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七夕パーティー(1)

「なぁ、紅葉こうよう・・・・・・本当にここなのか?」

「あぁ」

 今日は7月10日・日曜日、待ちに待った『七夕パーティー』の日である。

 俺たちは待ち合わせをしてみんなで春乃咲はるのさき家の前にやってきた。

 やはり全員がこの大きな屋敷の存在を知らない様子で、最初に椿つばきが俺に問いかけた。

「すっごい豪邸じゃない!」

「そうだな」

 どうやら櫛乃くしのも初めて来たらしい。

「この町にこんな大きなお屋敷があったんですね」

「だな」

 割となんでも知っている樫雄かしおもまた、知らなかったらしい。

「お前、逆玉の輿ってやつか?」

 椿はニヤケ顔で俺に問いかける。

「ばか、別にそんなの関係ないだろ!」

 ある意味、考えたことが無いわけではないので図星を突かれたみたいに俺は動揺して口悪く怒鳴って顔を背けた。

「まぁ、いいじゃねーか」

 俺の肩に手を置いて椿は笑いながら言った。

「――はぁ~・・・・・・」

 椿に向き直り、その悪意の無い笑顔に文句を言う気も失せてしまった。

「それじゃあ、行くわね」

 ピンポーン♪

 気を取り直してチャイムを押したのは櫛乃であった。

『はい、どちらさまでしょうか?』

 前と同じように60歳くらいの男性の声が聞こえた。

「私は桜音おうねさんの同級生の、喜多村きたむら 櫛乃くしのと申します。 今日はお招きいただき、ありがとうございます」

 彼女は全く緊張した様子もなく、すらすらと名乗った。

『かしこまりました、少々お待ちください』

 男性は、全てを理解したように返事をした。

「よくあんなにスムーズに喋れるな」

「普通でしょ?」

 俺がはじめて来た時を思い出して、改めて櫛乃のすごさを口にすると、彼女は当たり前だと言わんばかりの表情で言った。

「お前、もしかしてはじめて来た時、まともに喋れなかったのか?」

 何かに気付いたように椿が問いかける。

「・・・・・・まぁ、な」

 俺は少し間を置いて小声で答えた。

「なんかそれ見てみたかったな、くくくっ」

 椿が笑いをこらえながら口に手を当てて言った。

「そうね、めっちゃおもしろそうよね、ふふっふははっ」

 さらに櫛乃も同じように口に手を当てながら言う。

「紅葉君はいつもテンパっているときが一番おもしろいですからね」

 続くように樫雄は笑顔で言い放った。

「・・・・・・う、うるせーな」

 またしても恥ずかしさと動揺により、目線を泳がせてから顔を背けた。

「あははっ、こいつ照れてるよ」

「くくくっ、まぢおもしれー」

 椿と櫛乃はおなかを抱えて笑い、俺はむかついて怒ろうとしたが――

「まぁまぁ、その辺にしてあげましょうよ」

 先に樫雄が仲裁に入ったので、出遅れてしまった。

 不意に門が開いたのが見えたので俺はそれを伝える。

「――あ、杵月きねづきさんが迎えに来てくれたようだぞ」

 そして、逃げるようにそちらへ近寄った。

「逃げたな」

「逃げたわね」

 椿と櫛乃が勝ち誇った顔でつぶやく。

「はははっ・・・・・・」

 二人のそんな表情をみて、苦笑いをする樫雄。

「お待たせいたしました――それではこちらへ」

 60歳くらいの男性は、やはり杵月さんであった。

 彼はお辞儀をして屋敷の方に腕を伸ばして俺たちを誘導してくれる。

「広いお庭ですね」

 屋敷に向かって移動してる途中に通っているお庭を見回して櫛乃は杵月さんに問いかけた。

「えぇ、こちらの正面にある庭園は約3000坪の広さがあります」

 それに対して杵月さんが答える。

「すごいですね、予想以上です」

 大きさの単位がよくわからない俺と椿は特に驚かなかったが、天才の樫雄はすぐに解った様子で驚きを言葉にした。

「さすがだわ・・・・・・」

 たぶん、櫛乃も馬鹿の部類なのでよく解っていないと思うが驚きの表情でつぶやいた。

「えっと、杵月さんは春乃咲家の執事になるんですか?」

 樫雄は確認するように問いかける。

「はい、私は幼少の頃お世話になった賢吾けんご様にお使えさせていただいております」

 それに答える杵月さんの瞳には輝きが見え、表情は良き過去を思い出しているような優しい微笑みになっていた。

「へぇ~」

 そんな他愛も無い話をしながら歩いていき、屋敷の前に到着し扉を開けた杵月さんが「どうぞ」と、招き入れる。

「すっげー」

「こんなお屋敷、初めて見たわ」

 屋敷に入ってすぐに椿と櫛乃は周りを見渡して感嘆の声をあげた。

「・・・・・・」

 二人の驚きの顔を見ていた俺は面白いものを見るかのような表情になってしまった。

「なにニヤケてるの?」

 それに気付いた櫛乃が嫌そうな顔をして問いかける。

「――いや、なんでもない」

 俺は気を引き締めて緩んだ顔を整え、気にするなと答えた。

 そして、以前入った食堂とは真逆の部屋のドアがガチャッと開いて一人の女性が現れる。

「いらっしゃいませ、みなさん」

 その女性は桜音の母である、春乃咲 木葉このはであった。

「今日はお招きいただきありがとうございます」

 すかさず挨拶をしてお辞儀をするのは櫛乃である。

「いえいえ、今日は楽しんでくださいね」

 それに対して彼女の母もお辞儀を返して言った。

「紅葉さん、良ければ賢吾さんにも顔を見せてあげてくださいね」

「は、はい、後ほど」

 彼女の母が俺に近寄って手をとりお願いを口にしたので、ぎこちない喋り方で返事をする。

「それでは――失礼いたします」

 少し下がった後に、お辞儀をしながら言い、元居た部屋へと戻っていった。

 彼女の母が部屋に戻ったのを確認してから櫛乃が問いかける。

「桜音ちゃんのお姉さん?」

「いえ、あのお方は桜音様のお母様になります」

 その問いに答えたのは杵月さんだった。

「「えええええ!?」」

 同時に驚きの声を上げたのは、椿と櫛乃と樫雄である。

「驚きすぎじゃないか?」

 俺はツッコむように言うが、実際のところ彼女の母が笑顔の時はかなり若く見えるので当然の驚きといえば当然である。

「いやいや、若すぎじゃないか?」

「まぁ、確かに俺たちの母親に比べればな・・・・・・」

 椿の問いかけに、正確な例を並べて答えてあげた。

 俺たちがそんな会話をしていると、階段の上の方から足音が聞こえてきた。

「みなさんお待たせしました」



 待ちに待った『七夕パーティー』

 この日に起こるのはどんなことなのかだろうか。

 そして、桜音の考えている事は一体・・・・・・。

正直、そろそろサブタイトルが限界なので、続き書きで行きます。

よく見直してないのでもしかしたら、修正するかもしれません。

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