第三話
昼休み
今日も俺は相変わらず歌詞を書いている。だがその日はいつもより落ち着いて書けない。
「なぁ、歌詞書くのって難しいんやろ?」
晴が居るからだ。転校して来た晴が慣れるまでのお目付け役を担任に言われたからだ。
「なぁ、聞いてるん?」
「あぁ…聞いてる」
俺は面倒そうに答える。すると晴は何かを思い出したかの様に
「あっ!そう言えば、ケイ君ってけいおん部の部長さんなんやってな?」
「そうだけど…それがなに?」
「今度、見に行ってもえぇ?」
俺は他人に練習風景を見られるのが嫌だった為
「ダメだ」
と少し冷たく言った。
「何で?おもろそうやんか~」
その言葉に少し苛立ちを感じた俺は
「遊びでやってんじゃない!そう言う冗談半分みたいな発言はやめろ!」
と怒鳴ってしまう。余りに大きな声で怒鳴ったせいか、周囲にいた生徒が集まり始めた。そして晴は少しの間黙り
「…ごめん…」
と小さな声で言う。俺は気まずくなり、気が付くと晴の手を取り走り出していた。
「ちょ…何処行くん?」
真っ赤になって言う晴に
「屋上」
とだけ伝える。そしてやっとの思いで屋上に着く二人。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「ハァ…ハァ…なっ、なぁ…いつまで手を繋いでるん?」
真っ赤になった晴が恥ずかしそうに言った。
「ごっ、ごめん…気が付かなかった」
俺は手を離し後ろを向く。
「ふふっ、別にえぇけどな♪ケイ君の手…温かかったし」
そう言いながら晴は日向のあたるフェンスにすがる。俺は恥ずかしさのあまり、何故屋上に来たのかがわからなくなる。そして数分間、二人は黙ったまま…。そして
「なぁ」
と同時に声をかける。
「ケイ君から先にえぇよ?」
「いや…キミからで良いよ…」
そう言いまた黙る。
「なぁ…キミって言うのやめへん?」
「えっ?」
「うちはケイ君の事をケイ君って呼んでるやん。ケイ君もうちの事を名前で呼んでや」
いきなりの晴からの提案に困り下を向く。
「ん?」
そんな俺を晴は覗き込む。
「なっ、中條…さん…」
「ん~…晴って呼んでくれへん?」
まさかの下の名前で?と思いながらも勇気を出して
「はっ、晴…さん…」
「は~る♪」
「はっ、晴…」
「うん♪それでえぇね♪」
と晴が言って直ぐ、屋上の扉がカタカタと不自然に鳴っている事に気が付く。俺は扉がの前に行き勢い良く開け