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無名の異人  作者: ALFRED
13/18

13話 夢


目が覚めると一面青色に染まっていた。少しすると自分が横になって空を見ているのに気が付いた。


『ん?ここは?』


柔らかい草に手をついて体を起こすとそこには僕がここで目覚めてから殆どの時間を過ごした湖の畔に居ることが分かった。

服も綺麗に戻って白いウネウネも無くなって腕も自由に動く。

あれ?…んーと?何で僕はここに居るんだろう?

腕を組んで考える。たしかリオザさんと話してて?

…思い出せないや。


『おはようございます』


『!?』


直ぐ後で声がした、聞き間違えることの無い大切な人の声。


『お姉さん!』


僕は振り返る。そこには小さな光の粒がフワフワと浮いてて見てるだけで安心してしまう。


『はいそこで正座してください』


一転、僕は恐怖に包まれた。お姉さんは今絶対に怒ってる。それも今までで一番怒っているのかもしれない。


『…はいぃ…』


僕は黙って従った、逆らう勇気なんて湧き出ない。

でも僕は何をしたんだろう?全然分からない。


『さて?貴方は何故私が怒っているか分からないでしょう?』


『うん、分かんない』


『少しは考えなさい!』


『ひぅ!』


正直に答えたら怒られた。

今お腹の辺りがきゅう~ってなって苦しい。

でも?…うーん…お姉さんに怒られるようなことしなかなぁ?


『もしかして勝手に湖から居なくなったこと?』


『…そんなどぉ~でもいい事で怒ったりはしませんよ、もっとよく考えてください』


どうでもいい事って言われちゃった…ちょっと悲しいな…

でもなんだろう?今日のお姉さん変だ。


『じゃあ…緑色の人を追いかけたこと?』


『違います』


『えっと…森の木を倒しちゃったこと?』


『全っ然!違います』


『うわわ!、えっと!え~と…』


『ちっ…何であんな危ないことしたんですか!?私はそれに怒ってます!』


『ひぅ!!』


『何で一人で突っ走ったんですか!何であんなに吹き飛ばされてボロボロの状態でまた走ったんですか!骨まで砕かれて!…何であんなに頑張ったんですか!何か言い訳はありますか!』


『うっ…えっと熊の』


『口答えしない!』


『ひぃ!』


そんなぁ…


『はぁ…分かってはいましたが貴方は素直すぎる。……何で…死んだ後になって…』


『…?お姉さん?』


お姉さんが何か諦めたみたいな声で言う。後半の部分は小声で何か言ってて僕には聞こえなかった。

でも…。


『ごめんなさい。大分取り乱してしまいましたね?もう正座はしなくても良いですよ?』


『…お姉さん?』


『安心して下さい?もう怒っては…』


『どこか痛いの?』


『え?』


『それともお熱?お腹は大丈夫?』


『…どうして……そう思ったんですか?』


『だってさっきのお姉さんとっても辛そうだったから…』


そう、さっき最後の方は小声で何を言ったのか良く分からなかったけど本当に辛そうだった、そんな気がした。


『……』


『!?っやっぱりどこか痛いの?!苦しいの!?僕何でもするよ!何をすればいいの!?』


『うっうわわ!近いです!』


『あっ!ごめんなさい…』


気が付かないうちにお姉さんに近付いてビックリさせちゃった。


『…フフフッ私は大丈夫です。もう良くなりましたから』


『それ本当に?本当?』


『本当ですよ?貴方のお陰で良くなりましたから』


『えっ僕?なにもしてないよ?』


『いいえ私は貴方から大切なものを受け取りました。』


『うーん?』


受け取った?僕から?うーん…今日のお姉さんのお話分からないことが多いな?


『でも私が怒ってたのは本当だったんですよ?』


『うっ…』


『フフッもう怒ってませんよ。でも自分を大切にしてくださいね?お友達や他の人達を助けようとすることはとても良いことですけど貴方が傷付けば貴方のお友達や私だって悲しいんです』


『…ごめんなさい……』


そっかぁ、僕お姉さん悲しませちゃったんだ…でも、いけないことかもしれないけど少し嬉しいな


『はい!ちゃんと謝れた良い子にはご褒美です』


そう言うと砂粒みたいな大きさだったお姉さんは段々大きくなって女の人の形になった。


『…あっ』


人の形になったお姉さんの顔を見ようとしたけど胸に抱き寄せられてしっかり見ることは出来なかった。

見上げようとしたけどお姉さんは温かくて、柔らかくて、ホッとして身体中の力が抜けてしまう。

そしてお姉さんは僕の頭をゆっくり撫でながら言った。


『ずっと昔、大切な人が居たんです。短い間だったけれどその人は私の為に傷だらけになって頑張ってくれて、私を守ってくれてた。でも私はずっと何も恩返しが出来なかったんです』


お姉さんの撫でる手が止まって変わりに僕の頭を強く抱き締める。


『何も出来なくてごめんなさい。いつもごめんなさいって言ったら、その人は笑いながら「フツーの事だからなにもしなくて良いんだよ」って頭を撫でてくれました。嬉しかったけれど…あの笑顔は私には辛かった。』


??何だろ?胸が苦しい?


『……でも、とうとうその人にも限界がきて倒れてしまったんです。その時今度は私の番だ!私がこの人を守るんだっ!って頑張ったんです、私。でもそれが原因でその人を傷付けてしまって、辛い思いをさせてしまいました…』


頭の天辺が温かい、お姉さんが頭を乗せたみたい。


『例えその人の為の行動でもその人を傷付けてしまう事があります。貴方はとても良い子ですから余計に周りの人が悲しむでしょう。…だから……自分を…省みない様なことは止めて?』


するとお姉さんは元の大きさに戻って僕から少し離れた。


『お姉さんとの約束ですよ?』


その言葉を言うと周りの草や花、木や湖も溶けて煙になって空気中に漂う。

いつの間にか地面も煙になって僕はその場に浮いた。


『な、えっ!?お姉さん!ここは何!どこなの!?』


いい加減僕にもここがおかしいことに気付く。

お姉さんはフワフワと浮いてるだけで何も答えてくれなかった。

お姉さんの周りが黒い渦になってお姉さんを包んでいく。

とても嫌な感じがする。このままだとお姉さんが消えてしまいそうな、そんな予感がする。


『お姉さん!!』


必死に手を伸ばすけどほんの、ほんの指先一つ分足らない。何度も何度も腕を伸ばすけどお姉さんに届かない。

みるみる内に渦はお姉さんを飲み込んでいく。


『嫌だ!』


お姉さんを引き止めたい一心で自分でもどうやったか分からないけど指先から白いウネウネがバリッと音を立てて突き破って出てきた。

小さくて細いウネウネは頼りなくてもお姉さんに触れる事が出来た。


『ハハッ…ありがとう』


『お姉さん!早くこっち!』


『…出来れば最後まで貴方と一緒に居たかった』


『何でそんなこと言うの?!一緒に!』


『さよなら』


一言お姉さんが言うと周りが一面白く染まるほどの光がお姉さんから出た。


ごめんなさい…


暗くなった意識の中で最後に誰かが言った気がした。

ここまで読んでくださりありがとうございます‼

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