かんないけどとりあえずやってみよ。
『お願い!ウネウネさん!』
……あっ。体の中で何かが動いてる。ウネウネさん出てきそう!
んん!…………
んんん!!……………
ビリリリッ
『痛い!!』
今度は本当に痛かった!!ウネウネさんが皮を突き破った時本当に痛かった!!何でこんなに痛いの!
…普通に考えたら当たり前だよね、皮を突き破ってるもんね。うん。
んーと…ウネウネさんが出てくれたから取り合えず出口探そうかな?階段は上にしか無かったから出口も上だよね?
ウネウネさんを細くして瓦礫の間から出口を目指して上に向かって進ませた。
うーん?意外と外までの距離は長いなぁ…
あっ。冷たい、それに硬くて…うわ!動いた!
慌ててウネウネさんを引っ込める。
さっきの何だったんだろう?
生き物だったのかな?だとしたら外?
まぁ何とかして上に行くしかないんだけどね。
僕は多分だけど外までの距離は分かった、次はどうやって男の人と女の人を運ぶか何だけどこれもウネウネさんの出番!
…痛いけど我慢してウネウネさんをもう1本出す。
バリッ
『痛!』
よ、ようし…これでこの前みたいに肩からウネウネさんを2本出すことが出来たぞ。
あとはウネウネさんを二人まとめて包むみたいに巻き付けてっと。
…顔にウネウネさんがあったらやっぱり嫌かな?
頭は出しておこうっと。
よし!準備完了!これで二人は落とさないぞ!
じゃあ出発!
…どうやって出発しよう?
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「ん?うわ!蛇か!?」
中古だが買ったばかりの脚甲に頭の無い白い蛇のような物が巻き付き、新人冒険者ヒルはそれを振り払う。
たとえ幸運を運ぶと言われる白蛇でもいきなり足に巻き付かれたら大男でも肝を冷やすだろう。
ヒルが居るのはジュガルガン砦跡地、その地下空間の入口があった場所。
ここに異人、ギルド登録呼称『シャドーフォレスト』が二人の呪縛師の自分達を犠牲にしてシャドーフォレストもろとも生き埋めになっている。
依頼内容は可能であれば生き埋めにされた呪縛師2名の救出。
シャドーフォレストの捜索及び遅滞戦闘。
何故殺害ではないのか、何故生きている前提での依頼なのか、それは依頼を出した本人達しか分からない。
「ヒル!どうした!」
「あっすいませんトレットさん!何でもありません!」
「…たくっ心配させんな」
駆け寄って来たのはヒルの命の恩人であり、なかば冒険者として師匠になりつつあるトレット。
全身を鎧に包まれ正に完全武装、この依頼の意気込みが見てとれる。
それはそうだろう、異人が関係しているのだ。
異人のパワー、スピード、リーチ、生命力、パールの影縫いを自力で脱け出してしまう不可解な能力を直に見ているトレットはこれ以上ない程神経を研ぎ澄ませている。
それでなくとも今回の依頼は領主とギルドマスターの連名の依頼だ、ジュガルガン中の即時活動可能な冒険者、衛兵は現場に到着し各々の代表が到打ち合わせを始めていた。
「トレットさん打ち合わせに参加しないでいいんですか?」
「…私とトレットは戦闘要員」
「うわ!」
パールは纏っているローブ、クラルスティーの効果で透明になったままヒルに話しかける。
突然パールの声が真横から聞こえたためヒルは大きく仰け反り尻餅を着いた。
「っ!!」
その拍子に石材の角がどこかに当たったのか尻を突き出し踞った。
「キャハハ!」
「…パール……」
トレットは手を額に当て横に頭を振る。
パールは透明なままだがトレットにはヒルの尻に指を指し、腹を抱えて笑っているパールの姿が容易に想像できた。
「下手に脅かすのは止めてやれ…怪我したらどうするんだ?と言うかもうしてないか?」
「だって最近トレットは驚いてくれないからつまらない」
「…何回お前にやられたと思ってる?」
「………」
「お前…その癖まだ治ってなかったのか…」
「この方が集中できる」
「集中って…もしそのローブが戦闘中に破けて使えなくなったらどうするんだ?相手はシャドーフォレストだぞ?」
「目にも止まらない速さで動けばいい」
「…戦場を駆け回る痴女って……」
「何を言ってるんですか二人とも?」
姿を消したままのパールと一見何もない所に話し掛けているトレットを交互に見てヒルは立ち上がる、しかしまだ尻が痛むのか少しぎこちない。
「はぁ…話を戻すぞ?俺とパールは奴が出てきたら前線でばる、ヒルは…後方で待機。いいな?先ずは戦場の空気を感じろ、次の為にな」
「はいっ」
最後のトレットの言葉にヒルは重いものを感じ、静かだが力強く返事をした。
それは何故フェアリーアンブレラを売って大金を手に入れたのにも関わらず冒険者になったのか、その理由を噛み締めているようにも見えた。
ここまで読んで下さってありがとうございます‼