ローカル麺の紹介 ~君は、麦切りという食べ物を知っているか?~
特にターゲットにする読者層を決めず徒然なるがままに筆を走らせる、このエッセイ。
今回の御題は「ローカル麺」である。
僕は食通のような舌を持たないが、それでもたまにはグルメぶってみたくなるのは人の性なのだろう。
だから、あえて言おう。
「君は、麦切りという食べ物を知っているか?」と。
日本にはその地方に根付いた独自の麺文化が存在し、今回ご紹介する「麦切り」もその一つである。
決してメジャーな存在ではないが、知っていれば料理漫画やグルメ小説の小ネタや切り札になったりする、と思う。まあ、僕はグルメ・ネタを書かないため実際に効果的かは知らないが、アクセントくらいにはなるだろう。
東北においてメジャーな麺文化と言えば、秋田の「稲庭うどん」「横手焼きそば」岩手の「わんこそば」が有名だと思うのだが、「麦切り」は山形県の日本海側だけで食されることもあり、決してメジャーな存在とはいえない。
麦切りを一言で紹介するなら、「うどん」と「素麺」の中間に位置すると個人的には思う。この特色をより細かく説明するとしたら、うどんのような白さがあるがぬめりはなく、蕎麦のような――十割蕎麦や田舎蕎麦は特にそうだが――くさみもなく、素麺のような喉越しの良さを持ちながらも素麺より太いため食べごたえがある。
その最大の魅力は、やはり喉越しの良さに尽きると言ってよいだろう。
喉越しの良さを最大限に引き出すため、麦切りはざる蕎麦のように麺を汁につけて食する。夏には最高の食品なのだが、それ故に冬に食するには適していないのも事実。ざる蕎麦と同じように食す方法は、実にシンプルであり、麺そのもので勝負する潔さがある。極限まで無駄を切り落とした日本刀のような趣があるともいえるが、それは流石に褒めすぎか。
いずれにしても局地戦闘機や特殊車両のような一点突破的な特色は、特化したが故に変化に乏しい面はあるのだが、この辺は好みの問題だろう。
ちなみに麦切りは小麦に塩水を捏ねて細く切ったものであるため、冷麦と同じではないかと誤解されるかもしれないが、喉越しが余りに違う点からも両者はまったく異なる存在であると言える。
これ以上詳しく知りたい方は、一度食することで両者を比べることをお勧めする。
麦切りは山形県の日本海側に位置する庄内地方でのみ食されるため、食通や料理研究家のような方でない限り、それだけのために庄内地方に旅行するのはコスト的に問題がある。
まあ、GWやお盆の時期に青森や北海道へ移動する途中に、昼食をとりに立ち寄るには丁度よいのではないだろうか。最近はインターネットの普及に伴い、麦切りも購入可能だったりするので、自宅で食するのもありだろう。
一度食せば、その魅力に取りつかれること間違いなしである。
いまなら特典として「君は、麦切りという食べ物を知っているか?」と、食通ぶった発言をすることができるが、如何だろうか。




