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短編置き場

推定年齢80代の渡り姫

作者: 高倉 碧依

目が覚めたら見知らぬ場所でした――


ボーッとしたまま辺りを見回すと、樹々の間から太陽の光が射し込む、童話の世界のように綺麗な森に寝ていた。

どこからか“チチッ”っと、鳥の鳴き声が聞こえてくるのを聞きながら、取りあえず立ち上がろうとすると、自分の身体がやけに重いことにビックリする。膝に手をつきながら「よいしょ」と立ち上がり、改めて周りを見渡す。

近くに泉があるのが見えたので、取りあえず行ってみようと歩き出すと、またまたなんだか体が重い。

そして少ししか歩いてないのに息切れしてくると、いくらなんでもおかしいなと思い始めてきた。

なんとかたどり着いた泉は見たことがないほど綺麗な場所だった。

うちの学校のプール程の大きさだろうか、透き通った水の表面に太陽の光が反射してキラキラ輝いている様は、幻想的で…見とれてしまうほどだった。


しばらく見とれた後、ゆっくりと泉に近づき、水に触れようと泉を覗き込んだとき…私はこれは夢だと思った。

なぜなら泉に映った私は…シワとシミのあるおばあちゃんになっていたからだ。


「なんじゃこりゃ~~~~!!!」


響き渡るその声も心なしか低く、どこかくぐもって聞こえた…


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


一通り泉の周りを歩き回り、信じられないほど疲れたので、泉のほとりで休憩をしながら考えた。

さっき目が覚めるまで、私は日本の女子高生だったはずだ。今着ているのも毎日着ている制服だし、最後の記憶は部活帰りに古本屋に寄ったことだけだ。


それがどうしてこんなことに…


これは夢だ、夢だ、夢なんだと言いきかせ、自分の頬をつねったりしてみたけど痛いだけで目が覚めない。

その際に触れた頬の手触りと、頬に触れた手を見て泣きたくなってくる。

シワシワの手と…スカートから出てるシワシワの足…、髪を触ればパサパサとしていて、ためしに一本抜いたら真っ白かった。

ただただ泉の表面を見つめながら夢から覚めることを待っていたけど、一向にその気配がない。

どんどん不安になってくる気持ちをごまかすために、昔から好きだった歌を歌った。聞こえる声に違和感を感じるけど、無視してできるだけ大きな声で歌う。


早く、早く目が覚めて…!


そんな時、頭上から真っ白い猫が降ってきた。

伸ばした私の足の上に着地した猫は、真っ青な瞳を私に向けて、首を傾げている


ヤバイ!なにこの子、可愛い~!


全体的に毛がモコモコしていて、普通の猫より太い足。猫というより柄の入っていないホワイトタイガーの子どもといったほうが近いかもしれない。


「君どうしたの?今空から降ってきたよね?」


抱き上げようと手を伸ばすと、それより先に猫が宙に浮いた。

驚いて手を引っ込めてよく見ると、猫の背中に小さな翼がついていてパタパタと動いている。そんな小鳥の翼サイズでどうしてこの体を浮かせるの?!っていうか…


「猫が浮いてる?!」


驚いて目を見開く私へ、変わらず首を傾げたまま猫が口を開いた。


『娘、ネコとはワシのことか?』

「しゃ、しゃべった?!」

『そりゃあ話すだろう、ワシは聖獣なんじゃから』

「何その当然だろ?みたいな感じ?!」

『何をそんなに驚いている?それより娘、そなたなぜ見た目を偽っておるのだ?』

「…もう…無理…」

『おい?!』


目が覚めてから訳が分からないことばかり。

綺麗だけど見たことない場所、そんな場所に制服だけ着て寝てた自分。

可愛い猫を見つけたと思ったら、何でか飛べるし話せるし。

何より一番ショックで訳が分からないのは、一気に70歳近く年を取ってしまった自分。


もうヤダ…、助けてお母さん…


薄れていく意識の中、今度目が覚めたら自分の部屋の自分のベットの中であることを願った。


『娘~?!大丈夫か?!ワシがいけないのか?!娘~~~?!』


…聞こえないっ!私には聞こえないっ!いいから静かにブラックアウトさせてよ~っ!





目が覚めた私が自分の部屋にいたかは…ご想像にお任せします…ううっ。

読んでいただきありがとうございます。

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