36.宣戦
討伐任務が終わった3日後の放課後。学校対抗戦に参加するメンバーはバスに乗り、藤林学園へと向かう。場所は視聴覚室。そこでは試合の説明とミーティングがなされた。それらの説明が終わると、自由解散だった。半分以上の話を聞き流し、終わるなり伸びをすると、1人の女性が近づいてくる。
「はじめまして。私は若狭早香です」
彼女は右手に持っていたギターケースのようなものを背中に持ち上げ、握手の手を差し出してきた。俺はそれへと応答し、顔を見つめ返す。
「あなたは浅宮の月宮片葉さんよね?」
俺はそれに対して倦怠感剥き出しで返答する。
「はい」
彼女は手を離す為、俺も手を話した。
「私の神器の名前はケラウノス」
「手の内明かしていいんですか?」
「名前程度なら。あなただって同じ名前でしょう?」
彼女は俺の神器を知って尚、このように話を進めてくるのだ。
「神器の名前を掛けた決闘をしましょう?」
突拍子もない若狭さんの言葉に俺は首を傾げてみせた。
「今ですか?」
「いいえ。学校対抗戦でよ」
俺は伸びをした。
「団体で戦うんですよね? だとしたら俺とあなたの個人の戦闘ではなく、学校同士で俺達の今後を賭すということになりますよ」
「訊いたわよ。日渡ちゃんが専用神器をヘラって名前で作ったこと。つまり、あなたをゼウスと認めているということよね?」
彼女は笑顔を向ける。
「それとこれと、どのような関係が?」
俺が問いかけ、一部訂正しようと口を開いたら即答された。
「あなたは学校の人達からゼウスであると認められている。今更名前を失うのを反対するはず。だから決闘がより一層面白くなる」
「なるほど」
俺は相槌を打つ。そしてまた訂正を試みるも、すぐに言葉を打ち消された。そして彼女は朗らかな表情で俺の前に立つ。
「ゼウスの名をかけた戦争をしましょう?」
俺は溜息を吐き、やっと訂正をする。
「俺はゼウスではありません」
じゃあ何? と彼女は問いかけてくる。俺は立ち上がり部屋の外に出る為に扉に近づく。そこで口を開いた。
「杖そのものです」
後ろから明流が付いてくる。
「飲み物を買いに行きたいのですが、着いてきてもらえますか?」
「俺も買いたいと思っていたんだ」
明流は去年、トーナメントの要件が有ったため、この学校に訪れたらしい。その為自販機の場所を知っているらしい。目的地である給水場にたどり着くと、明流はカードのようなものをタップして購入した。
「どの学校でも使えるんだ」
俺は生徒証を取り出して、試してみる。彼女と同じように使えた。
「これは学校だけでなく、どこに行っても使えますよ」
彼女はカードを和服の巾着袋へと入れる。
「ところで」
話題を変えてきたようだ。
「私、あの態度嫌いです」
「口は災いの元。特に陰口は良くないよ」
俺は缶ジュースへと口を運ぶ。
「そうですが、片葉さんはあれだけ言われて悔しくなかったんですか?」
「あの会話のどこに俺が気に障る部分が有った?」
彼女はムッとした表情になる。
「喧嘩口調だった事とか、片葉さんを下に見ているというか」
「それは心理戦だろう? 向こうは俺の戦い方を知らないんだ。探りを入れてきたんだろう。それに、人間は他の生物と違って誇りがあるから、怪我されちゃぁ黙っていられないだろう」
彼女の怒りは収まっていないようだ。俺は彼女の頭へと掌を乗せて左右に振る。
「明流が侮辱されたわけじゃないからいいだろう? なんでそんなに怒っているんだ?」
彼女は俺の乗せた手に手を乗せ返す。
「そうですけど、片葉さんが悪態を突かれているのを見るのはつらいです」
「まぁ、心配してくれるのは嬉しいンんだけどね」
彼女は泣きそうな目をしていた。
――
ミーティングが終わり、俺は家に帰り、いつもどおりに夕食を終わらせ、就寝する。すると、ガサゴソと音が聞こえた。
俺はその音に不快感と嫌悪感を覚え、電気を付ける。すると一匹の黒い虫が目の前を横切る。俺は咄嗟に足を動かし、接近してから、人差し指と薬指でそいつの肢体を押さえつけた。
「やっぱり」
その黒い生物は、艷やかに翅を光らせていて俺はその生物をゴキブリと断定した。彼を手中に収め、空のペットボトルゴミの中に入れた。
「何故奴らが衛生的なこの家に食べ物を求めにやってきた?」
俺は思考を凝らす。するとある結論を思い出した。そう、俺はベルフェゴール討伐任務の時にポーチに入れた缶詰のゴミを片付け忘れたのだ。俺はまず、その鞄を置いた場所であるタンスを開くと、案の定、黒い奴らが散開していった。幸い俺はミニマリストという人種で、必要最低限しか部屋煮物を置かない。その為、タンスの中に入っていたのはゲームのパッケージ。俺は両手足を振るい、ゴキブリの動きを封じる。そして右手の中に3匹全部を捉え、ペットボトルの中へと入れる。鞄から缶詰のゴミを取り出し、それを綺麗に洗い流す。
討伐任務で俺がゴキブリのように備蓄を漁りピラフを食べた。まさか本物がピラフを俺と同じように食べに来るとは…。だが、此処は俺のテリトリー。残念ながら不法侵入ということで招いていない客は駆除させてもらおう。彼らは人間でないからいくら殺しても法律に引っかかることはない。ペットボトルに入れた黒い奴らの中に食器用洗剤を流し込んだ。彼らは油をまとっていて、洗剤などで油を落とすと乾燥して絶命する。
恐らく、無数のゴキブリがうじゃうじゃといるだろう。俺は無数にいるであろうゴキブリを捉えるべく、タンスやら冷蔵庫やらを退かした。
複数のゴキブリを退治したのは初めてだ。退治と言うより虐殺だな。もう既に4時になってしまっている。これは眠ってしまえば最低7時間目を覚まさない。人類の脅威である魔人よりも、睡魔の方が強大に思える。俺はしっかりと手を洗った後、散らかった部屋でそのまま体を倒して意識を切らした。
――
目を覚ました瞬間、寝ぼけ眼ながら在ることを覚悟していた。現在の時刻を携帯情報端末を開いて確認する。今は12時を過ぎていた。昼を過ぎた時点で俺は学校へ行くつもりは無くなっていた。俺は布団を畳んで冷蔵庫を開ける。綺麗に人参しか残っていない。俺はそれをピーラーで皮を向き、それを口に入れ、ゲームの電源を入れる。起動中に端末に有った通知を確認する。鈴乃先輩から一斉送信のメールが来ていた。内容は今日の朝練で連携についての確認をするというもの。夜の10時に来たらしい。その間、眠っていたか、ゴキブリを殺していた時間だろう。
「まぁいいや」
俺は人参を噛み締め、ゲームを始める。
いいところでインターホンが鳴り、俺はゲームを中断する。
「はーい」
俺は挨拶をして扉を開ける。すると、鎧のような和服を着衣した眼鏡の少女が目の前に立っていた。
「先輩、おはよう」
その少女が眼鏡を掛けている姿を久しぶりに見た気がする。俺は彼女に挨拶を返すと、その少女は問答無用で家に侵入する。
「お邪魔しますよ」
「あ、おい」
彼女は俺のゲーム画面を見つめた。
「先輩、サボり? 駄目だよ。鈴乃先輩そういうの厳しく叱るから。起こると怖いんだよ、あの人」
俺はゲームを消して人参の捕食を続ける。
「サボりじゃないよ。ただ起き損ねただけだから」
「起き損ねた? 寝坊ってこと?」
「ああ。つい夜更かしをしてしまったんだ」
俺はゴキブリの死骸を詰め込んだビニール袋を環奈に見せる。
「これらを駆除したんだ」
環奈は興味深そうに覗き込むも、彼女は一瞬で目を尖らせ、口を経の時にする。
「気持ち悪い。なんでゴキブリを集めているの?」
「集めているわけではない。昨日駆除したんだ」
環奈は尻もちをついて大幅に俺から遠ざかる。
「虫は苦手か?」
俺は死骸が入った袋を浅宮指定のゴミ袋の仲に放り投げる。そして蛇口のハンドルを捻り、水を出してから石鹸で手を洗う。洗い終わったことを確認した環奈は口を開く。
「活発な女の子が虫嫌いって萌えない?」
「確信犯かよ」
「作者が加えた私の新たな設定だよ!」
なんで俺の家に訪れるやつは皆ギャグを挟まなければ入らないんだ。環奈は特にギャグが酷い。面白いことを人一倍言いたいのにもかかわらず気の利いた言い回しを出来ない為、メタフィクションに走ってしまう。そんな彼女に送ることが出来る救いはできるだけ話を遠ざけることだ。
「ところで、どうしてうちに来たんだ?」
「片葉先輩が無断欠席をしている。それに対して怒りを覚えた鈴乃先輩が家に行くって聞かなかったの。だけど、般若みたいな表情の鈴乃先輩が片葉先輩の家に行ったら、恐怖を植え付けてしまうことになる。だから、メインヒロインである私、サブヒロインである明流先輩、面白がっているだけの沙弓先輩とでじゃんけんをして勝った私が此処に来た。というわけ」
彼女の説明に対して3つ訂正が有った。俺は1つ目を言葉に出す。
「あの泣き虫な鈴乃先輩が般若みたいな表情出来るわけ無いだろう。出来てせいぜい上目遣いのおねだり程度だろう」
俺は笑顔をつくり先輩を舐め腐って発言すると環奈は痛々しいものをみる表情を作りこちらを向く。
「鈴乃先輩が怒った所を見たことが無いからそんなことが言えるんだよ」
彼女の目に俺は恐怖を感じ、つばを飲む。
「で、環奈。どうして君がメインヒロインと胸を張って言うんだ?」
「それはメインキャラクターの中で私が唯一刀剣を装備しているから、メインヒロイン認定されているんだよ!」
「どこぞのライトノベルだよ!」
俺はツッコミを終え、定義を確認した後に、明流の訂正もしようと思ったが、誰もが知っている通り、この小説のメインヒロインは明流なので、いちいち再確認するまでもなかった。
「環奈、連携訓練って何をやるんだ?」
「団体戦だよ。火消し部の7人を試合に出る人と出ない人とで分けて戦闘するの。と言うか、朝は片葉先輩抜きで3戦ほどしたけど、一度も勝てなかったんだよね」
彼女は渋い顔を作る。以前の火消し部入部試験では辛勝したと思い出す。俺は彼らともう一度戦えると思えると嬉しくて仕方なかった。
「早く学校行こう」
環奈は急かしてくる。俺は着替えるから待ってと答え、カーテンレールにかかっている制服、タンスに入ったティーシャツやワイシャツを取り出した。
「あのさ」
環奈は肩身を狭める。
「後ろ向いていようか?」
「絵面が汚いから見ないほうがいいんじゃない」
俺は既に上半身にまとっていた薄い布を取っていた。
「見たいから見る」
彼女の言葉に俺はああと相槌を打つも、二度見した。
「今、見たいといったか?」
「先輩がトランクスかブリーフか、将又ボクサーパンツかを知りたかったんだ」
「ああ、そういうことか。俺はダイパーだよ」
ダイパーとは英語でおむつを指す。それを彼女は知っていたらしく目を見開いた。
「おむつ?」
硬直したような表情に俺は吹き出しそうになったが、すぐにズボンを脱いでトランクスである事を示した。
「あ、ああ…」
「冗談だから、なんでそう言うの本気にするの?」
「いや、マジで見せに来るとは思って無くて…。先輩が真面目に答えたら、適当にあしらうつもりだったんだけど…」
彼女の恥じらう顔を横目に俺は着替えを即座に終わらせ、極端に中身が少ないスクールバッグを手に取り、外に出る。
「あ、ちょまって! 早いよ!」
彼女は焦ってついてくる。
――
学校に着くなり、俺は鈴乃先輩と対面させられてしまった。
「おはようございます」
俺は渋い顔で鈴乃先輩に挨拶をすると、彼女は一瞬だけ笑顔をつくり、すぐに睨みつけてきた。
「ねえ。どうして無断欠席をしようとしたの?」
その態度は一度見たことが在る。俺が入部試験で経盛先輩に負けて泣いた時に浴びせられた視線と全く同じだ。しかし今回は以前と違って弁解の余地がない。
「すみません。寝坊してしまいました」
「寝坊? だったら普通に遅刻してでも学校に来ればよかったじゃないの?」
「起きた時間、ついさっきなんです」
彼女の威圧感が、心做しか心地いい。勿論態度にも言葉にも出すつもりは毛頭ない。
「そう。なんで寝坊したのかって訊くのは野暮かしら?」
「言い訳になるのでいいません。俺は寝坊して時間も時間なので学校をサボろうとしました。それに至っては弁解の余地がありません。叱られる覚悟はとうに出来ています」
彼女の威圧感のおかげで、マゾに目覚めてしまいそうだ。叱られるではなく罵られる覚悟だろう。それを言うと、彼女は怒りを鎮火させたようで笑顔を向ける。
「なんてね。環奈ちゃんから全て密告されていたのよ。まさか、嘘偽り無く答えてくれた挙句、自分の有利になる弁護もしないなんてね。偉いわ」
拍子抜けをしたのと同時に、彼女の笑顔で再び和まされた。俺は彼女のギャップにも又、好意を抱いたようだ。
「さて、訓練を初めましょうか」
俺は鞄から神器を全て取り出し、装備をする。
「月宮」
火狩が俺に近づいてきて手を振る。彼はグングニルの槍を持っていて、戦闘準備は万端だった。俺は彼の姿を見て気分が高揚している。
「おう。火狩。おはよう」
俺は笑顔を向けると火狩も又笑顔を向けてくれる。
「訊いたぜ、お前ら3人で鈴乃先輩達がフルボッコにされているって」
「そういうわけでもないぞ。ギリギリの所で俺達が勝っているだけだ。まあ、紙一重で上回っているってだけだ」
彼は少し苦い顔をする。
「月宮。お願いがあるんだが、いいか?」
火狩は後ろめたい表情を作っていた。
「内容にもよる」
「一度、俺とお前で戦闘をしないか?」
彼は槍をくるくると回した。
「それ、鈴乃先輩が許可出すかな?」
「それを俺達2人でお願いしに行くんだよ」
俺と火狩は相性が悪い。今まで勝てたのは英才教育で身につけた直感でかろうじて勝っていたものだ。今は火狩も成長をしている故、勝てるかどうか危うい。しかし、試してみたいものだ。
俺と火狩は両方カウンター型だが、火狩の方が防御の性能や攻撃力が高い。対して俺は機動力だ。この戦いを通して、俺は弱点を補うか、得意を向上させるのか決めよう。
鈴乃先輩にそれを相談してみると二つ返事で良いと答えられた。
「意外とあっさりだったな」
俺が言うと火狩が悔しそうな顔をしていた。
「なんだよ」
問いかけると、彼は別に何でもないと答える。
俺達は転送室に向かい、校舎フィールドへと跳んだ。着地をすると、机や椅子が教室の配置を成していた。
「初めて教室の中に入ったな」
俺は黒板が在るであろう場所を見つめるも、そこは影になっていた。俺は椅子に座り、頭を突っ伏して冷たさを味わう。この風景は、俺が通っていた一般高校に似ている。死ぬほど退屈で、死ぬほど息苦しかったあの空間。昔は死ぬほど嫌いだったのに、神使になった今となっては1瞬だけこうさせて欲しい。俺はそれを堪能してから立ち上がり、扉をガラガラと音を立てて開く。左右を確認し、索敵を開始する。今まで誘い込んでいたが、機動力を活かして不意打ちでもやってみよう。
現在は4階。音をを立てず、ゆったりとした足取りで廊下に着き左右を確認した後に床に耳を当てる。残念ながら響き方が判らない為、俺はバレットを単発で撃ち、跳弾させる。音が反響して、その場所に留まる。音が響くと敵が来ると予測し、狩るために待機する。
俺は今、中央の廊下にいて、火狩は東側に居た。火狩から見て、俺は正面にいる。俺は階段を上り、4階へと歩くそして、東側の3階へと降りる。すると、火狩が後ろ向きに居て警戒心はいつもより高かった。こうやって音でおびき寄せるのは試合のみ可能。実際はどのように誘導するか、考えものだが、これは狩りに置いては有効手段であるはず。この戦場で一撃で決めることが出来たら、俺はわざわざ神器を改造するまでもない。俺は火狩の背後に周り、左手にたまった魔力を波紋状にして連射する。火狩は俺の存在に気づいていたようで、波紋が広がると同時に、左手からシールドを貼る。ドラウプニルという、彼のもう1つの神器だ。
俺は駆け出し、彼へと猪突猛進する。彼はシールドを前方に貼り、構える。俺は飛び蹴りをして、同時に足から刃を出す。敵のシールドに触れた瞬間に俺は蹴っている反対の足を地に着かせて回し蹴りをする。火狩のシールドの方向が変わったためグレネードバレットの爆風を、彼は生み出せなくなっていた。俺は地面に手をつき、体を回して足払いをする。火狩はそれを読んでいたようで飛び跳ねて回避する。
火狩は落ちる瞬間に槍を突きつけてくる。俺は体を逸らせてすれすれで刃を回避する。そして彼の腕へと腕を回し、彼の腕へと十字固を掛ける。火狩はそれを阻止するべく左手にダガーを固めて作り、差し掛かる。俺は腹部にシールドを貼ってナイフの刃を防ぐ。
力を込めるも、火狩は俺を床に叩きつけた。背中にあたり、俺は呼吸が一瞬止まる。力が落ちたようで、火狩はすんなりと腕を離し、足を踏み込んでくる。俺は彼の足の裏へと足を乗せて蹴り上げ、ひっくり返す。彼は地面に転がると同時に槍を拾う。火狩は俺に攻撃をして、俺はカウンターをするもシールドで防がれ、すぐに彼もカウンターをする。そんな攻防がいくつも続き、俺は一瞬だけ呼吸を乱す。
呼吸を見出してしまった原因は恐らく彼がフェイントを入れたことに在るだろう。そのフェイントは俺のペースを乱す形になったのだ。その呼吸が読まれてしまい、俺は致命傷を負う。俺は転送される寸分前に喉へと刃を穿つ。
――
俺と火狩の実力は、互角。相性などを踏まえたら、たしかに火狩の方が強い。全ての弱点を補うことは出来ないかもしれない。今回の戦いで決めると言ったが、俺は決めきれずにいる。弱点補正か、美点強化か。初めはバランスの良い戦いをしたかったが、連携を視野に入れるにはバランスよりも何かに特化して無くては使いみちにならないだろう。
俺はベッドから降りる。
「なんで俺はお前に勝てないんだろうな」
火狩は、俺が居たカプセルの隣に寄りかかり、言葉する。
「そんなことは無い」
俺は、ただ食らいついただけだと付け加える。
「倒した後も気が抜けないってことか。でも、普通、痛くて反撃できないだろう」
「あれ?言ってなかったか? 俺は痛みを感じないんだ」
そう言うと火狩は頭を抱える。そう言えばと中途半端に言葉を残して先程の会話に戻る。
「戦場で1人倒したと思っても、漁夫の利でやられることもあるしな。気は抜けないか」
俺は無言で頷く。もう、奴のフェイントは通用しない。なぜなら、防御される前に防ぐ術を手に入れたからだ。
――36.宣戦 完――




