国際情勢を適当に分析してみる(4) ~イギリスのEU離脱について斜め読みしてみる ~
特にターゲットにする読者層を決めず徒然なるがままに筆を走らせる、このエッセイ。
今回の御題は「イギリスのEU離脱」である。
最近話題のニュースなので、ある程度内容を把握されている方は多いと思う。僕は報道各紙が伝える内容を斜め読みする捻くれた人間である。今回はこんな人間ならばどのような想像をするのか。その点を書いていこうと思う。
尚、僕は報道機関に所属もしていないし、国政政治学を教える教師でもない一市民なので内容が的外れな可能性は十分にある。その点を踏まえながら、「また、馬鹿な主張をしているな」と思いながら流し読みして頂けると助かります。
EUとは欧州連合のことであり、現在所属の加盟国は28か国にまで増えている巨大な組織である。ECから発展した組織は独自の大統領と議会、そして独自通貨ユーロを発行するまでに至っている。まあ、EUに所属している国家の全てがユーロを導入している訳ではなく、イギリスやデンマークなどは自国通貨の使用を選択している。
ドルに対抗する基軸通貨となることを目的にした共通通貨は、経済の素人の視点から見てもなにかと危なっかしく思えるのだが、今だ存在している点については評価していいと思う。
イギリスはEUに所属しながらユーロを導入していないが、その経済・政治力ゆえに無視できない影響力を持っている。
事実、キャメロン首相の我がま――失礼、EUの現状に対する改善策を打診して、とりあえず飲ませている。財政破綻によりユーロから追放されかけたギリシャが似たような主張をしたとき、まるで相手にされなかったことを思えだせば、その影響力は推して知るべしだろう。
まあ、イギリスとギリシャを比較するのは些か失礼な気がするが、他に似たような比較例がないのだから許してほしい。
ところでイギリスにおけるEU離脱論は、今に始まったことではない。
そもそもEUの前身であるECの発足に散々邪魔をしてきたのだ。元々、イギリスという国はヨーロッパ大陸が一つにまとめるということに、ある種の忌避感を覚えてきた。歴史的経緯を考えれば、この先もイギリスにおいてEU離脱を求める声が絶えることはないだろう。
そのような国がEUに参加する決断を下した要因は、経済的な要因が感情的忌避感を上回ったと推測する。グローバル経済の時代、大きな経済圏に所属することは有利になるのだから。
イギリスにおけるEU離脱論が存在し続けるのは必然だとしても、EU所属するに至った動機を無視してまで離脱派が力を持ち、ひょっとしたら離脱するかもしれない状況に至った要因はなんであろうか?
まず、経済的要因は考えられない。
結果として経済利益が得られるとしても、EU離脱時に関して言えば明らかにマイナスになるだろう。10年先を考える政治家ならまだしも、そこまで先を見通せない国民がマクロ経済的利益を動機にするとは僕には思えない。
外国から流入する外国人が原因だろうか?
ニュースではこの点を指摘する声は大きい。というか、この点だけを指摘している気がする。
イギリスは医療が無料など――ただし、医療を受けるまで時間がかかるらしいようだが――セーフティネットが整備されている国らしい。同規模の経済力をもつフランスと比較したとき、どちらが魅力的かは僕には判断しかねるが、イギリスに魅力を感じる人々が一定数存在している点だけは確かだ。
もし仮に鳩山首相が提唱されたような「東アジア共同体」がEUと同程度の内容で成立し、人の移動が自由化され、対馬海峡に大陸を繋がるトンネルが整備されたとしよう。
恐らく日本には大量の移民が流入するのではないだろうか。
生活に直結する問題なため、イギリス国民が抜本的な問題解決のためEU離脱を支持している可能性は十分ある。
だが、それだけであろうか?
人が物事を判断するには複数の要因が存在するため、一つの要因だけで政策が決定されることはない。仮に他の要因が存在しているとしても、報道各紙が意図的に伝えていない可能性はゼロではないだろう。誤解してほしくなのだが、別に陰謀論や世論操作を指摘したいのではないのだ。ただ、別の可能性を探ってみたいと思うだけであり、それがタイトルにある「斜め読みをする」に繋がる。
ここでイギリス議会に議席を持つ諸政党の態度を検討してみよう。
EU残留を一枚岩で支持する政党はスコットランド民族党であり、逆にEU離脱を一枚岩で支持する政党には英国独立党である。
労働党と自由民主党は残留の声が大きいが、無条件というわけではないようだ。
保守党は分裂状態。国民に人気があり次期イギリス首相の呼び声高いロンドン市長アレグザンダー・ボリス・ジョンソン氏がEU離脱を支持している点からも、保守党の混乱ぶりが想像できよう。労働党も似たような状況らしいが、少なくとも保守党よりは混乱しているようには思えない。
アイルランド民主統一党はどちらかといえば、保守党に近い姿勢にように思える。
ここで注目したいのはイングランドに近い政党ほどEU離脱を支持し、イングランドから離れている政党ほどEU残留を支持している傾向がある点だ。
その極端な傾向を映し出しているのが、スコットランド民族党と英国独立党である。
アイルランド民主統一党がEU離脱に近い立場なのは奇妙かもしれないが、北アイルランドはイギリス残留を望む人達が多数派である点を考慮すれば、彼等の態度は理解できるだろう。
分析はこのくらいにして、ここから僕の推測に移ろうと思う。
ここまで書けば予想された方もいるかも知れないが、イギリスのEU離脱するかもしれない状況まで悪化した要因は、スコットランド独立に関する住民投票が大きいと僕は考える。正確な統計結果が手元にないため断言はできないが、この時期くらいを境に、EU離脱派を支持する声が大きくなったように僕には思える。
薄氷を踏むような結果ながらもスコットランド独立は支持されなかったが、スコットランド独立を求める声が大きくなるという副作用をもたらした。
思い出してほしい。
スコットランド独立による経済的混乱を恐れて住民投票は否決されたかもしれないが、経済的混乱はイギリス社会全体に及んだ可能性があったのだ。
イギリス王国が解体した場合、残される側も経済的影響を被る。イングランド+アルファに格下げになる恐怖をイングランドに住む方が感じたのではないだろうか?
イングランドはスコットランドよりも経済規模は大きいが、スコットランドはウェールズや北アイルランドよりは経済規模が大きいのだ。もし起きたかも知れない経済的損失は尋常ではない。
なによりスコットランドにはトライデントD5ミサイルで武装したヴァンガード級原子力潜水艦が母港する、クライド海軍基地が存在するのだ。原子力潜水艦による核武装を国防の重要な要素にすえるイギリス政府にしたら、独立されたらたまったものではないだろう。
スコットランドが独立を可能と判断したのは、ユーロという独自通貨が自国の経済力以上の恩恵を与えるからだ。ポンドはその繋ぎとして使用できれば良かったのだが、「ふざけるな」と脅しつけられたため甘すぎる構想が論破されたのだ。
スコットランド民族党がEU残留を支持し、英国独立党がEU離脱を支持するのもこの辺に理由がある。選挙で大敗を喫しているが労働党はスコットランドを重要な支持基盤としているため、スコットランド民族党に近い態度を示すのは必然だろう。
保守党はアレグザンダー・ボリス・ジョンソン氏がロンドン市長を務めている点からも、イングランドを支持基盤としている。金融街シティーは余計な混乱を好まないためEU離脱には迷惑しているだろうが、イングランド全体という視点で見ればEU離脱に傾く人が多いのだろう。だからこそ党の意見が分裂しているのだろう。
アイルランド民主統一党がEU離脱に近い立場なのは奇妙かもしれないが、北アイルランドはイギリス残留を望む人達が多数派である点を考慮すれば、保守党に近い態度になるのは当然かもしれない。
結論に移ろう。
僕の考えでは経済的な損失が発生しようとも、スコットランド独立がしにくいような状況を起こせるならばEU離脱をした方がマシだと判断した国民が、イングランドを中心に多くいるのではないだろうかと推測する。少し短慮で浅はかな考えのように思えるが、逆にいえば目先のことに囚われがちな市民視点の意見ではないだろうか。
まあ、学術的根拠はないけれど。
報道機関は虚偽を伝えないかもしれないが、往々にして重要な事実を伝えないし、自分達が主張したい結論に誘導しがちである。僕はニュースをみるとき多くを記憶しつつ、事実を繋ぎ合せて一つの推測を構成する手法をとる。それがニュースを斜め読みするという行為なのだ。
需要もない上に生産性のかけらもないが、少なくとも金はかからない。
推測が事実でないとしても一つの推論を構築という行為は、小説で世界設定を考える糧になる。
皆様がどのようにニュースを斜め読みしているのかは分からないが、普段やらない方はコストがゼロなので、空いた時間にでもやってみては如何だろうか。
住民投票結果の総括。
住民投票結果をみると北アイルランドはEU残留が多数派でした。
しかしよくみてみると極端な傾向があることが分かります。
大雑把にいえば、沿岸部は離脱派、内陸部は残留派。
北アイルランドはスコットランドと同様に「EU残留」志向が強かったと、一括りで総括されがちですが、その実は違うように僕は思います。
スコットランドはどの地域も程度の差はあれ残留派が多数派であるのに対し、北アイルランドは地域による意見の二分がはっきりと見て取れるからです。
これがなにを意味するかは地域情勢を詳しく調べないと分かりませんが、北アイルランドはスコットランドと同じ意見だと思い込むのは、些か危険ではないかと僕は考えますね。




