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雷霆の神使と白皮の魔人  作者: 堕罪 勝愚
1章 朱雀の紅炎
16/51

14.徴収

 やっと二章に到達。初期の一章サブタイでは学戦編と書かれていましたが、変えさせていただきました。理由は書きたい内容が有りすぎて中々学内トーナメントに展開が追いつかない為です。

 話は変わりますが、今回のサブタイ、角馬の聖女。鈴乃ちゃんの事を指しています。角馬とはユニコーン、そして聖女というのはユニコーンと一緒に描かれた女性を示しております。何故ユニコーンが此処で出て来るの?と感じるかと思いますが、またしてもがめつくタイトル回収を行いますのでご期待くださいね!

 金曜日になり、今日は卒業証書授与も含めた朝礼が体育館で行われる。

 俺は布団の心地よさを後に洗面所で歯ブラシを手に取り、スクラム入りの歯磨き粉を付け、口に突っ込む。しばらく前、口内炎が熱を帯びていたせいで趣味の1つである歯磨きを楽しめなかった。


 原則、神使学校の高等部は戦闘技能をランク付けし、ランクの高い生徒を学校の守護者として配置。彼らは通常の神使と同じように任務に派遣することもある。そして3学年になった7の月で本格的に神使として“就職”させる必要がある。

 浅宮学園の守護者は火消し部と言う部活動が担っている。


 歯ブラシを水で濯ぎ、コップに水を入れてから嗽をする。

 そしてスクールバッグに生徒証と財布を入れ、沙弓に選んでもらった白のボタンシャツとスニーキーパンツを着衣し、朝食である食パンを焼かずに噛り、家を出る。


「そう言えば、食材が無くなってきたな」


 冷蔵庫はすっからかんで暫くコンセントにプラグを差し込んでいない。

 今日の放課後にスーパーでも寄ろうと決意し、歩を進める。




 体育館には大勢の生徒が整列しており、俺はステージの右端にある部屋に待機していた。

 そうして卒業証書授与が終わると俺のクラスと名前が呼ばれ、俺は遥が待ち構えている壇上へと足を運ぶ。

 遥は昨日の万里花先輩と同じく緑色の軍服を着ていた。


「片葉、あなたに火消し部の長を託します。ただし!私達3人に勝てたらね!」


 マイクを前に遥は生徒全員に伝える。そしてタナトスを使い、姿を消した。


「え?今?」


 俺は触覚と聴覚に集中して身体に力を入れる。


「いや、今じゃないよ」


「え?」


「放課後ね。放課後。勿論、片葉だけじゃないよ。3人1組からなら誰でも参加可能」


 彼女は能力を解き、今日のサービスカリキュラムの説明を初めた。


「参加団体は今日の昼休みまでに名簿を出してね。尚、参加するつもりのある生徒は欠席届を出すことを許可します。ただし、欠席届を出したのにエントリー出来なかった場合は補修になりますので注意して下さいね」


 以前の俺は授業サボっただけなのに補修にはならなかったが欠課扱いにはならなかったな。


「片葉もだよ。死に物狂いで徴収してね」


 彼女の目には殺意に似た物があって、俺は肉体が戦闘態勢になり、立毛筋が収縮した。


「おっと、片葉、未だ戦闘は始まってないよ?」


 彼女はマイクを口元から外し、スイッチを切る。


「だったら敵意向けんな。身体が過度に反応してこうなるんだよ」


 俺の声はいつもより低く、自分ですら冷たさを感じる程だった。彼女の殺意に俺も殺意を向け返したらしい。


「普段は優しい声と口調なのは、猫をかぶっているのかな?」


「否定しない。だって事実だし」


「そういう二面性があるところ、私は好きだよ?」


「俺はあんたも万里花先輩も嫌いだ。タイプは違うが、他人を不快にさせるのが上手い。ま、こっちは憎めて気が楽になるんだけどな」


「ごめんね。これを引き出したくて今敵意を向けた。弁解はするけど、警戒は解かないで。放課後までずっと私を憎みな」


 彼女は話を区切るようにマイクを使い、「参加する予定のある生徒は式が終わっても体育館に残ってね」と告げた。


 式が終わった後、俺は体育館の中央に向かう。整列をしているわけではないが、30人近い生徒は自然と皆ステージを向いている。そして壇上には軍服を着た女性が現れる。演説をするのかのようにマイクに声当てた。此処にいる30人の生徒は予想していたからステージを向いた。まあ、状況から見てそうであることは明白だったな。


「あー。あー」


 身長は高いわけではないのだが、慣れた感じが見えて大人っぽい。


「皆さんおはようございます。私は宝生所縁ゆかりです。この学校の理事長に紹介されて実技指導者になりました。ま、母なんですけどね」


 宝生……その名前は聞き飽きた。またあんたの直系かと思うと耳が痛いな。


「さて、今回のSCは【対立】。先程の粟島さんが言っていた通り、3人組を組んでもらいますが、全員で火消し部の3人を倒すのではなく、自分のチーム以外の人達と争ってもらいます。勝ち上がったから火消し部になれるわけではなく、私が見ていい動きだと判断したらその人は火消し部に無事入部できます」


 俺がやった【奪取】は敵の心臓を奪うと言ったシチュエーションで行っていた。今回はどんなストーリー性が込められているのだろうか?目だけで左右を見た雰囲気からして周りの人に問える状態ではない。


「これは私が考えた訓練ですので未だ導入されていません。でも、教育委員の方達からは評価高いですよ!?」


 なんだ、此処にいる全員初見か。


「でもって、この訓練のストーリーを紹介したいと思います」


 ステージの奥にスクリーンが降り、プロジェクターが光を放ち、映像を生み出す。その3分間のビデオに描かれていたのは2年前の事件の説明である。内容は1人の神使が裏切り、魔人デヴィルに協力したと言うものである。


「そう。これは“裏切り”や“内戦”を想定したものです」


 率直に、これは必要ない訓練だと思う。実際、学生同士を戦わせて序列を出しているではないか。


「人間と言うのは愚かな生物です。自分の営利のためにしか動かない人達ばかり。以前に、政治的対立で神使同士が争った経緯があります。それを阻止することは私には出来ませんし、皆さんの中でも出来る人は少ないでしょう。事実、此処にいる月宮片葉さんの父、月宮片名さんだって政治的対立のせいで亡くなったと言っても過言ではないのですから」


「(あ?セイルと呼ばれる魔人デヴィルが親父を殺したんじゃないのか?)」


「一通り説明を終えたので此処で解散とします。では、健闘を」





 俺は食堂のテーブルに頭を埋める。宝生所縁の話が気になって仕方がない。別に父に思い入れなんて無い。死んでくれて清々している。


「おっす、片葉くーん!」


 誰かに頭を触れられ、揺さぶられる。


「誰!?」


 俺は頭を上げると緑色の軍服が見えた。


「所縁おねーちゃんだぞ!久しぶり片葉」


「は?久しぶりって、なんですか?」


 彼女は俺の隣にピチッと座る。


「敬語じゃなくていいよ。だって姉弟じゃん」


「――うん。あまり大きな声で言わないでほしいな」


「あ、ごめんごめん。と言うか、君よりも私の母に迷惑が掛かるのか。で、何悩んでるの?」


「ゆかねえが父の死について触れたから、考えちゃって」


 俺の記憶が正しければ彼女に会ったことは一度もない。だが、自然とそのあだ名で呼んでしまった。


「セイルって魔人デヴィルに君のお父上は捕まったの」


「人質って事ですか?」


「そう。救出するか否かで会議になって結局、言い争うだけ争って何もしなかった。それが彼を殺した原因」


 彼女の話には納得は行く。でも、何処かで腑に落ちない点があった。でもそれが何かははっきりわからない。


「どうした?」


「なんでもない。さって、死にものぐるいで仲間を探してきますかな」


 俺は立ち上がり、彼女から距離を取った。




 まず、俺がこの学校で仲のいい人間はどれくらいいただろうか。真っ先に思い当たったのは明流である。彼女は俺に恋情をあからさまに向けてきている。でも、正直、彼女と組んでうまく戦える自信がない。互いに独り善がりな部分があるからな。

 次に浮かんできたのはもっと具体的な人材は沙弓だ。彼女とは【奪取】の訓練の時に一緒に戦ってすごく動きやすかった。

 で、環奈との戦闘を振り返ってみて思ったのが彼女も俺も同じインファイターで3人組としてメンツに組み込むのはミスマッチであろう。

 俺は早速生徒会室に足を運んだ。授業中なので試合に参加中のメンバーしかいないだろう。


「失礼します」


 俺はノックをすると予想通り、生徒会が揃っている。俺の知らないのも居たが俺は堂々と生徒椅子に座る。


「月宮。お前、貫禄あるよな」


 火狩は向かい側から俺の姿をまじまじと見つめる。


「そうか?そんなことはどうでもいい。みんなはチーム決まった?」


「ああ。俺は決まったぜ」


「誰と?」


「沙弓と克己だ」


 克己…。ああ、土屋のことか。


「そっか、沙弓には先客がいたか」


 明流は湯呑みに口をつけチラチラとこちらを見てくる。まあ、もう明流しか組む相手は見つからないのだがな。


「明流」


「未だ居ませんよ?」


 俺が問う前に答える。この子、俺の心でも読めているのか?


「うん。言いたいことはわかってるね?」


「はい…。じゃなかった。いいえ。はっきり言って下さい!」


 言わせたいのだろうか。まあ、言っても減るもんじゃないし言うか。


「明流」


「はい!」


 彼女の口角は引き攣っている。もう笑顔が隠しきれていない様子だ。子供っぽい笑顔なのに、どこか扇情的。


「やっぱいいや。忘れて」


 俺は敢えてそっけない様子を見せると彼女は泣きそうな目を見せて「待って下さい!」と言って俺の二の腕を両手でガッチリ掴んだ。さっきの湯呑みは宙を舞い、俺はそれを彼女が掴んでいない側の手でつかみ取り、お湯をこぼれないようにした。


「あっぶね!」


 湯呑みは淹れたてなのか、熱を帯びている。反射で手を離しそうになったが、耐え机に戻す。


「ご、ごめんなさい」


 彼女は悲しそうな目を向けて陳謝する。その上目遣いは先程の子供っぽい表情と同様、俺の情欲をそそる。零れそうになる感情と涎を内に戻し、彼女の額に人差し指と中指を押し付けた。


「おら!」


 彼女は力の通りに仰け反り、手を離し、バランスを崩す。俺は明流の肩を掴んで後転を阻止する。


「ごうわ!」


 彼女は今までに発したことがないであろう奇声を漏らす。それで吹き笑いしてしまった。


「片葉さん笑ってないで。早く言って下さい」


「何を?」


 この一連の行動は此処にいる生徒会役員共が見ている。知らない連中もいる状態でも、俺は赤面一つせず行動できている。こういう時、俺の父の洗脳は便利だよな。


「早く私にチームに入れと言って下さい」


「なんで?俺になんのメリットが有る?」


 とことん俺ははぐらかす。こうすることで彼女は必死に俺を引き留めようとする。その空回り具合が見ていて飽きない。


「月宮」


 火狩は俺に耳打ちをした。


「お前、性格悪いよな?」


「そう?」


 まあ、サドかマゾかと言われたらサドかも知れないな。

 俺は彼女から距離を取ろうとすると、リストバンドの上から両手首を握られた。


「片葉さん!」


「はい、片葉さんです」


「私と付き合って……。――じゃなかった」


 彼女は赤面して悶え転がる。


「何この茶番」


 沙弓はこの部屋に設置されている扉からでてきて、その光景を見つめる。その扉は恐らく準備室らしき部屋とつながっているのだろう。


「片葉、組む人決まってる?」


 追って質問してきた。


「未だ居ないよ」


「わ、私は?」


 顔を掌で隠し、右目を指の隙間から照らして俺を見上げる明流。


「そ、そう。前衛タイプの子が、組む人決まってないって言うから、その人と組んでみたら?」


「環奈?」


「違うわよ。環奈はあんたとは相性が悪いからね」


 俺が先程考えていたことだ。彼女も思っているということは俺の判断が正しいということだろう。


「隣の部屋で待っているみたいだから行ったら?」


「うん。そうする」


 俺は頷き、廊下とはつながっていない引き戸を開ける。


「失礼します」


「あ、はい」


 彼女の髪の毛は染めたかのように薄い茶色だった。編み込んだハーフアップの髪型だったため清楚感があり、悪目立ちはしなさそうだ。

 彼女は2つしか無い椅子の1つに座っていた。俺はその向かい側に座る。最近、このシチュエーションになることが多いな。


「あなたが月宮君か。私は西屋にしや瑞香みずか。バレットはホーミングとファイア。コアグリップはブレードの【サーベル】2つ持ち。片方は剣特化型、もう片方は盾特化型に調節してあるの」


 丁寧に自分の装備を教えてくれた。彼女は仲間になる第一条件を理解した上でこの会話をしているのなら相当頭がいい。


「ああ。よろしくね。知っていると思うけど、俺は月宮片葉。出来れば下の名前で呼んでくれ」


「なら、私も下でいいわよ」


 俺は頷き、会話を続ける。


「俺のバレットはリコシェとファイア。コアグリップなしで、専用神器は【ケラウノス】。左右にグローブと膝当てにネックアーマーの装備。効果は全身からのシールドを展開、足でバレット発射、それから【チャージバレット】の円滑化。未だ一度も足でバレットを撃ちだしたことは無いんだけどね」


 彼女は目を丸めた。


「オプションって言うか装備多くない?」


 俺は左肘を曲げ、掌を上に向け、親指と人差指を繋げて輪を作る。


「これの力だよ」


 彼女はそれにあからさまに嫌そうな顔を見せる。


「ごめん、冗談だよ。でも、かなりポイントかかってる。借金なんだけどね。魚止森さんは俺の体に合う神器を選んでくれたんだ」


「安物は体になじまないんだね?」


「そんなに厭味ったらしく言わないで。俺も貧民だから」


「日渡からの供給は?」


 この子、金持ちを妬むタイプの貧乏人か?


「なあ、瑞香。もう1人のメンツは決まってる?」


「決まってないよ。日渡は?」


 明流かぁ。俺は首を左右に傾けて首を鳴らした。


「私ですか!?」


 明流はゆっくり引き戸を開けて入ってきた。


 そう、彼女は扉に耳を当てて話しを聴いていた。他の連中は恐らく引いていたのだろうが彼女にはお構いなしであろう。


「そう。私だよ」


 溜息混じりに言葉する。


「明流。盗み聞きは良くないぞ。もしお前が好きになった相手が俺じゃなかったら……」


「それはありません!」


 彼女は俺の言葉が終わる前に否定し、俺の右手を両手で引っ張り、立たせ、椅子を横取りした。


「片葉さんは私を嫌いですか?」


「いや、大好きだよ」


 俺は悪びれも恥ずかしげもなく答えると、彼女は椅子と一緒に倒れ、転げ悶た。


「またか」


 俺は椅子を戻し、すぐに座る。2人で椅子取りゲームをするなんて初めての経験だよ。


「明流ごめん。嘘」


 着物を汚しながら転がる彼女に俺はため息混じりに呟く。


「さて、このメンバーが【対立】のメンバーだけどいい?」


「私は問題ないよ」


 俺は進行し、瑞香は親指を立てて応答する。明流は俺の足首を掴み、息を荒げる。


「いいですよ!」


「なあ、瑞香、こいつって入学当初から痴女なの?」


「そんなわけ無いじゃん。あんたが悪い方向に変えたんだよ」


「そこまではっきり言われるとなぁ。反省するか」





 俺達は食堂に行き、作戦を立てていた。


「私的には臨機応変な対応を取るために、敵の情報を片っ端から頭に叩き込んだらいいと思うんだよね!」


 瑞香はノートを広げ、シャーペンに触れる。


「片葉。誰から知りたい?」


「誰が出るの?」


「そこから説明しなきゃいけないか……いや、やめた。順を追って説明するよ」


 彼女はノートにシャーペンを滑らせる。


「まず、厄介なのは高浜沙奈と梨奈の2人」


 彼女はノートに名前を書いた。そして沙奈の列にはグレネードとシングル、梨奈の列にはスナイパーとグレネードと付け足す。


「沙奈さんは対戦車ミサイル、FGM-148ジャベリンと【アナトー】と言ってバレットの固化を素早く行い、梨奈さんは対物ライフル、バレットM82と【モート】と言う爆発を縮小して威力を高める専用神器を装備しています」


 明流は具体的な装備の説明のみを行った。


「まあ、その2人は一緒の組なのか?」


「そうじゃない?それにプラスで萩下透湖っていう人が入ると思うよ」


 俺の問いに瑞香は説明し、ノートの次の段に書いてからシングル、ファイアと付け足す。


「彼女の専用神器は【トラソルテオトル】と呼ばれる足につけるタイプのミサイルポッドにコアグリップは改造したソードを扱っています。中距離も近距離も対応出来るのが彼女の強みです」


「もし、そいつらと遭遇した時、どういう立ち回り?」


「まず、瑞香さんが透湖さんの足止め、片葉さんが後衛2人に奇襲。私は片葉さんの援護。で、どうですか?」


「私は賛成。片葉の機動力は使わにゃ損でしょ」


 明流の作戦に瑞香は同調する。別に問題はない。ただ、瑞香の戦い方と透湖の立ち振舞が知らないのでそこは不安でしかない。


「ところで、ケラノウスってチャージバレットを円滑にするって言ってたけど、そんなに威力を上げたいのならハンドガンタイプのグリップを使えばいいのにって思ったのは私だけ?」


「そこは私も思いました」


「それ掘り下げるとメタフィクションになるね。でも、言っても問題ないか。雷霆のタイトル回収のためにこうなったんだよ」


 実際のところ、俺は銃で的に当てるのが苦手だ。しかし、掌からでるものであれば指先の如く操作出来る為、魚止森さんが設計した。


「次、はやししゅう


 瑞香はノートに名を書き、ショットとファイアと付け足す。この羅列を見ていると本当にリストみたいだ。

「林さんは散弾銃であるフランキ・スパス15とマシンピストルであるウージーを両手に装備しています。その為近距離銃撃戦を好み、敵を20から40メートルの間合いに誘い込み攻撃します。それ以上近づいたり、離れたりすると瞬時に移動することが出来る機動力も兼ね備えていて、厄介です。生徒会メンバーでは片葉さん、土屋さん、火狩さんを覗く唯一の男子です」

 生徒会は女子が多いんだな。


「彼の戦闘は例えるなら片葉さんの攻撃力を削いで射程距離を伸ばしたようなものになります」


「結構買うね?」


 俺は林に対する褒めようを明流に問いてみた。


「強かったですもの」


 戦ったことがあるのか。でも口調からして勝ち負けを言わないところを見て敗戦だったのだろう。


「日渡はド近距離か、ド遠距離じゃないと対応出来ないもんね」


 瑞香は彼女の説明を加える。機動力が無い彼女とは相性が悪かったのだろう。


「で、林と組むであろうメンツは凛と飛香。まず凛の説明からしようか」


 秋元凛、スナイパー、ショット、とリストを埋めていく瑞香。


「彼女は盾崩しの狙撃を得意とします。装備はDSR‐1。そのコアグリップに埋め込まれた専用神器は【ミクトランシワトル】。死神の名前です。狙撃も正確ですし、防御不可能な弾を撃ち込んできます。弱点は連射性が極めて低いですので、1撃を回避すれば次の行動に大きな余裕と隙が出来ます」


「高浜梨奈とどっちが狙撃の威力が高い?」


「威力は梨奈さんのほうが強いですが、彼女の狙撃では火狩さんの魔力障壁シールドを壊すことは出来ません」


 威力ではなく、用途が戦術の鍵なのか。俺は改めて考え、それを頭に入れる。


「防御不可能と言いましたが、耐えしのぐ方法はありますよ」


「ん?」


「ダガーで弾丸を叩き落とすんです。そうすると遅延生のあるショットが飛び散る前に魔力を吐き散らす事ができるんです。実際、水鳥さんがやっていましたよ」

 確かに彼女の神威【蝗害】であれば弾丸を目で見て反射で捉えられないこともない。だが、俺には出来ない芸当だ。


「次、飛香」


 泉堂飛香、ファイア、グレネード。


「彼女は【パチャママ】と名付けられた大太刀が武器です。リコシェのバレットを装備したときと同じ特性を使えるのが彼女のコアグリップです。最大の弱点は重量です。片葉さんなら、難なく対峙出来るでしょう」




              ――14.徴収 完――

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