国際情勢を適当に分析してみる(8) ~2020年アメリカ大統領選挙に対する不安~
特にターゲットにする読者層を決めず徒然なるがままに筆を走らせる、このエッセイ。
今回の御題は「アメリカ大統領選挙の行方」である。
久しぶりなのに、随分大それた御題を選んだと正直思う。
他国の選挙に口を出すのは些か躊躇しないでもないが、僕なりに気になって――いや不安が湧いてきたので筆を執ることにした。
尚、僕はジャーナリストでも国際政治学者でもない。そのため的外れな指摘をするだろうが、「分かったふりをして、また馬鹿な主張しているな」と笑いながら流してもらえると助かります。
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2020年のアメリカ大統領選挙は「トランプVSバイデン」であるが、「トランプVS反トランプ」の構図と言い切っていいだろう。僕は別にトランプ氏に好意的な人間ではないが、これほど見事なくらい反対勢力が結集するというのには、些か違和感を覚えないでもない。
このような構図になる理由は、トランプ氏の人間性や政策への忌避感もあるだろうが、対抗馬であるバイデン氏側の事情も大きいと思う。
ぶっちゃけ、彼は人々の印象に残るような候補者ではないのだ。
民主党予備選挙で大勝しているが、それは結果だけをみれば。予備選序盤は党内左派のバーニー・サンダース氏に押しに押されまくっていた。このままサンダースが勝利するのではないか? と思われたほどの快進撃だった。
サンダース氏は異端の候補者でした。
社会主義者を標榜するサンダース氏の主張は、民主党主流派からみても異端といえる。第三党から選出されるならいざ知らず、そのような人物が民主党の大統領候補になるかもしれない。
彼らにしたら、正に悪夢だったのだろう。
悪夢が現実になりかけたとき、彼らは急遽大同団結が成立する。
ゲームの流れが変わり、バイデン氏は民主党予備選を勝ち上がれました。
このような経緯で勝ち上がったバイデン氏は、政策で選ばれたというよりも、政略で選ばれた面が強い候補者と言えるだろ。
菅首相と似た面があるのだが、菅首相と異なり、バイデン氏の本選はこれから。
ここがバイデン氏の急所だと、個人的には思う。
政策で勝ち上がった候補者ではないため、「これだ! 俺はこれを実現する!!」と強烈にアピールするモノが欠けている。
政策で勝利したわけではないのだから、当然だろう。
彼が主張する政策は、他の民主党候補者も唱えたであろう政策なのだ――すこし言い過ぎかもしれないけど。
そのような候補者である以上、悲しいかな、トランプ氏の失政や欠陥を訴えるしかない。
バイデン氏はどこまで行っても、反トランプの候補者にしかなれないのだ。
「おいおい、それは言い過ぎだろ!」
反対意見があるのはわかる。
わかるのだが、冷静になって聞いて欲しい。
バイデン氏と候補者に過ぎなかった段階のバラク・オバマ氏を比較して、なにか違いを感じないか?
「チェイジ」「イエス・ウィ・キャン 」のようなスローガンや、「グリーンニューディール」みたいな政策を、バイデン氏から連想できるだろうか?
そう、連想できないのだ。
僕がアメリカ国民ではないことを考慮しても、今まではイメージくらいはできた。
バイデン氏はオバマ政権下において副大統領だったこともあり、比較的知名度はあるが、どこかぼやけた候補者像である。
トランプ氏とバイデン氏の政策対比を掲載したロイター社の記事などを読んでいるので、彼がなにをしたいのかはわかる。わかるのだが、それでも耳に残らないというのはどういうことなのだろう?
僕は、ここに一抹の不安を感じる。
◇
バイデン氏云々の話しは一旦脇において、歴史を紐解いてみよう。
歴史を振り返ることで、ある種のパターンを見つけられるかもしれない。
現職アメリカ大統領が再選を阻止した人物は、近年三例存在する。
ジェラルド・R・フォード大統領(共和党)から勝利した、ジミー・カーター氏(民主党)
ジミー・カーター大統領(民主党)から勝利した、ロナルド・レーガン氏(共和党)
ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(共和党)から勝利した、ビル・クリントン氏(民主党)
これらを適当に分析してみよう。
経済が落ち込んでいるときは、現職アメリカ大統領が再選されないとよく指摘される。その辺の話しは専門家に譲ろう。あくまで適当に分析するのだから、テクニカルな話しは勘弁してほしい。
まずはジミー・カーター氏から。
対抗馬であるフォード大統領が再選されなかったのは、ウォーターゲート事件を仕出かした、前職のニクソン氏の影を引きずってしまった面が大きい気がする。その意味でカーター氏は反フォードを――いやクリーンなイメージを売りにしていた候補者だった
クリーンなイメージ以外にも、選挙のスローガンとして大きく訴えていたものがある。
それが「ボーン・アゲイン」である。
ボーン・アゲインって、なに?
?マークが付く方もいるだろう
多少意味を知っている僕でもピンとこないのだが、それは僕が非キリスト教徒だから。「ボーン・アゲイン」とはキリスト教用語の一つ。詳しい意味は理解していないが簡単に説明するなら、キリスト教福音派の人々に「自分は神を信じますよ。キリスト教福音派の意見に耳を傾けますよ」と主張したのだ。
それ以外の人にはさっぱりだが、キリスト教福音派がアメリカでは大きな宗教勢力であることを事を考慮すると、カーター氏がターゲットにした支持層がみえてくる。
反腐敗、親キリスト教福音派。
訴える対象が限られるため際どい戦術だが、そもそも現職が圧倒的有利なのだから致し方ない選択かもしれない。
一般投票の50.1パーセントを獲得して勝利というのも、納得の数字である。
続いてロナルド・レーガン氏を振り返ろう――としたいのだが、彼の場合は対抗馬であるジミー・カーター大統領が、とてつもなく不人気だったから勝利したいうべきだろう。
獲得選挙人において10倍の差がついたのだから、そうとしか言いようがない。
現職大統領がこれほど大差で敗北したのは異例である。
他に再選されなかった大統領の中でも、際立つ数字。例えばフォード大統領は僅差の敗北であり、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領にしても2倍差である。
これだけ圧倒的差がつくようでは、ジミー・カーター大統領は極めて人気のない大統領だったとするしかない。
最後にビル・クリントン氏を振り返ってみよう。
再選されなかった大統領はジョージ・H・W・ブッシュ氏。「父ブッシュ」とも呼ばれる彼は、第43代アメリカ合衆国大統領であるジョージ・W・ブッシュの父親である。
父ブッシュは二倍の差でクリントン氏に敗北しているが、人類史に大きな足跡を残した大統領と言ってよい。
なんであの人再選されなかったのだろうと、僕個人は今でも首を捻るくらい。
それくらいの業績を上げたと思う。
冷戦終結を終結させ、湾岸戦争に勝利し、ソ連崩壊させた人物。全てを父ブッシュ個人の偉業とするのは言い過ぎだが、冷戦終結に始まる混乱した時代を、巧みに軟着陸させた外交手腕は評価されて然るべきだろう。
長き渡った冷戦を終結させた偉業は、皮肉にも彼のアキレス腱となる。
冷戦終結により経済問題が今まで以上に重視されたことで、低迷する現状を厳しく追及されたのだ。
父ブッシュの経済政策は、中長期的には効果があったといわれる――クリントン政権が好景気に沸く土台を作ったのは、父ブッシュだと。
いずれにしてもクリントン氏は、その流れを巧みに掴んだ。「It's the economy, stupid」とスローガンを唱え、「経済をもっと重視しろよ、このやろう」みたいな主張をしたのだ。経済問題を争点にしたのは第三勢力のロス・ペロー候補らしいのだが、巧みに使いこなしたのクリントン氏だったのだろう。
3例を振り返ってわかることだが、選挙においてスローガンは重要な要素である。
そこでバイデン氏の選挙スローガンだが、調べてみると「ビルド・バック・ベター(より良き再建を)」と唱えているようだ。
……そういえば、言っていたような。
海外ニュースなどを比較的よくみている筈なのだが、僕の記憶には残っていなかったらしい。
選挙スローガンは良くも悪くも馬鹿みたいにニュースに流れる、呪文のような代物である。「アメリカ・ファースト」「チェイジ」「イエス・ウィ・キャン 」はその典型。選挙スローガンはムードを創り出し、候補者像を単純化する効果が期待できる。
再選を阻止してきた3氏は選挙スローガンを使いこなしてきた――レーガン氏は現職カーター氏が一際不人気だったことで、霞んでしまったが。
これらの例と比較して、バイデン氏の選挙スローガンは正直今ひとつである。
大丈夫なのか? 彼。
◇
長々と語ってきたが、そろそろ結論に入ろう。
バイデン氏がイマイチ弱い候補者と主張したいのは、ご理解いただけたと思う。
だが、僕の不安はそこではない。
バイデン氏が逃げ切り勝利するとか、トランプ氏逆転勝利するとか、そんなことはどうでもよい。
僕が今回の選挙で恐れるのは、一つだけ。
ここまで「トランプVS反トランプ」の構図になった状況で、トランプ氏が再選されたとしたら、収まりがつくのだろうか?
僕の不安はこの一点に尽きる。
開票直後にトランプ氏が勝利宣言するのを恐れるとか、選挙結果を受け入れないんじゃない? とかマスメディアが主張しているが、彼らは僕が懸念する要素から目を背けている。トランプ氏が再選するはずがない、と思い込んでいる気がしてならない。
これだけ煽りに煽ってトランプ氏に敗北したら、彼らは引っ込みが効かないだろう。
信じたくもないかもしれないが、トランプ氏は支持率で確実に追い上げている。
その差は5%かそこら。
マスメディが報道するトランプ氏の支持率自体が当てにならないのは、前回の大統領選挙で証明されている。実際はもっと僅差ではないだろうか。この点も僕の不安を助長する。
どちらが勝利するかはわからないが、僕なら英国ブックメーカーが発表するオッズを信用する。
ブックメーカーとは、所謂賭け屋である。
ありとあらゆる勝負事を賭けの対象するとしている。金が懸かっているだけあり、主義主張など二の次。ある意味、もっとも冷静で冷酷な数値と言えるでしょう。
9月2日時点のロイターが伝えるブックメーカーの数字によれば、トランプ氏の追い上げは事実らしい。
選挙の分水嶺。
アメリカ合衆国大統領選挙討論会は、これからである。
トランプ氏は得意とするのに対して、バイデン氏はどちらかといえば苦手らしい。そのことは民主党予備選でも証明されている。
……大丈夫なのか、彼?
トランプ氏の大逆転はあり得るかもしれない。
確率は低いだろうが、まだ否定できる段階ではないだろう。
選挙は民主主義の根幹を成すシステムである。その結果がどんなに不満であっても受け入れるしかない。それが民主主義の原則なのだ。
万が一トランプ氏が逆転勝利したとき、メディアなどがすんなり白旗上げるのか?
僕にはそのイメージが浮かばないので、不安で仕方がない。
今回のところは、この辺で。
では、では。




