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桜音の作戦

「よっ、お、おまたせ」

 椿つばきはどことなくぎこちない挨拶をして待ち合わせ場所に登場した。

「フン、あんたの事なんて待ってないわよ」

 一回だけ目線を向け、すぐに顔を背けて文句を言うのは、櫛乃くしのであった。

「コノー・・・・・・」

「・・・・・・」

 待ち合わせ場所に二人しか居ないため、その場に長い沈黙が訪れる。

 どうしてこんなことになっているかと言うと――


「ねぇ紅葉こうよう! 明日のお休みに『七夕パーティー』の買出しに行きませんか?」

 桜音おうねは笑顔で俺に言う。

「あぁ、いいぜ」

 俺はすぐに答えた。

 それを確認して一度うなずいてから、俺の側に居た二人を見てから提案する。

「それでは、みんなで行こうと思っているので椿さんと樫雄かしおさんもいかがですか?」

「おぅおぅいくいく~」

 桜音の提案に楽しそうに乗ったのは椿である。

「分かりました、お付き合いさせていただきます」

 さらに隣に居た樫雄も賛成する。

 二人が返事をしたことを確認した桜音は、次に待ち合わせ場所と時間を伝える。

「それでは、明日の朝10時に駅前でお待ちしております」

「ああ」

「りょーかい」

「分かりました」

 三人がそれぞれの言葉で返事を行い、全員での買出しが決まった。


 ――そして今に至る。

「他のやつらおせーな」

 不意に沈黙に耐えられなくなった椿がつぶやくように言った。

「そうね、時間は過ぎてるのにおかしいわね」

 それが聞こえた櫛乃は自分の思っていた疑問を口にする。

「ちょっと電話してみるか」

『おかけになった番号は電源が切れているか圏――プツン』

「つながらない・・・・・・」

 椿が誰かに電話をかけたが、つながらないためちょっと落ち込んでいる。

 不意に櫛乃の携帯電話が『ピロリロリーン♪』と、着信音を鳴らした。

「あっ、メールだわ」

 彼女はそれに気付き、すぐに確認すると――

『ごめんなさい、今日は急用が入ってしまったので行けそうにありません、本当にごめんなさい――桜音おうね

 桜音から謝罪のメールが届いていた。

「・・・・・・えええええ!!」

 徐々に驚きの表情に変わり、唐突に悲鳴を上げた。

 その声に隣に居た椿はびっくりして、少しの間を置いて問いかける。

「――どうしたんだ?」

「桜音は急用で来れないって・・・・・・」

 椿の問いかけに振り返る事無く櫛乃は答える。

 さらに今度は椿の携帯電話が『ピピロリロリーン♪』と着信音を鳴らす。

「あっ俺もメールだ」

 椿は棒読みで言い、メールを確認する。

『わりぃ、急用で行けなくなった、買い物は任せる――紅葉こうよう

 驚く暇もなくもう一通が『ピピロリロリーン♪』と着信する。

『ごめんなさい、僕と樺音さんは急用で行けなくなりました――樫雄かしお

 ほぼ同時に届いた断りのメールに驚く事も無く、ただ呆然としてしまい。

「あ、アリエナイ・・・・・・」

 と、小声でつぶやいた。

「そっちにも連絡あったの?」

 やっと落ちついた櫛乃は椿の様子に気がつき、確認するように問いかける。

「あぁ、全員急用で来れないって、買い物は任せるって・・・・・・」

「えええええ!!」

 椿は簡潔に述べると、落ち着いていたはずの櫛乃はまたも驚き戸惑う。

 しばらくの間、二人は呆然としてしまい、一旦気を取り直してから考えをまとめる。

「仕方ないな、じゃあちゃっちゃと買い物済ませるか」

「仕方ないわね・・・・・・」

 椿の提案に無理に納得して二人で買い物をすることを決意する。

「ところで、今日は何を買いに来たんだ?」

 そして次に椿が買出しの目的について問いかける。

「はぁ~・・・・・・『七夕パーティー』のために短冊と飾りを買うって言ってたでしょ~が」

 呆れるようにため息をついた櫛乃は、さげすむような目を向けながら説明する。

「あーそうだったな」

「マッタク、脳みそもサル以下なのね」

 椿の適当な相槌にイラついた櫛乃は顔を背けて罵倒した。

「なんだとコラー」

「うっさいバーカ!」

 いつもどおりの受け答えをして――

「「フン」」

 と、同時に顔を背ける。


「あいつら、二人きりでも仲良く出来ないのか?」

 その様子を物陰から見ているのは、先ほど断りのメールを入れた俺たちだった。

「まぁ、お互い照れ屋さん同士なので難しいと思いますね」

 俺の問いかけに答える樫雄。

「ふふふ、仲よさそうに見えますけどね」

 またしてもずれた事を言うのが桜音である。

「さすが桜音だな、あれが仲良く見えるなんてある意味すごいな」

「ふふ、ありがとうございます」

 どうしてか分からないけど俺の軽い皮肉をほめ言葉として受け入れられてしまった。

「――まぁ、いいか」

「こちらのお二人も仲良しさんなので妬けてきますね」

 そのやり取りを見ていた樫雄は笑顔で大胆なことを言うので――

「心配するな、あいつらがひと段落したらお前の番だからな」

 と、ニヤケた顔で樫雄に伝える。

「ええ!?」

 俺の言葉に驚きを表しその場で固まってしまったので、さらに付け加えるように言う。

「まぁ、すでに意中の人が居るのはなんとなく分かっているからな」

「・・・・・・」

 知ったような口を聞く俺に、図星の樫雄は黙り込んで顔を伏せた。

「ふふふ、なんだかとても楽しいですわね」

 そのやり取りを見ていた桜音は、全てを含めて楽しいと笑顔で言った。

「あっ、二人とも行っちゃいますよ!?」

 不意に移動を開始した椿と櫛乃に気付いた樫雄が、二人を指差して俺たちに伝える。



『七夕パーティー』まで一週間前の休日に買出しを提案した桜音。

 しかし、その買出しに椿と櫛乃以外は現れずに二人だけで買出しをすることになる。

 これも桜音の考えた作戦であり、紅葉たちは隠れて様子を伺うことになった。

ふ~、がんばった!

これから先も毎日は難しいと思いますが、がんばります。

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