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重なる想い

「んで、この店で買うのか?」

 椿つばき櫛乃くしのは、この町にある一番大きな店の半分を敷地を占めるホームセンターにやってきた。

 このお店はそれなりに大きく天井が高い、建物の中にいくつものテナントとお店を経営する会社の『食品』『衣料品』『ホームセンター』で構成されていて、テナントの中にはゲームセンターもあるため、学校の仲間と時々遊びに来たりもしている。

「そうよ、なんでもそろうのがホームセンターのいいところなのよ」

「ってか、俺たちの町に大きな店って言ったらここしかないしな」

「まぁそうだけどね」

 二人はお店に入り、店内を通路に沿って物色しながら目的の『七夕』コーナーに到着する。

「このセットのやつでいいのかな?」

「ん? せっかくなんだし高くてもこっちのバラバラの方がいいんじゃないか?」

 色々と入ったセット品とそれぞれがバラバラに売られてるものがあり、バラ売りの方が高いものの好きなものを好きなだけそろえられると、椿を提案した。

「そうかもしれないわね」

 セットの商品と手に取っていた櫛乃はそれを戻しながら椿に賛成した。

「どれくらいの竹を用意するって言ってた?」

「確か全長5mはあるらしいわ」

 椿の問いかけに思い出すように目線を斜め上に向けてから答える。

「でけーな・・・・・・」

「確かに・・・・・・」

 大体の高さに視線を向けた二人は、その大きさに言葉を漏らした。

「なら、短冊はいっぱい用意してたくさん書けばいいんだな」

「まぁ、数撃てばあたるかも知れないしね」

 気を取り直した二人はポジティブな思考に行き着き、再び商品選びを始める。


「なんか、いい感じじゃないか?」

 そんな二人を物陰に隠れながら見ていた俺は、二人が仲良く買い物しているのを見て笑顔になる。

「そうですね、かなり仲良く買い物してますね」

 俺の問いかけに答えた樫雄かしおは微笑み返してくれる。

「予想通りね」

 そして一番満足そうな笑みを見せたのが、作戦の立案者である桜音おうねであった。

「今回は桜音おうねの勝ちだな」

「そうですね」

「ふふふ」

 桜音の考えでは、みんなで居るときに素直になれずにお互いに反発してしまうそうで、本当は仲がいいのだと思っていたらしい。

 確かに、今の二人を見ていると普通に仲良くデートしている風にしか見えないので、それは正しいのかもしれないと俺たちも思ってしまう。

「あ、移動しましたよ」


 しばらく物色して商品を選んだ椿と櫛乃はレジへと移動を開始した。

 買い物を済ませた椿が、先ほどから気になっていたモノを指差して櫛乃に問いかけた。

「さっきから気になってたんだけど、これって自由に書いていいのかな?」

「ん? あー、たぶんそうだと思うわ」

 椿と櫛乃の目線の先には大きな竹と、その横に机と椅子が用意してあり短冊とサインペンが用意してあった。

 このお店では短冊に自由に願い事を書いて、あとで店員が竹につるしてくれるというイベント行っている。

「じゃあ、ついでに書いていくか」

「え?」

 椿の提案に櫛乃は驚きをあらわにして振り向いた。

「願い事ってのは自分の力で手に入れるため誓いだから・・・・・・」

「・・・・・・」

 振り向いた先の椿の表情はどこか大人びて憂いを秘めている。

 さらに何かを含んだ物言いをした彼に、ついつい瞳を奪われ、頬が紅潮してしまう。

「あれ? なに変な顔してんだ?」

 不意に櫛乃の異変に気がついた椿はいつものひょうきんな顔に戻っていつものように馬鹿にした。

 その言葉にハッと気を取り戻し「うっさいバーカ」と、顔を背けた。

「なっ・・・・・・」

 櫛乃の反応に訳が分からず眉をひそめて不思議そうな表情をした。

 顔を背けた櫛乃は気付かれないように深呼吸をして向き直り――

「まぁいいわ、とりあえず一枚だけ書きましょう」

 と、笑顔で伝える。

 今度は彼女の魅力に取り込まれた椿が「あ、あぁ」と、返事をする。

 とりあえず、二人は願い事を短冊に書き、机の上においてある箱に入れた。

「なんて書いたんだ?」

 少し頬を赤く染めた椿が視線を泳がせながら問いかける。

「はぁ? 教えるわけないじゃん!」

 その問いかけに櫛乃も頬を赤くし、照れ隠しをするように怒鳴った。

「くっ・・・・・・」

 あまりの迫力に上体を退けて唸ってしまう。

「じゃあ、あんたはなんて書いたのよ」

 一旦気を取り直した櫛乃は、頬の紅潮を隠すように顔を背けて問い返す。

「俺だってお前なんかに教えたくねーよ」

「「フン」」

 椿も照れ隠しのよう怒鳴りながら答えて、いつものように同時に顔を背けた。

 二人は互いに背を向けたまま心の中で想いを言語化する。

(だって私の願いは・・・・・・)

(俺の願いは・・・・・・)


((好きな人の前で素直になれますように――))


(――だもの)

(――だからな)



 桜音の作戦は大きな変化を生み、二人の心は次第に強く魅かれあっていく。

 お互いの素直な気持ちがいずれは伝えられるようにと、短冊に願いを込めてその場を後にした。

少しだけ表現の方法を変えてみました。

まだまだ駆け出しなのでいろいろ調整していきます。

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