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無名の異人  作者: ALFRED
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誕生

駄文ですがよろしくお願いします。

1話

二人は森の中で


森の湖の畔で木漏れ日が顔を撫で目を覚ました。だが気持ち良く寝ていたのと寝起き特有の気だるさの影響もあり寝返りをうって二度寝を始めてしまう。


しかし一度目を覚ましたせいだろう。次第に頭が覚醒し活動をし始めると今あるこの状況にようやく


ここはどこ?


と、違和感を覚え始めた。

上半身を起こしキョロキョロと頭を回して回りを見てみる。見えるのは鮮やかな色をした野花や鳥の巣を飾った森の木々、雲がゆっくり流れる空。

これらの光景に小鳥のさえずりや風の音がBGMとなりホゥッと溜め息を吐き一瞬思考を捨てて三度寝に陥りそうになった。


いやダメ。


自分にそういい聞かせ右手をついて立ち上がる。が、視界に入った自分の手を見て体も思考も固まってしまう。

今見ている自分の物であるはずの右手が想像していたものと違うからだ。

その右手は今空に浮かぶ雲のように真っ白だった。


しばらく思考が停止した後、一旦座り直して精神の安定化を図り、少しの勇気を振り絞って自分の体を確認してみる。先程確認した右手は勿論左手もやはり真っ白で両手の平と甲を何回か裏返したり、小指から親指の順番で折り曲げたり、握り拳を作ってみたが何の支障も違和感も無かった。


…なにこれ?


今度は胴体を確認してみると黒いスーツ、ネクタイ、革靴、白いYシャツを着ており、まるで喪服のようだった。

そしてふと、革靴の方を二度見してまう、自分の脚がかなり遠くに感じる。…


長い…


もしやと思い両手を足の爪先に伸ばしてみると流石に爪先に届かないものの体感よりかなり先に手が伸びた。腕もかなり長いようだ。


前屈の体制のまましばらく固まってしまったが、今度は頭が再始動するのが早かった。

目が覚めたら見知らぬ森で突然変わったしまった自分の体に驚き過ぎて一周回って頭が冷静になったようだ、もしくは現実味が無いからか。


さて、次は顔を見てみる事にする。正直怖いが見ない訳にはいかない。幸か不幸かすぐそこに湖があるので水面を覗けば顔は分かるだろう。

赤ちゃんみたいにハイハイしながら湖に近づき意を決して自分の顔を見た。


水面には白いのっぺらぼうがいた。目も、鼻も、口も、耳も、髪も、産毛も見当たらない。顔に右手を張り付けたり頭を回したりして細部まで確認した。


正直言ってそこまでショックは無かった。何故?手足を見た時はあんなに驚いたのに…

水面に写った自分を見ながら自分の記憶を掘り起こす。自分はいったい何をしていたか。


………


頭の中にあった記憶でハッキリ思い出せるのが今より小さく肌の色が違う自分の体、いくつかの動物の姿と名前、そして今着ている喪服という服。

あとは意味の分からない物や言葉が断片的に思い浮かぶだけだ。


思考に飲み込まれていると水面の自分と目があった気がした。


…君は誰?


水面の君は答えてくれなかった。



湖から離れて記憶を思い出そうとしたりこれからどうなるのか不安になったりしたが色々考えても無駄だと言うことが分かった。


これからどうするにしろ生きていかなきゃいけない。その為に今しなきゃいけないのはこの体の事を知ることが最優先だ。

過去の自分の基準だと手も足もいきなり長くなって上手く歩く自信がない。この辺りは平気みたいだけど狼とか熊が居ないとも限らない、もし今教われたら多分食べられる。あっ…そう言えば食べ物も探さないと…

まぁ今からやることは同じかな?。


ふぅ…よし!


自分を鼓舞し四つん這いの状態からゆっくり慎重に二本足で立った。

するとさっきまで近くにあった草花がはるかに下り、自分を見下ろしていた木々の葉が今では殆ど同じ高さだ。

多少恐怖や不安もあったが見える世界が一変し暫し感動に浸る。


さて立つことは出来た、続いて歩行は?

歩幅が記憶と違い思ったよりもスピードが出たことに驚いたが慣れれば問題ない。次は走ってみたいが…ここじゃ狭いかも知れない。

このあとどうするか考えていると


『きゃーーー!』


『こっちだ!こっちに居るぞ!』


『クソが!!』


後ろの方から何やら喧騒が聞こえてきて、時折「ギン!」とか「ガギン」とか金属同士がぶつかり合うような音がこっちに近づいてきた。


う…ぁ……


何が起こってるか分からないけど何だか凄く怖くなって慌てて身を隠せる場所を探す。

でもこの体じゃどんなに体を丸めても見つかってしまうだろう。


どうしよぉどうしよぉ…


パニック寸前の僕の視界に湖が入った。一も二もなく自分はドボンと音を立てて飛び込み膝を両腕で抱えて出来るだけ体を小さくした。


嫌だ嫌だ怖いよ…


この子はただ恐怖が過ぎ去るのを祈りながら待っていた。

だが喧騒は次第に大きく激しくなって近付いてきていることもこの子は感じ取っていた。




―アストリア王国 辺境の森―



森の中の木の根元、モゾモゾと動く小さい影が一つ。


「うおぉっりゃ!」


勇ましい掛け声に似合わない可愛いげのある声が静寂な森にこだまし驚いた卯や小鳥などの小動物が我先に逃げ出していく。


「へっへー!久々の大物だよ!」


声の主は「フレデリカ」。日光に当たって少し焼けた肌、茶色い髪は肩まで伸ばし、継ぎ接ぎの上着とスカートを履いている。顔は子猫のような丸い大きな目にはブラウンの瞳が太陽の光に反射しキラキラ光っている。ニッと笑ったその笑顔は一部性癖者を除き保護欲を掻き立てられてしまうだろう。


フレデリカは自分の顔程ある大きな笠を広げたフェアリーアンブレラという大きい椎茸のようなキノコを両手に持ち、天高く掲げた。天高く…本人はそのつもりである。

傍目から見れば発育の良い女の子が無邪気に喜んでるようにしか見えないがフレデリカは見た目が幼いだけで胸と精神年齢は今年で17歳の立派な成人女性である。



1日歩いた先にある街に買い物に出掛ければ「迷子かい?」と衛兵や優しい大人たちに声をかけて貰ったり、粋な店主が「偉いな!」と品物をおまけしてくれたり、特殊な性癖をもつ変態が人気の無い場所へ連れ込もうとされて返り討ちにしているが立派な女性である。本人はそのつもりである。


「ふっふ~ん♪これぐらいの大きさなら村は半年は持つわね!皆が驚く顔が目に浮かぶわ~!」


彼女が先程狩ったフェアリーアンブレラはアストリア王国全土に分布しているのだが絶対数が少なく滅多に市場には出回らない。

詳しい事は解明されていないが名前の由来でもある「妖精」がフェアリーアンブレラの側で確認される事が多いため妖精が関係していると言うのが一般的な見解だ。

またフェアリーアンブレラは国内で最高級品質の回復薬「エリクサー」の原材料で国が高値で買い取っている。


フェアリーアンブレラの笠があまりにも大きいため背負った篭では収まらないため胸の前で抱き抱えて満面の笑みで帰路に着いた。

今頃村では皆汗水流し畑仕事や家畜の世話、小さい子は家の手伝いをしているだろう。

そんな中、早めに帰ってきた私がフェアリーアンブレラを持っているのを見たら村は仕事そっちのけでお祭り騒ぎになるだろう。もしかしたらお肉とお酒も解禁になるかもしれない。


「そしたらあいつをぎゃふん!と言わせてやる!」


同い年のくせに私を子供扱いする友達を思い浮かべながらフレデリカは自然と走り出すのであった。

誤字脱字が御座いましたらご指摘お願いします。

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