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新たな再会

『私がもし、またこの世界に生を受けるのであれば、あなたと何度でも出会えることを、願います』


 一人の女性が、大きな桜の木の下で、向かい合った男性に右手を差し出して思いを告げる。


『自分も、この世界に生を受ける限り、あなたとめぐり会える事を、切に願おう』


 そして男性もまた、その女性に対して思いを告げ、抱きしめる。


 二人は『千年桜』の木の下で、寄り添いながら幸せな表情で、眠りについた。



「――ハッ、・・・・・・夢、か?」

 俺の名前は紅葉こうよう桜乃咲高校さくらのさきこうこうに通う、高校一年生だ。

 今日は高校生活が始まる、始業式の日。

 朝から、よくわからない夢を見てしまったが、悪い夢ではないと思うので、寝覚めは悪くなかった。

「よし、学校へ行くか!」

 気合いを入れなおして支度を済ませて、学校へと向かった。


「『何度でも出会えることを――』・・・・・・か」

 俺は、何気なく、夢の中に登場した人物が言っていた言葉を、つぶやいた。

 不意に、背中から女性の声が聞こえてきた。

「あの、この桜の木の伝説を、ご存知ですか?」

 振り返るとそこにいた女性に、俺は心を奪われてしまう。

「――あ、いや・・・・・・ごめん」

 彼女のあまりの美しさと、夢で見た女性に似ていることから動揺して、適当に答えてしまう。

「そうですか――実はこの桜の木には何千年もの昔、本来ならば結ばれるはずの無い二人が出会い、苦難の末に結ばれた伝説が残っているの」

 話し始めた彼女は、桜の木に手を差し出して、そこにいる誰かに語りかけるようにはなし、その横顔は魅力的で、美しく清楚なイメージを与えてくれる。

 話し終えて彼女は振り返り、微笑みを見せて問いかける。

「――あなたは、信じますか?」

 問いかけと同時に、彼女は右手を差し出してきた。

 その姿が夢の彼女と重なり、一瞬戸惑ってしまうが、気を取り直して答える。

「俺は・・・・・・信じる」

 俺の言葉に満足したのか、満面の笑顔を見せて「ありがとう」と、一言添える。

「私の名前は、桜音おうね、この木と同じ、桜に音と書いて桜音よ」

 彼女は、自分の胸に手を当てて自分の名前を伝えた、その後「あなたは?」と、手を差し出して聞いてくる。

「俺の名前は、紅葉こうよう、漢字でもみじと書いて紅葉だ」

 互いの目線が互いの瞳を見つめ、そのひと時が長い時間を移動したような感覚にとらわれる。

「私たちの出会いは、偶然ではないかもしれませんね。 これからも宜しくお願いします」

 彼女はそう言って、お辞儀をした。

「こちらこそよろしくお願いします」

 俺もお辞儀を返し、お互いが顔を上げて微笑みあった。


「よければ、一緒に登校しないか?」

「えぇ、よろこんで」

 こうして、『新たな再会』を経て俺たちの物語はスタートし始める。


「おっはよー紅葉♪ お? お前、女連れかよ!?」

 この挙動と言動が激しい男性は、小学校時代からの親友の椿つばきである。

「あぁ、さっきそこで知り合った桜音さんです」

「初めまして、紅葉さんに紹介していただきました桜音です。 以後お見知りおきを」

 彼女は椿に向かって深々とお辞儀をし、起き上がってすぐに微笑みをみせる。

「あ、いや、こちらこそ初めまして、紅葉の親友の椿です、よろしくッス」

 丁寧な彼女の挨拶と、その魅力的な微笑みに心を乱されてしまい、緊張した状態で挨拶を返している。

 椿は目線を泳がせて、俺に近寄って耳打ちで「お前、この人、何者だよ? 先輩じゃねーのか?」と問いかける。

「そういえば、学年を聞いてなかったな・・・・・・」

 ついついそのまま口に出してしまい、それが聞こえた桜音は答えた。

「私は、この高校に今日から通うことになった一年生ですよ」

「「ええぇぇぇえ」」

 大人びた彼女の笑顔やしぐさから、先輩だと思っていた俺たちは、同時に驚いた。

「あら? そんなに驚くこと? まぁ、確かに15歳には見えないと、よく言われますけどね」

 先ほどまでのかしこまった喋り方やしぐさと違い、とても可愛らしい砕けた喋り方に、親近感がうまれた。

「その喋り方のほうが、年相応に思えるな」

 お世辞とは言えないその言葉に、彼女は「ふふふ」と笑って流してくれた。

「お二人も、今年から高校生なの?」

 俺の一言を真に受けてか、喋り方が砕けたようにやわらかくなり、それもまた魅力を感じてしまう。

「あぁ、俺たちも今日からここに通うから、これから同級生だな」

「そうだな、いきなりこんな美女とお近づきになれるなんて、幸先いいよな」

 椿は興奮を抑えきれずに、肩を俺にぶつけて喜びを表現した。

「みんな、一緒のクラスになれるといいね」

 言い終えて、最強の微笑みを見せた桜音に、またしても心を奪われてしまう。

「とりあえず、クラス割を見にいくか」

 そういって、三人はクラス割を確認するために、教室へと向かった。

 奇跡的に、全員が同じクラスになることができ、お互いに見合って笑顔で喜びを表した。


 『1-2』――そこが俺たちの、最初の1年間が始まる教室である。


 彼女との出会いが運命だと思う日がいつか来ると、そう信じながらこの喜びを胸に、今、高校生活がスタートした。

一話と二話の違和感に、気付いた方が、たくさん居る事を願います。

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