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雷霆の神使と白皮の魔人  作者: 堕罪 勝愚
2章 角馬の聖女
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18.聖女

18.聖女


 俺は火狩との“決闘”を行うために転送室に向かう。


「おっす、待ってたぜ」


 火狩は壁によりかかり、槍を肩に担ぎ、待ち構えていた。


「なあ、月宮、新たにステージが導入されたんだ。知っているか?」


「俺は市街地かビルのステージしか知らないからな…」


「あ、そうだっけ?草原とか雑木林とかは?」


「知らない。初めて聞いた」


 俺はCTスキャンを確保し引き出しのようにベッドを出す。


「月宮。新ステージの城内で戦わないか?」


「城内?」


「去年から設計されていた奴なんだけど、魔人デヴィルの拠点、つまり城を再現して作ったのがそこのステージだという。俺も詳しくは知らないんだが、どうやら古代イギリスの宮殿みたいって言われているくらいだ」


 俺は渋々いいよと答え、カプセルの中に入り、地点を確認し、転送される。


「よっと!」


 俺は飛び跳ね、着地する。


「ほう!スムーズだ」


 そこに広がるのはレッドカーペットの連なる廊下。天井に垂れ下がるシャンデリア。きらびやかに写し出されるステンドグラス。それらは城というより教会と要塞が混ざったような施設であった。


「綺麗だ」


 俺は自然と口が動き、言葉を発していた。窓の外には大きな庭が…この空間にいつまでも居たいと感じてしまうほどに美しい。

 暫く観光していたいけど、俺は這いつくばり、耳を床に付けた。小さくコツコツと音が聞こえる。俺はその音が鳴っている方向を詳しく分析し、立ち上がる。そのまま両手のグローブでチャージバレットを作る。そして足の裏にシールドを貼り、弾き出すように床を蹴り出す。床を反発し、急激に加速した。

 すぐに火狩の姿が見え、彼は両手に槍の先を構えてる。これはショットのバレル!俺は急ブレーキをかけようと意識し、その行動を取ろうとしたが、俺の身体は言うことを聞かない。

 脚の加速度は増し、跳ねた。シャンデリアに頭が届きそうになり、俺はそれを握って対空する。


「すげー!今ならダンクシュートできそうだ!」


 感心しながら火狩に向けて足の裏からのバレットを掃射する。彼は大盾を向けてきた。リコシェだったため、バレットが弾き帰ってくる。

 俺はシャンデリアと飛び越えて天井に昇り、弾丸を回避し、床に降りる。火狩相手だから短期で決めたい。持久戦となると向こうのほうが圧倒的に有利だからな。

 俺は右足で前進し、左脚を反時計回りに動かして身体全体を回転させ、床に手をついて、ブレイクダンスの動きをする。その状態のまま、足の裏からバレットを撃ち出し、壁や天井に跳ね返らせ、此処一体を白い稲妻で埋め尽くす。数分経ち、漂う弾丸は俺や火狩に一切当たることなく消えていき、火狩は俺へと突進してくる。俺は飛び退き、バレットを直線的に放った。火狩はそれを予測していたのか、俺が掌を向けた瞬間に横へと転がり、盾を広げて再び突進をする。

 彼は突進意外の方法で攻撃をしない。しかし、そこから織りなす無数の応用は俺に固定概念を植え付けて的確にそれを裏切る。そのせいで非常に戦いづらい。俺はシールドブーストをして迎え撃ち、火狩のシールドに左掌を当て、連射する。以前明流の炎を砕いた時に取った行動は火狩の盾にも通用し、一瞬で砕け散った。


「何だと!」


 隙が出来た火狩に向けて、俺は右拳を打ち上げてアッパーカットを撃ち放った。彼はそれに向けて槍を横に持ち、威力を吸収するが、耐えきれず、槍を離した。その為、グングニルは空を舞い、天井に突き刺さった。俺は足を蹴り上げ火狩に追撃をしたが、側方にでんぐり返しで逃げられる。彼は地面に落ちたサーベルを拾おうと行動してくるので、俺はそれを蹴り、遠ざける。彼は下から跳び出して俺の腹へショルダータックルを撃ち放つ。俺は後方へと跳び退き、威力を殺すのだが、突然、俺の口から液体が漏れ出してきた。この液体は……血液。俺は右膝を付き出し、腰を回す。火狩は素手で盾を作り出してガードするが、それが砕け散り、彼の腕からポキと言う骨折音が鳴る。俺の腹はすごい量の血が流れていて魔力で出来たナイフが突きつけられていた。

 今すぐ火狩を倒さないと俺の身体は転送されてしまう。俺はすぐに寝そべる火狩に向けてバレットを掃射するが、すぐに重力の位置が変わり、身体が動かなくなっていた。




 俺はまた負けたようだ。俺があの時、蹴りではなく、バレットを撃っていたら試合結果は変わっていたであろう。どうやら俺の最後に撃ち放ったバレットは当たっていたらしく、俺がカンマ2秒先に転送されていたらしい。

 神器研究室で俺と鈴乃先輩はどんよりしていた。


「ごめんなさい。片葉君。私のせいで君を巻き込んでしまって」


「いえ、そこはいいんです。本当、俺が有言実行出来なくて申し訳ありません」


 俺達2人が作り出すネガティブな空気を真希奈は遮る。


「あの。片葉さんに鈴乃先輩。私、量産神器の設計をしてみたんですが、どうですか?」


 彼女はアタッシュケースを散らかったテーブルの上に置く。それをパチっと音を立てて開け、中身を見せる。そこには銃弾のように見える先端が尖った物が敷き詰められていた。


「なにこれ?」


「これは【イミディエイトヒーラー】と言う注射器型の携行神器を元にして作ったものです。immediate(即時の)healer(治療師)と言う単語が合わさっています。魔力が身体に入り込み、代謝速度を底上げしています。これにバレットを装填して扱うのが私が作り出したものです。それをイミディエイトヒーラーバレット、通称IHBと名付けました」


 イミディエイトヒーラーと言う神器を俺は見たことがない為、その説明にピンときていない。


「もしも先輩たちの戦闘でこの携行神器のデータが取れたら製品として販売します!私の財布が膨らむいい機会ですのでがんばってください!」


「素直に言われすぎて反って気持ちがいいな」


 俺は目を丸くする。


「携行神器ってなんだ?」


「簡単に言うと、殺傷武器でない消耗品ですね。回復や目眩ましなどに使ったりするものです。まぁ、RPG系のゲームが好きな片葉さん相手に例えるなら、バレットに依る攻撃がスキルや特技に当てはまるとすると、アイテムとか道具とかに位置するのが携行神器です」


 その例えのお陰で俺は理解に苦しまずに済んだ。俺は手にとっていいかと尋ね、銃弾のような神器、【IHB】を掴む。


「なあ、俺らが転送装置だったり、隣のタイルの部屋…実験室?だったりで傷が治るけど、イミディエイトヒーラー…だっけ?どう違うの?」


「転送室や実験室で行っている傷の治療は“気化させた魔力”を飽和状態にして傷の治療に当てていますが、イミディエイトヒーラー…長いので一般で言われている【癒合薬】と称しますね。癒合薬は“体内に巡る魔力”を回復に専念させて傷の治療を行います」


 彼女の説明で俺の頭がこんがらがった。その様子を悟られたのか、彼女は簡単に、手術と処置の違いですと答えた。




 俺は授業に戻ろうとすると火狩がいて、手招きをしてくる。俺が名前を呼ぼうとすると、彼は人差し指を唇に対して垂直に立てた。それがどんな心情であるかすぐに理解できる。彼は振り返り、歩き始めた。俺はそれについていく。

 気づくとそこは屋上の入り口で生徒は立入禁止と書いていた。


「よっと!」


 彼はドアノブを回した後に蹴り開ける。


「おい、いいのかよ?」


「バレたら怒られるな」


 彼は笑顔を見せて足をすすめる。俺はそれについていく。


「なあ、月宮」


 彼は足を進めながら口を動かす。背中が向いている為、どんな表情なのか分からない。彼は囲っている柵に両肘を乗せる。俺は彼と同じ向きで黄昏れる。


「手加減してくれてありがとうな」


「お前、それ嫌味って言うんだぜ?」


 俺は彼を睨みつけながら答えるとすまんすまんと弁解する。俺は溜息を付き昼間の炎天下に矛先を変えて鋭く目を尖らせる。


「あのさ、月宮。前に、俺が先輩の事を好きだって話しただろ?」


「ああ。聞いた」


「好きだけど、正直付き合いたいと思ってない」


 そんなに珍しい話ではない、ただの憧れと言う感情の場合はそうだから。


「何も訊かないのか?」


「だって、聞く意味ないじゃん。お前がそうしたいんだったらそうだろ?」


「そうか、まぁ、話したいから言わせてくれ」


「わかった。聞こうか」


「じゃあ、是非」


 俺は少し気怠げに対応した。


「俺は先輩を好きだが、先輩は俺のことをなんとも思っていない。だから、今の状態では先輩とは付き合いたくないし、先輩が誰かが好きって言うなら俺はそれに張り切って協力する」


「――ただの憧れじゃん」


「ああ。憧れだ!でも、恋愛感情だと俺は思っているよ」


「……すごいな。自分に利益が無いのに行動出来る様って」


「俺のとっては彼女の笑顔が利益だよ」


「人畜無害だな」


「直言居士だな」


「鈴乃先輩にも言われたよ」


 俺は一言放つと、暫く無言が続く。その沈黙を遮る火狩の言葉、


「お前は人を好きになったことは在るか?」


 俺はそれに対し、一切間を作らずに答える。


「明流」


「あ、好きなんだ……」


 火狩はやっぱりかと言わんばかりの声で呟く。


「まぁ」


 俺は歯切れ悪く答えた。


「なんで両想いなのに付き合ってあげないんだ?」


 その質問が来るとわかっていたのだが、俺はそれに対し、何も返答を考えていない。俺は溜息のようにふーっと吐き出した。そして言い訳らしい言い訳を思いついた。


「怖いんだよ。俺にとって彼女は諸刃の剣だから、それを近くにおいておけないんだ。彼女が足場になるか、枷になるか、それは俺の予想の範疇にない」


「例えが遠回し過ぎてよくわからない。だから論点をずらす。お前、日渡のどこが好きなんだ?」


 彼は俺の横顔を覗き込む。俺は俯き、それから目をそらす。伝わらなかったが、火狩が質問を撤回してくれたお陰で俺は何ら問題なく……いや、あるか。俺が明流をどうして好きになったのか分からない。ただ、俺が彼女に対して向けている好意は性的なもので、不純すぎて言葉を出せない。


「俺に無償の愛情をくれる所……」


 受け身の言葉を入れる俺の発言に火狩は笑いながら、冗談と判るように言葉を返す。


「お母さんかよ!?」


「お前こそ、鈴乃先輩のどこに惚れたんだ?」


 俺は誂い半分で彼の顔を覗き込むと真顔で「おっぱい」と呟かれた。俺はそれに吹き出して高笑いをしてしまった。俺が何を悩んでいたのか忘れてしまったくらい、笑い飛ばせてしまった。


「さっきまでいいこと言ってたのに今ので台無しだ!」


 笑いすぎて涙が出てきてしまう。


「よく不純な理由で好きになったのに、そこまで言えたな!?逆に言わせた鈴乃先輩がすごいのか?」


「まぁ、冗談だ。半分……」


「はん…そ、そうか」


 俺は後ずさり、答える。


「最後に、俺は彼女の成長に必要なら苦難を喜んで与えてやる。矛盾しているだろうか?」


「いいや、筋は通っている。でも、お前がやるべきことか?これは」


「俺がやりたかったことだ。彼女に押し付ける最初で最後の我儘……だといいな」


「立派だ。俺はお前みたいに他人優先にすることが出来ない。保身が基本だ」


「そんなもんでいいんだよ。俺だって、好感度を得たいからやってるんだ」


 だから台無しなんだよ。





 午後からの授業を受けたその放課後。俺、鈴乃先輩、火狩は神器研究室に集められた。


「皆さん、いいものが届きました!」


 真希奈は散らかった書類をかき分けて段ボール箱を机の上においた。


「何?」


 俺はその出てきたものに興味と関心を向ける。


「火消し部の制服です。火狩さんと片葉さんのものになります。他の火消し部の人達より早く注文をしたら在庫が残っていたらしく2人分届きました」


 彼女が箱を開け、服らしきものを手に取った。


「この素材、白化綿を使用しているので癒合薬を使うと肉体と一緒に再生してくれます」


「白化綿って?」


「魔力を加えたってこと」


 鈴乃先輩は説明を始める。


「普通、魔力を通すと色素が欠損するの。だから葉緑体を失って植物は生きていけない。だけど、養分を流し込んで栽培させている。だから特殊素材が実現できるの」


「学校指定のジャージと同じです。転送されたら開いた穴は塞がるでしょう?」


 彼女らの説明は生物が得意な俺に取っては難しくない内容であった。


「学校指定ジャージはポリエステル85%だよ?」


「でも、白化綿が15%有るから再生するのに何ら問題ないんだよ」


 と、先輩は説明を付け加えてくれた。

 火狩は袋に入れられた制服を手に取り、鈴乃先輩に向けて、「先輩の制服は?」と問う。


「家にあるよ」


 先輩は穏やかに返答した。


「まぁ、試着してみて下さい」


 真希奈は笑顔で言い、俺の手を握る。


「まず部屋の移動をして下さい!」


「わ、わかった……」


 さっきこの部屋で着替えていたせいで釘を刺された。

 俺と火狩は近くにあるロッカー室に行き着替える。


「凩のあんな楽しそうな姿、久しぶりに見たよ」


 火狩はジーパンを脱ぎながら言う。絵面が汚いので俺は目を背けて答える。


「そうなんだ……」


「鈴乃先輩から聞いてる?」


「何を?」


「どうして彼女が火消し部をやめたのか」


「ベルゼブブって話しは聞いた。蝿」


「神話上、ベルゼブブは七つの大罪の暴食を司る悪魔とされている。そこから取ったから、能力面では蝿は一切関係ない」


 俺はそうかと適当な相槌を返し、着替え終える。

 ワイシャツの上に裾が短く袖がないスーツ。その下は一般的なズボンにサスペンダーが取り付けられていた。


「まるで軍服みたいだ」


 腕がゴワゴワして気持ち悪いので俺は袖をまくる。


「で、さっきの話の続きなんだが、鈴乃先輩の弟、鈴士に凩は惚れていたらしい」


「だから死んだ時、ストレスで剥奪者になったのか」


「ああ。鈴士は1年で火消し部に選ばれた。それくらいの実力者だった。なんか、雰囲気はお前に似ているんだよ。危なっかしい所とか、極端に冷静な所とか……」


「あー、多分それかも…」


「なにが?」


「経盛先輩が俺を勧誘したの」


「あれは魔人デヴィルが学校に攻めてきたときの対処が良かったからだろ?」


「そうか?」


「そうだ」


 俺達はロッカー室を出て、神器研究室に入る。するとさっきまで鈴乃先輩と真希奈しかいなかったのに、1人少女がいる。その子は三つ編みを両方から垂らしていて、鈴乃先輩の妹のようにも見える。


「初めまして、ナビゲーション科2年の小澤こざわ笑里えみりです。よろしく、月宮君」


「ああ、よろしく」


 ナビゲーション科…3つある学科の1つなのだろう。仕事の内容は名前の通りだろう。


「まずは、出撃の日程、それに合わせた戦術の確認をしましょう」


 と、笑里はメガネを賭けて話し始める。


「火狩さん、いつにしますか?」


「明日。ベルゼブブの索敵が済んでいるわけじゃないんだ。早い方がいい」


「そうですね。早く戦術訓練をしましょう。今日は7時までみっちりやりましょう」




 訓練を通して俺は携行神器の使い方を学んだ。

 1つ目、癒合薬、正式名称イミディエイトヒーラー。錠剤タイプ、ドリンクタイプ、注射器タイプと3種あり、怪我の度合いや戦闘状況に依って使い分ける。

 2つ目、阻害弾、正式名称パラライザーボム。手榴弾や弾丸の形をしており、衝撃で破裂することにより魔力結合を阻止する役割を成す。その際、ブレードやシールドとしての魔力も扱えなくなる欠点もある。

 3つ目、閃光手榴弾、スンタングレネードとも呼ぶ。手榴弾で、爆発時の爆音と選考により、視覚、聴覚を奪う。使用時は自分の目と耳を塞ぐ必要がある。

 そして、俺達の拠点となるのが96式装輪装甲車。昔、日本が自衛隊と言う組織を持っていた頃に使われていた戦闘車両で、神器が作られたっきり滅法使われなくなった。しかし、遠征に行く際、拠点として使用できるように改造されたのが現実である。運転手は神器整備科、ナビゲーション科の何方かの生徒。助手席にはカメラの付いたドローンを操作するオペレーターが居てナビゲートをする。それは勿論、ナビゲーション科が行っている。そして後部座席では戦闘員である防衛基礎学科の生徒と衛生兵である神器整備科の生徒が位置する。

 対(ベルゼブブ)戦では神器整備科の八代やしろしょうという男子生徒が運転手を担当してくれるらしい。彼はこの学校にある自動車部の部長らしい。自動車部は運転だけでなく乗り物の形をした神器の制作もやっているらしい。俺は未だ在ったことがない。




 火狩は今朝、魔人デヴィル討伐をするべく、理事長室に申請を出しに行っていた。


「宝生理事長、お願いします」


「火消し部になって早々、張り切るわね。駄目とは言わないわ。でも、相手はベルゼブブでしょ?」


「はい。だからやりたいんです」


「1人で?」


「……徴収してみます」


 火狩は後ろめたい様子で唱える。既に鈴乃を引き入れるつもりだった彼は悟られたくなかった。しかし、彼は顔が物語ってしまう程単純な性質な為、宝生清子はそれを見極めていた。


「そう。頑張ってね」


「は、はい……」


 消え入るような返答をする火狩。


「失礼します!」

 扉が怒号を鳴らし開いたと思ったら、緑色の軍服を着衣した女性、宝生所縁が現れた。


「どうしたの所縁?」


 清子は縁に向かって母の対応を見せる。


「お母さん、駄目に決っているでしょ?実戦経験のない生徒が魔人デヴィル討伐に言って帰ってこれると思っているの?」


「だからこそよ。経験をさせるために討伐に行かせるわ。それに、浅宮の敷地に踏み込んだのよ?訓練と思ってちゃんとあなた達大人がついて行ってあげればいいじゃない。危なくなったら助けに行く」


「即死したら助けられない」


「頭に大穴空いたって死にづらくなった世の中なのよ?」


「楽観的すぎる」


 親子の論戦を目の当たりにした火狩は目を丸くする。それを気の毒に思った清子は手を叩き提案を出す。


「そうだ、明日までに2人、火消し部と公式戦を行って両方に勝ち、尚且そのメンバーで討伐に望むと言うなら、この申請書を受諾するわ。どう?」


 それを聞いた所縁は溜息を付いた。


「それならいいよ」


 そして渋々答えた。火狩は鈴乃を引き入れるつもりだったため、正直歯切れ悪く宝生親子を交互に見る。


「何かいいたそうね?」


 清子は微笑み、問いかける。


「その……鈴乃先輩。生徒会長はその条件に当てはまりますか?」


「問題なしね」


 清子は待ってましたとばかりに人差し指を立てウィンクをする。


「何故2人にしたのか分からないけど、後のメンバーは明流ちゃんか片葉君がいいと思うわ」


 所縁は渋々助言を出す。すると火狩は迷わず、「月宮で」と目を輝かせて答える。




             ――18.聖女 完――

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