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曖昧な夢

 早送りのように二人の人生を観ることになった俺は、気が付くと千年桜の傍に立っていた。

「――な、なにが起きたんだ?」

 現状が分からずに、辺りを見回して疑問を口にする。

 不意に、不思議な――聞き覚えのある声が頭の中に響いた。

『新たな再会に祝福します。 忘れないで――我々が共にあることを』

 その声に何かを思い出し、振り返って千年桜を見る。

 一瞬――見覚えのある二人が千年桜と重なるように見えた気がする。

 不意に、俺が観た彼のことを思い出しその二人に語りかける。

「俺も、彼のように彼女を、守り続けてみせる!!」

 千年桜の二人に向かい、力強く声を張り上げて宣言する。

 対して、再び頭の中に声が語りかけてくる。

『その強き想いが、永遠である事を願っています』

 言い切ると、桜が強く発光して目がくらんでしまい俺は目を閉じた――。


 再び目を開くと、そこは時乃軌神社ときのきじんじゃ拝殿はいでんの前であった。

 俺は何が起きたのか分からず、まるで夢を見ていたように記憶が曖昧になってしまう。

 思い出したかのように、隣の桜音おうねを見ると、同じように呆然と立ち尽くしている。

 彼女の目には、うっすらと涙が浮かびあがっていた。

「――桜音?」

 俺の声に、我に返った彼女は、こちらに顔を向けて涙を流した。

「よかった・・・・・・紅葉――」

 涙を流し安堵した彼女は、俺の名前を呼んで強く抱きついてくる。

 それに対して、俺も――

「――ああ、本当によかった」

 と、喜びを言葉にして涙を流して、抱きしめ返す。


 二人の祈りが重なりあうことで、知るはずのない『過去の再会』を観ることとなった。

 その再会の中で唯一の悲劇があり、それに対して奇跡が起きた。

 俺たち二人には、曖昧な夢のような記憶が残り、次第にその記憶は薄れていってしまう。


 泣きながら抱きしめあう二人に、不思議そうに声をかけてくる人物が居た。

「お、おい・・・・・・どうしたんだ? いきなり」

 その声に気付いて顔を向けると、そこに居たのは――困った顔をした椿つばきであった。

「二人とも大丈夫?」

 隣には同じく困ったような顔をした、櫛乃くしのがいる。

 俺は自分の目に浮かぶ涙を拭いて、「あ、いや、なんでもない」と、答えた。

 二人に気付いた桜音も涙を拭き、笑顔で「ちょっと夢を見てたみたい」と、答える。

 その答えに、とても不思議そうな椿と櫛乃は「まぁ、いいか」と、追求せずに適当に納得してくれた。

 誰一人その事を聞かずに、気遣ってくれる。

 俺たちも深呼吸をし、気を取り直してお祭りを楽しむことにした。


「んじゃ、お祈りも終わったし、雨御踊あまみおどりの会場へ行こうぜ♪」

 全員が祈りを終えて、椿が言い出し移動を開始する。


 神社内の一角を使って行われる雨御踊りは、聖雨祭せいうさいのメインとも言える行事である。

 中央に大掛かりな焚き火をつくり、その周りを踊りながら回る。

 最後に、溜めておいた梅雨の雨を使って焚き火を消す。

「よっし、俺たちも踊ろうぜ♪」

 椿が先陣を切って踊りの輪の中に入っていく。

「仕方ないわね~」

 嫌々言いながらも、付いていく櫛乃。

「それでは、僕達も行きましょう」

 次いで樫雄かしお樺音かばねを連れて輪に溶け込んだ。

「俺たちも行くか?」

「――紅葉」

 俺が桜音を誘うと、彼女は目を伏せて「あのね」と、話し始める。

「いつか私も、彼女のようにな――」

「俺が必ず助ける!!」

 彼女の言葉をさえぎる様に、俺は声を張って伝える。

 それを聞いた彼女は一瞬だけ驚いたものの、すぐに笑顔になり「ありがとう」と言う。

「じゃあ、みんなと一緒に踊ろう」

「はい♪」

 踊りの輪の中に、ほとんどのクラスメイトがまざりお祭りが終わるまで踊り続けた――。



 この時、この場所で観た『過去の再会』

 その意味がなんであったのか。

 違う道を歩む事になる『新たな再会』には、この先に何が待っているのか――今はまだ知る由も無かった。

ここで聖雨祭編は終了となります。

次回からは新たな展開があるでしょう(たぶん)


そして、いつかやりたい――

椿と櫛乃の物語!

あの二人の今後の展開が楽しみです♪

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