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小説の書き方(3) ~感想は、あくまで一つの見方に過ぎない~

 特にターゲットにする読者層を決めず徒然なるがままに筆を走らせる、このエッセイ。

 今回の御題は、再び「感想」である。

 前回は感想を書く側の話だったが、今回は感想を貰う側の話。


 僕の嫁さんはかなり「なろう」作品を読んでいる。その嫁さんからよく愚痴られるのが「作者の方々は感想やアドバイスに惑わされすぎ」という点である。

 妙な話だが感想やアドバイスを無視しろという意味ではない。

 感想を重く受け止めすぎて大幅改稿したり、物語の展開を変更したり、文章の特徴を変化させすぎたため作品が本来持つ良さが消えてしまう例が間々ある現状を憂いているのだ。


 僕もそれなりに「なろう」作品を読んできたが、矛盾点や説明不足による閑話や補足回の挿入したり、あるいは作風が急に変化する作品を何度も見てきた。僕自身、頂いた感想に納得してある作品で二度の大幅改稿と第零話として6万文字ほど挿入した経験がある。

 大幅な改稿をしたくなる作者の気持ちを分かるつもりだ。

 他の方の作品に書かれた感想を拝見していると、中には自分好みの展開や文章に絶対的価値観を置いた上で指摘される方は確かにおられる。

 いや、それは言い過ぎか。

 誤字脱字や言い回しが不自然な部分は修正した方がすっきりするのでその点について異論はないが、指摘を元に過度な手入れをするのは少し考えた方が良いと思う。


 誤解を恐れず発言するが、読者は決して編集者でない。


 感想はあくまで一つの見方に過ぎないのだ。

 感想を無視しろというのではなく一つ見解として冷静に受け止めた上で、内容について熟慮した方が良いと思う。熟慮した上での対応なのかもしれないが作風ががらっと変わりすぎるのは、作品の持つ長所を損ねている可能性がある。

 長所を伸ばすか短所を直すかは人が成長していく上で永遠のテーマであり、同じことは小説にも言えると、僕は思う。



 有名な話だが、ボクシングにおいて6階級制覇のチャンピオン「マニー・パッキャオ」氏がまだ無名だった頃、某プロモーターが「癖の強いボクシングスタイルを修正する気がないか?」と尋ねたそうだ。

 パッキャオ氏の左ストレートはフライ級――108~112ポンド、およそ48.9~50.8kgの範囲――としては桁違いの破壊力だった。しかもサウスポーであるため打ち出しのタイミング極めて分かりにくい。

 TVで観戦していても、あれは避けられないと思う。

 そのパンチ力は無名時代から魅力的だったが、かなりバランスの悪いボクサーでもあった。

 某プロモーターはその点を憂いていたのだ。

 暗に「修正するなら僕と契約しよう」と言っているのだが、彼は自分のスタイルを貫くため申し出を断ったそうだ。ちなみに、この某プロモーターは何人もの人物を世界チャンピオンにしている人物であり、彼の申し出はつまり「俺と共に世界を目指そう」ということも意味する。

 無名のボクサーに夢のような話だったことだろう。

 後になってみれば6階級制覇まで成し遂げたパッキャオ氏の考えが正しく、某プロモーターの考えは間違いとは言えないが正しくはなかったことが証明されている。

 

 似たような例が他にもあるようで、先日、大相撲中継を観ていたら元「普天王」現在は年寄稲川氏が同じようなことを語っていた。彼の話しでは現役時代に癖を修正するのに努力を傾けたが、今にしてみれば長所を伸ばす方に努力を傾けるべきだった、と。

 

 長所を伸ばすか短所を直すかは一概に言えない問題なのだ。



 改稿や再構成についても、適当な時期があると思う。

 プログラミングされる方なら分かると思うが、頻繁に仕様変更されたプログラムはどこか歪だ。そもそも仕様を検討した段階で修正箇所を導き出せればいいのだが、それでも問題点は発生してしまう。

 ではどうするかだが、バージョンアップすればいい。

 小説ならば完結後に修正や改稿をしたほうがいいと僕は思うのだ。第一章完結の形でも良い。完結しているから骨組みがしっかりしているので修正による抜本的変化発生しにくいだろう。或いは次回作以降に反映させるのもいい。

 いずれにしても、連載中の作品をあまり弄繰り回すのは適当でないケースが間々ある。


 うんちくが多い作品や会話中心になるように意図して作品を構成しているのに、「そんなものは必要がない」「描写を多くしろ」など書くのは些か的外れだと僕個人は思う。作品の持ち味や特徴を否定することは意味がないし返って害になる。

 まあ、気になった点を指摘するのも感想なのでそれ自体を悪いとは言わないが、作者の方々は余り深刻に受け止めてほしくないのだ。

 感想は、あくまで一つの見方に過ぎない。

 他の方の意見を貴重な真摯に受け止めつつも、自分が書きたい内容を思うがままに書いた方が持ち味を失わない方が、結果として作品の方向性がブレないように僕は感じる。

 


 繰り返しになるが、感想はあくまで一つの見方に過ぎない。

 その点を踏まえた上で受け止めて頂けると書く側も正直助かる。


 御参考になれば幸いです。

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