1、コトノハジマリ
この物語はフィクションです。
con-tract 5 果たされない約束の亡者
1、コトノハジマリ
視点去来 1
満開の桜が咲き誇る季節。
空には雲、太陽とが絶妙なバランスで浮び、朗らかな春の陽気が道に満ち充ちて、甘い薄桃色の香りが広がっていた。
ここは、桜並木が並ぶ絶好の花見スポット。
街を一望はできずとも家々を見下ろせる程度の小さな丘の上にある公園の中にそこはあった。視線を遮る高層建築物がない住宅地であるために、世界が広く見渡せるかのような感覚が心を満たし、征服感にも似た爽快感が胸中を洗い流してくれる。
時より撫でるように通りすぎる春風がとても心地よく、歌人でなくても一句詠みたくなるぐらいの、なんとも風情溢れる場所。
……だというのに。
「ぅひょぉおっ! 今月の“だーくねす”も、なかなか際どいねぇっ!!」
一人の男の、一人だけの歓喜の声が煩く響き渡る。
なんとも耳に痛い。目にもイタイ。そんな、なんともダラシナイ男が騒いでいた。
そのいい年こいたオッサンは平日のお昼時、この場所には我々以外誰もいないという状況、この絶好の花見場を貸し切り状態であるのに関わらず、花見で風情を楽しむこともせず、桜の木の下でブルーシートを大きく広げ、月刊の分厚い少年誌で連載している妙にエロいラブコメディにのめり込む様にガン見して鼻息荒げている。
小学生か、おのれは……
この男の格好も格好だ。
寝起きみたいなボサボサ頭に、無精ひげ。よれよれになった浅色のジンベイを恥ずかしげもなく羽織って踵が擦り切れた下駄。これがこの男の365日普段着であるのだから、もう笑うしかない。
このカランコロンする珍妙種をご近所さんは見慣れた光景なので笑っていたが、正直こっちが恥ずかしい。しかも、家からバスで一時間ほどのこの公園までそのままの格好でやってきたのを、皆、信じられるだろうか?
なので、此処までやってくるまでずっと俺は離れて歩いてきた。
そんな薄情に取られそうな行動も、この男がその姿のままコンビニに入っていったところを目撃したことで、それは正解だったと確信している。
「いいなぁ、いいなぁ、こんなハ~レムしってみったっい! クッケッケッケッ!」
……しるか。
俺はすこぶる機嫌が悪いので無視した。なにせ、このなんか変な笑い方する脳内からダメ男と同類と見られ、“組”で毎年おこなう花見の席を取りに行ってこいと、ケツ蹴られるように使いに出されているのだからたまったもんじゃない。
俺は忙しかったんだ。
この間激写しまくった妹の画像フォルダを編集していた最中だったんだぞっ……
だというのに、なんという時間の浪費。なんという屈辱。同じレベルの暇人として、この万年ジンベイ男と共に部屋を放り出されてしまったことを思えばさらに最悪だ。
「おぅい? 聞いてる? ねぇ? 聞いてる?」
俺は不貞寝を決め込む。そう、決めた。お前とは後一時間は口きかない。
「お前さんもそう思わねぇか?」
しつこいな。
「悪いが、漫画は読まないな」
……おや? 質問していた相手は俺ではなかったようだ。
気がつけば、後ろに、あと大股6歩ほどの立ち位置に、浅葱色の和服を着たツンツン頭の若者が左手に納刀させた鞘を握って“陣取って”いた。
陣取り、と呼べるほどに、彼の“範囲”に踏み込めば斬り殺されると実感できるほどの濃密な未来を感じさせる制空圏を確立させているのだ。
それだけでわかる。
この若者…………できる“剣士”だ。
「ヤクザ……“音芽組”。その組長殿とお見受けした。間違いないか?」
若者は年齢にしてはしゃがれた声で尋ね聞く。
「ん~、まぁ、そうだね。わっちが組長で間違いないよ」
狙いは、この男――――音芽組組長であるようだ。
この男、別に薩摩の生まれとかではない。ただ“わっち”という一人称の発音が可愛いとかいう理由で使用しているだけなので、あしからず。
「歯切れがあるな? 違うのか?」
「ん? 別に。ただ補足しとけば、うちはヤクザ……って名乗るのもおこがましいほど、そこまで手を広げちゃいないのさ。元々、音芽……まぁ、わっちのかみさんが孤児集めて寺子屋やりてぇてんで、用意した“組”が始まりの……真面目にヤクザってる方々と比べるのも申し訳ないほど小さな“家”みたいなもんだよ」
パラパラと漫画雑誌のページを開きつつ、過去を思いだしでもしたのか笑い混じりで語る音芽組組長。
その失礼な態度に、怒った様子は見せずに若者はしばし迷っているようだった。
「……では、こう言い変えようか? “任侠屋”音芽組組長――――あんたの命、頂きに参った」
世界が一変した。若者が殺気を解かれたのだ。
世界が一面真っ黒になった様な感覚にさせるほどの殺意。
命が何時奪われても仕方のない命のやり取りばかりの戦場と修羅場を経た人間が放つ、ギラギラとし感情の発露。
人が少ない時間でよかった。心臓の弱いモノなど居たら即死ものだったろう。
そんな死合いの空間においても……
「お~ほほぉ~っ、良いね。イイね! この平和な現代社会で、お前さんほどの剣客がいようとわ!」
この男はまったくダメだった。
両手を盛大に叩き、宴会芸でも見ているかのようにのんびりと、彼の“芸”に拍手を送る音芽組組長“殿”。殿ぐらい付けてやろう……これでも妹共々お世話になっている身なのだがら……嫌だけど。
口には出さないが、バカの態度に対して眉を逆立て怒りを露わにする若者。しかし、拡散させた殺意に反比例するように彼の気配が薄くなってきている。彼はたぶん……
「お前さんのは、暗殺剣だな。さっきから隙あらば、わっちの隙を突こうとするチクチクした算段ばっかり……まさに暗殺剣の王道だ、ぅっ!?」
俺と同じ答えに行き着いた音芽組組長殿は、いつも読んでる漫画の最後に、“次回は休載します”を見てショックを受けて語尾が上ずった。
そんなダメ男に我慢する若者が不憫に思えてしかたない。
「……ただの我流だ。戦場生まれの戦場育ちが戦場で作っただけの面白みのない剣さ」
「いや、いや面白いよ。なにせ、暗殺剣なのにわざわざ正面に出てくるんだからねぇ」
気配の殺し方は、暗殺者のソレ。闇に潜む様に己の身と心を隠して相手に死を与える隠業の達人。
なのに、彼は気配をあえてこちらに伝え、出てきた。これはおかしい。とても“可笑”しいのだ。
気配を絶ち、相手の命を奪う技の使い手ならざる行動。それが、この未だ胡坐で座りこんで、未だチラチラと漫画読みながら、パンチラ描写が出るとニヤつくダメ中年オヤジが面白いと言った理由だろう。
若者は目を閉じる。それでも隙は作らない。迷うように黙考する。
「ん? どしたい? なに迷ってんだ? ちなみにわっちは今ちょっとエロイ応募者全員サービスに投稿しようか迷っとるところだ。昔、エロ本が音芽に見つかった時は、エロ本種火の火炙り刑に処されたことを考えると……見つかったら、わっち今度こそ死ぬかも。あぁ、でも欲しいなぁ……」
ちょっと黙ってやれよっ
「……あんたに……」
静寂を作った暗殺剣の若者は腹の中に溜めていた、もしくは暗殺者としてのプライドを捨てるように言葉を吐きだす。
「あんたに、あんたには無意味だろう? 隙だらけ……いや、“隙間が無いほど”隙だらけのあんたには」
「ふぅふん?」
変な鼻息慣らして笑う“隙しか”ない男はさらに面白いとニタリと笑う。この男、自分の仕掛けた“隙”に気がつく人間に対して好感を抱く悪癖がある。
隙は衝くものだ。だが、隙間がないほど隙しかなければ、隙間がないのと同じこと。あらゆる角度から狙おうとも不自然なほど隙があるなど逆に可笑しいのだ。
彼はその隙を衝く職業の人間だ。それに気がついて仕方がなかったのだろう。目の前に出てきてさらに実感したに違いない。なにせ、正面に立っている今でさえ、隙しかないのだろうから。
「それに……ひさしぶりだぜ。正面から殺りあいたい標的と出会うなんてな」
獰猛な猛禽類を彷彿とさせる歪んだ“剣士”の笑みが彫り込まれた顔が一瞬垣間見えた。
標的の隙を突く事を生業とする暗殺者が、相手に隙をつくられてはプライドがズタズタにされ、尻尾を丸めて逃げだすのが普通だ。
だが、若者は出てきた。目の前に。標的の座す眼前に。
つまり、そういうことだ。強い相手と戦いたい――――剣士の本能。
(己の成すべきことよりも、剣士の矜持を刺激されたというわけか……俺には解らない世界だな)
「それと……そこの“おめぇ”!! いつまで隠れてるつもりだ!? えぇっ!?」
おや、こちらに気がついて――――?
「オゥッ!? 気がついていましたかー!?」
おおげさな歓喜の声が公園の隅にある桜の裏から発せられ、突然現れた“気配”と共に、そこから静かに一人の男が現れる。
年は、ツンツン頭の若者と大差はないだろう。身長も同じくらい。
ただし、牧師服を着た金髪の外人さんだった。
「おめぇは……っ!」
「ノォッ! アナタも彼が標的だったとは思いませんでしたよ!」
妙にイントネーションが高い牧師服の男は残念そうというよりは、不愉快そうな顔つき。
二人は知り合いなのか、互いに顔を見合わせると、全く同じ種類の顔になった。
それは敵を見る……そんな顔。
「邪魔するなら……斬るぜ」
「ン~? それはこちらのセリフですね! 私も彼のような特上の敵に出会うことはあまりないのですよぉッ! ……今日こそ殴り潰されたいですか?」
一色即発の空気は違う方向に流れつつあるようだ。これなら……あっちで潰し合ってくれるだろうか。 そんな風向きに変わりつつある“戦場”で、一人黙っていた男がいた。
その男は胡坐をかいた膝をバンっと叩いて、ついに動きだす。
「おぉしっ! いいだろうっ!!!!」
馬鹿でかい声だった。いがみ合う二人の暗殺者も口論を止めて、共に馬鹿でかい声のバカを見た。
どうしたバカ? 応募者全員サービスに応募するのか? なら音芽には俺が伝えておこうじゃないか。安心してまた怒られてしまえ。今度はきっと五右衛門風呂だ。
「二人まとめて面倒みてやる。おぉいっ! 得物をくれよ、“永仕”!!」
しかし、答えは意外とまとも。まともなことでも、こいつが言えば、なんとも不安でしかない。
“俺”は体を預けていた桜の木から飛び降りた。
「……珍しい。どういう風の吹きまわしさ? いつもならトンズラ決め込むお前さんが……」
“四本の足”が音もなく地に着いた瞬間、対峙する二人が驚きの表情になる。彼らは気がついていなかったようだ。
まぁ、残念がるなよ。元々穏業は人間よりも、俺のような“狼”の方が上手いんだから。
「銀の狼?」
「ン~? “金”では、ありませんでしたか、標的は?」
しかし、彼らの驚きは俺の存在云々ではなく、俺の“色”。
そうか、やはり狙いは金狼か。こいつらもメルルの刺客というわけだ。
まったくもってしつこいな、あの血筋は。
「珍しいもなにも、お前さんならわっちの好みがわかっとるだろう? わっちはコイツらみたいな歪なのに真っすぐ捨てられねぇ人間が大好きでねぇ。……それに、熱い挑戦者をむげに断るなんぞ、男じゃねぇだろう?」
ニンマリと人が悪そうな歪んだ笑みして、惚気て魅せる。そんなところは嫌いではなかった。
「物好き……そう音芽なら言うだろうさ」
「だから、こんな女に惚れたんでしょう…………わっちの妻ならそう続けるね」
「惚れてるねぇ……」
「べた惚れだぜぇい。一目合った瞬間から悪堕ちさせたくて仕方なかったぐらい」
「……早く取れ。心配はないと思うが、俺は戻る」
胴を揺らし、銀の毛を締めつけるように撒かれた黒側のベルトに吊るされた細長い袋と大き目の巾着袋の紐を解いた万年桃色脳内男。
真っ白に染められた中羽織を肩に引っ掛け、鍔の無いニ寸にも満たない黒い鞘におさめられた直刀を左手に、握る。
それだけで、相手二人は急に後へ飛んで距離をとった。気がついたのだろう。もう、隙など何処にもないことを。
これが自分の敵であると、ようやく理解したであろう二人の顔が同時に引きつり、体が強張らせたように構えをとる。
風が凪ぎ、桜が一斉に舞い散る。そんな狙ったかのような幻想的光景ですら、全く目に入らなくなるほどの存在感が爆破する。
圧倒的な格を有する男が右掌で前髪をかき上げ、顔を上げる。“碧い”眼が愉快そうに歪み、口元がニタリと嫌みに曲がった。
ゆったりとした動きで構えを取り始める男に合わせて、二人もすぐに身構える。
先ほどのまでのおふざけ男……音芽組組長が、ひさしぶりにヤル気を出したのを見届けると、俺は背をむけ駆け出した。
「さぁ、さぁっ、お二人様! 名乗りが遅れて、大変失礼っ! |私、生まれも育ちもスリーサイズも秘密秘密秘密の謎多き不詳のヤング男《メン》にして、東の京にて血よりも濃い縁で結ばれた一家、音芽組を率いております。馬鹿、阿呆、物好き、甲斐性無し、任侠家などさまざま呼ばれておりやす、名を――――左端 堕落と申す者にございます、以後がありましたらお見知り置きを……
安心しな。往生なんてさせねぇから、覚悟しなくていいぜ、お前さんら?」
背後から聞こえてくる剣戟の音色を耳に捉えつつ、桜並木を走った。
これは満開の桜が色ずく季節であった、過去の話。
東京が未だ、東京のままで、世界では戦争なんて起きている事実がテレビの向こう側であった頃の日本であった出、会いの一幕。
そして―――――
視点変更 1
桜舞い散る木の下で、お母さんが手招きしている。
ボクはそれに応えるように走りだそうとしたが、眼鏡が良く似合うボクのお父さんに止められるように手を引っ張られた。
あそこに行ってはいけないよ。おとうさんは言った。
ボクは父も大好きだったので、納得したように頷き、手招きし続けるお母さんの姿から離れるようにその場を去った。
小学校の通学路と反対方向のそこには人気が普段からない。
小高い丘にあるその桜並木は崖に面しているため危険で、フェンスが張られていた。そこから滑り落ちて死んでしまった人もやはりいるらしいのだ。
そこで、やはりまだお母さんが手招きしていた。
ボクはやはり気になってまた来てしまった。
お母さんがいつもと同じような顔で手招きしてる。
ボクは行こうとしたが、お父さんとの約束を思い出して、見ないふりして、その場を去った。
お母さんが手招きしていた。
あの場所、あの時と、いつもと同じ顔で、あの桜の木の下に。
家からそれほど離れていないから、何度も通ってしまう道からそこが見えるのだ。
小学低学年のボクは気になるが、お父さんとの約束があるから、やはりそこまで行けなかった。
だが、小学校卒業を迎える前日に、ボクはお父さんとケンカした。
口論の後、土砂降りの雨が降りしきる中、家を飛び出して、あそこへ一目散に走る。
他に行くあてがなかったわけではない。それでもあの場所が気になっていたのだろう。息を荒げてそこへと駆けた。
夜、人気のないあの場所に行けば……
母がいた。
まだ、いた。
いつもどおりの表情で。
いつもどおり不気味にそこで手招きしている。
ボクは桜の木へと近づいて行く。ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと……
桜の木が間近に迫ると、母は手招き止めて、桜の根元を指差す。
そこだ!
と強く訴えかけてくるその姿に身が竦むが、それでも気になってボクは雨の影響でか柔らかくなっていた土を手で掘る。
かきむしる様に掘っていくと、そこまで深くない場所に……それは、あった。
ビニールテープで縛りつけられたスチール性の箱。
ボクはこれをしっている。
これは家にあったお菓子箱だとしっている。
ボクはこれがどこかいってしまったことを知っている。
いつからだろう。いつだった?
そうよ。いつだったの?
あの日から見なくなった。あの日からでしょう?
ボクはガムテープを引きはがし、箱のふたを確信めいたなにかに突き動かされるように開ける。
そこには――――
――――お母さんの葬式がとりおこなわれた日ぐらいから見なくなった、包丁が入って――――
ガンッ!!
頭に火花が走った。
足場が崩れる。まるで計ったようなタイミングで崖が崩れたのだ。
ゴロゴロと土砂と一緒に転がり落ちた。体のあちこちを引きちぎるように岩にうちつけ、斜面の一番したに落ちた頃には全身が砕けてしまったような感覚がするが、中でも一番頭が痛い。
あの崖の上で、驚いているような、それでいて笑っている人がいた。
眼鏡が良く似合うその人が…………ボクのお父さんが、ボクの頭に振りおろしたであろう硬い石の傷が、一番痛んでいた。
あぁ、ボクのお母さんを殺した、今も逃走中のはずである強盗もきっとそんな顔していたんだろうな。
お母さんが家で見せていた辛そうな、苦しそうな顔をしながら、父さんの後で恨めしそうに睨みつけていた。
桜の木の下で、手招きしている。
その姿が不思議に思い、この街に引っ越してきたばかりの自分は彼らに近付く。
母が、再婚したのだ。新しい父親は眼鏡が良く似合う男性であった。
聞けば、去年、新しい父親は息子を無くしたばかりだとか。再婚のことを話たことで口論になり、そのまま不幸な事故で亡くなってしまった、のだとか。
近づくと、辛そうな顔した母親と、俯いたままの男の子だということがわかる。
どうしたの? と尋ねると、
バッっと、男の子が、血の涙を流す顔を跳ね上げ、手首を掴まれッ――――
「誰か、あの男を殺してくれぇぇぇぇぇっ!!!」
「「ギィヤァァァァァアアアアアアアアアッッッ!!!」」
視点変更 2
「「ギィヤァァァァァアアアアアアアアアッッッ!!!」」
放課後の教室に、二人の“女子”高生の絶叫がまき散る。
華も、色香も感じない純度百パーセントの悲鳴は廊下まで届いてしまっただろう。
もうすぐ夕焼け空になりそうな気配がある太陽の輝きが入る教室に、誰かが駆けつけてくる気配はない。それに安堵のため息をつき、やり過ぎたクラスメイトに小さく短い抗議をしてみる。
「……優子ちゃん」
「アハハ、ごめん……でも、やっぱぷっクハハッハッハハハハアっ!」
我慢を堪えていたように、腹を抱えて笑いだす良い家柄のお嬢様みたいな可愛さがある女の子は、座っている教室備え付けの机用のイスが後ろに転倒しそうになって慌てて姿勢を戻す。
そんな星野 優子は私の親友である。
前は茶色に染めたソバージュヘアだったが、今は色を変えずにセミロングのゆるふわ系髪型に変えていた。彼女曰く、夏の出来事から心機一転するため、らしい。元々、彼女のお嬢様風の見た目と相まってかなり可愛い仕上がりになっていた。
そんな彼女は都市伝説や怖い噂話などが大好きな普通の家柄な女子高校生。だと思っていたが、どちらかというと怖がらせたりするのが面白いと感じる小悪魔的な性格なんだなと、この数カ月でわかってきた。
特に、同じく親友である……先ほど絶叫を上げながら椅子から転げ落ちて、腰を抜かして立てないでいるクラスメイトを標的にするのが多い気がする。
「大丈夫ですか、智子ちゃん?」
私は、座っていた椅子から立ち上がり、地面に這いつくばって震えているボーイッシュな雰囲気をもつ女の子に手を差し出した。
その手がバシンと叩き弾かれた。
「私はッ! ホイホイそっちに行かないぞ、このっ、撫男めッ!!!」
「混乱しているッ!?」
涙と鼻水で顔をぐちゅぐちゅにしながら、振り向きざまに手を払ったのは他でもない智子だった。
上地 智子もまた、私の親友である。
彼女もまた髪型を変えていた。元はポニーテールであったが、今はショートヘアに変えていた。彼女の場合は心機一転というよりは、所属する陸上部で邪魔になってきたから、らしいが詳しいことはわからない。彼女もまた自身がもつ独特の男勝りさ(悪い意味じゃないですよ)と合わさって似合っている。
……それに以前よりもどこか女の子さが増しているような気がする。これは最近出会った後輩がよく言っていることでもあるので間違いない。
「というか、モデルの男の子と私が合体しているのはなぜですっ!!?」
「ぅうっ、もう嫌ぁ~っ!! おはなみもういかな~いっ!」
先ほど語ったボーイッシュさなど何処かへ消えうせ、泣きじゃくる乙女のような声を上げ、丸まる様にうずくまる。
この親友の方は怖い話が大の苦手であった。
後輩から、智子お姉さまと呼ばれるほど雄姿を見せる普段の姿はどこへいったのか……きっと、この秋晴れの空に消えていったに違いない。
そして、そんな影が濃くなる空を見ていて、ふと思った。
「あれ?」
絶叫は“二つ”。
一つは智子。では、もうひとつは……
「ローザ……?」
「なんですの?」
机を囲むもう一人の仲間へと視線を向けた。四角い机を取り囲むようにして椅子を並べているので私の真横。白金色の美しい髪が震えていた。
彼女は俯いていた。俯きすぎて、腰を乗り越えるほどある彼女の緩やかなウェーブヘアが現在彼女の全体を覆い隠しているようである。突然、全身ワカメのお化けが現れたとでも言えば良いかもしれない。
「撫子、なにか私に御用かしら?」
「え? あ、いえ…なんといいますか……」
「用が無いのに、私に声をかけましたの? ……まったく貴女という方は、まず考えてからしゃべりなさい」
お化けの顕現に驚き、声を一拍無くしていた私を責めるような声が髪の中から発せられる。聞けば万人が振りむくであろうソプラノの美声は現在……とんでもないくらい震えたアルトに変換されている。
「それに…それになんですのこのお話は……まったく、こんなゲスな話……なにが楽しいのかしら……まったく、まったく、まったくもうっ!」
まったく、がやたら多い震え声に、私はなんとなく彼女が苦手なものが何なのかを理解した。
魔術師なのに、なんで怖い話が苦手なんだ……
以外だな、と思いながら苦笑する私の視界の隅で、逆に怪談話がとても大好きな女子が細く笑んで、叫んだ。
「あっ! ローザちゃんっ後ろにぃ!」
「ギィィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!??」
「きゃぁあああああああああああああああアッッ!!」
優子が怖がらすために――――
ローザは自分の後ろに立っているはずの、“ナニカ”を粉砕するために、俊足の勢いで人の頭など一撃で破壊できそうな“メイス”を“錬成”し、真横に振るい――――
私は、その突如飛んできたメイスに絶叫した。
あと数ミリ、数秒遅ければ、完全に頭がスイカ割りだった! 走馬灯が視えた! ヤバかった! お母さんとお父さんの笑顔が脳裏に浮かんだ! 本当に!
「なにやってんでっ、ひぃっ!!!」
死の恐怖を体感したテンションのまま、暴挙にでたローザを罵倒しようとしたが、先手を打つように、鼻先にメイスが突き付けられ、私の声は上ずった。
「あ、あわ、あわわわあ、ああわっノワッ! あららわれましたわねェェェっ、こ、この化けナニカぁぁぁわっ!!」
「殺されかけた上に、化物扱いっ!? 落ちついてくださいローザ! ほぉ~ら、撫子ちゃんですよ~」
ローザは、ローザ・E・レーリスは本当に溜息つくほど美しい少女である。
そのプラチナの長髪が栄えるモデルを彷彿とさせる160半の体型に、どんな芸術家であろうと後世に残したくなるであろう顔つきは、男子のみならず、女子でさえ虜にさせ得るだろう文句のつけようのない美女であった。
その美女、今は顔面を鼻水と涙でグチュグチュにさせ、充血した眼が笑ってるのか泣いてるのかこまってるのか怒っているのか、よくわからない表情の顔に二つ付いてるような、なんというか……表現に困る残念な少女になり果てていた。
髪もボサボサに撒き上がり、鼻息荒げてブルブルと震えているローザ。そのグルグルと落ちつきなく動き回る血眼の目をみて確信。これダメだ、もう現実を見てない……
「だまされませんおよォ!! そうやって、やさしいふりしてカメに乗せた揚句、一世紀単位で拉致監禁! 盆踊りを強要した挙句、セーラー服着たマッチョなオトヒメからお土産と称した生物化学兵器を持たされ、深海からの寒中水泳を命じられて、ゴミクズのように漂流する……っていうのが日本の怪談話だと、お父様からお聞きしてるんですからぬぇぇぇええ!!」
「なにそのトンデモ浦島太郎ッ!? いいから落ちついて、ぶっそうな物をしまってください、ね?」
「そんなひょっとこみたいな顔したって騙されませんわ!」
「誰がひょっとこ、ですか!! えびす! せめて、えびす顔で!」
「……いや、女子が恵比須顔はダメでしょ“先輩”?」
混乱する状況下において、呆れ果てた“男子”の声が耳をうち、私は正気に戻った。
机を囲むイスの一つ。先ほど振りまわされたメイスを腕でガードした姿勢のまま、非難の目で私たちを見るのは、長身の男子高校生だった。
同じ高校が採用する夏の男子学生服をラフに着こなす姿はどこかモデルじみているが、細身ながらもしっかりと“実戦”を経験した筋肉が、彼の基礎に根付いているために華奢さなど微塵も感じさせない男性。
ガードの構えを解いて、冷や汗でもかいたのか少し不揃いな髪を上にかきあげる仕草も、二枚目な顔立ちと相まっていて様になる。だが、非難に眉根を寄せているためドキリとはしない。
彼が、私の横に座っていなければ、彼の隣に座っている現状に顔を真っ青に変えた優子の頭がメイスに叩き割られていたであろう事実には後から気がついてドキリとはしたが……
「星野先輩も……限度ってもん、計ってください……」
「だ、だってさ……」
「先輩……」
「アハハ……ごめんなさい……マコッくん、ローザちゃん」
「本当に謝ってます? あと、星野先輩はそのマコッくん、やめてくださいよ」
誤魔化すように笑って謝る優子に、まったく、と溜息つくこの後輩の名前は立花 信。
私の知る人の名前とよく似ていて、でもやっぱり違う“紅い目”をしたクールな後輩。
その信の腕、メイスを受け止めた右前腕から血が滴っているのが目にうつる。
「信君、腕がっ」
「え? あぁ、大丈夫っすよ」
彼が困ったように、腕を見せる様に上げると――――
「傷が……」
「すごっ! もう治りかけてる」
私と優子が覗きこんだ時にはもうビデオの逆再生じみた回復力が打撲痕である痣がひいていく場面であった。
「こりゃ、すごね~。ケンカじゃ無敵じゃん?」
「優子ちゃんっ」
私に不謹慎だと釘をさされ、本心から申し訳なさそうに口元を押さえた優子に、信は不思議と爽やかな笑顔になって腕をまじまじと見つめた。
「まぁ、そうっすね……破壊衝動なくて、この再生力と馬鹿力だけになってからかなり便利ですよ、実際。この力も悪くないかなって思えるくらいに」
「信君……」
彼は見た目の良い普通の高校生。だが、その身に、信じられないことにミノタウロス――――神の力を持っていた。
そのために彼は、普通の生活とはかけ離れた人生と、破壊を望む神の血が引き起こす衝動と世界への失望していた。そして、救われない自己嫌悪のループを自分でつくり迷想し、この夏に起きた事件の一端をになっていた。
「だから、まぁ……進さんのぶった斬られたのも、よかったかなって」
はにかんだ彼の顔から半月前にみた暗い影はもう、ない。彼の迷いとは裏腹に暴走するミノタウロスの暴力“だけ”が、もう一人の“紅い目”を持つ男に断ち切られているから、だろうか。
そんな彼が唐突に時計を見た。
「あ、もうこんな時間か……。スイマセン、俺、用事があるんで失礼します」
「え~、もう行っちゃうの?」
謙虚に言った信に、優子が本当に不貞腐れたような文句をつける。
「優子ちゃん?」
私は不思議な気持ちが溢れ出た。この優子という女子高校生はどこか小悪魔的な子であるが、空気は読める、読めてしまう人間であると思っていたからである。
噂話や都市伝説話で誰か(本当に特定の誰か)を怖がらせることもあるが、それはその類が本当に好きだからだろう。
基本根は真面目。多少の茶目っ気はあるけれども、彼が今手伝っている“仕事”を知っている一人であるはずだから、普段の彼女であれば、こんな子供じみた止め方はしない……と思っていたのだけれど?
「ホントスイマセン。今日は横路さんとなんで、遅れるとマジでヤバイいんで、じゃぁ」
「あっ……ムゥっ」
軽い会釈と同時に駆け出した信の背中が教室から出ていくと同時に、優子は唸って机に項垂れた。
「仕方ないですよ。信君は今、外異管理対策部のお手伝いをしてるんですから」
信はあの事件以降、この国唯一の対魔機関である特別部署、外異管理対策部の見習いとして学業をおろそかにしない程度で駆り出されていた。
小さな部署ではあるが、国内有力の魔術師が居るということで、自分の力をコントロールする一環として自ら志願したらしい。
「別に、どうでもいいし……気にしてないし……」
プスー、とムくれる優子。
首を傾げて、私は本当にどうしたのだろうと思う。お腹、痛いのかな?
……不満そうに顔を歪めてお腹が痛いというのはないか。
「……でも、なんかムカムカする……よしっ」
一転。なにかを決意したかのように立ち上がる優子。
「肝試しをしよう!!」
その言葉が出た瞬間、この場に残る四人中、二人が突如教室から逃げ出――――
「いいのかな……二人とも?」
――――そうとしたが、優子が不意に出した低い声がローザと智子の逃走動作をピタリと止めた。
「トモちゃん……私、知ってるんだよ」
「な、なにを藪から棒にぃっ」
「最近、トモチャンが美容院に行き出したよね? 昔ッから髪なんてどうでもいいとか言って、お母さんに切ってもらってたくせにさ……」
「そ、それがどうした!? し、心境の変化だよ!? それに、それに、私だって女なんだから気にするのは当たり前で……遅かったくらいであってだね…」
「最近とかさ……それってきっとハルく…」
「ヌゥウアアアアアァァアアッッッ!!! 止めんか! 止めんか! 違うわいっ!?」
ハル君とは、最近知り合った同じ学園の一年生、後輩である。ある事がきっかけで知り合ったのだが……彼がどうしたのだろうか?
「べつに私は良いんだけどさ……トモちゃんが所属している陸上部……恋愛禁止だよ?」
「恋愛っ!? レンアイとか、その、恋人とかラブラブとかそんなアヘヘっ……ハっ!? ない! そんな感情はない!」
「でも噂が流れればやりずらいよね……流れれば、だけどさ……そんなの、嫌だよね?」
体中から陰の気を放っているかのような優子がユラユラと智子に近づき、ポンとその肩を叩いた。
……私には状況がよくわからないが、なんとなく智子が脅されていることがわかる。
「くっ、卑怯な!」
「卑怯? なにを言っているのかわからないよ? 私はただ、流れたら嫌だよね、と言ってるだけだよ……私はただ、呟いてるだけだよ? ねぇ? で、さ、一緒に肝試し……行ってくれるよね? ねぇ?」
「いっ、嫌だぁぁあっ!!! こんな八つ当たりに付きあわされるなんて、イヤダァアアアアアア!!
嫌だと言いつつも、智子は逃げる事を止めた。つまりは、行く、ということだ。イヤイヤでも。
「わ、ワタクシはヤマシイコトなどしていませんわよ、えぇ! けっしてなにもネェ! これでも私、誇りある錬金術師! 脅迫になどにくっしませんワ!」
もう一人の哀れな子ヒツジは、公開処刑前の心境から、しゃべり方がどこかの騎士みたいになってしまっている。
「しってるんだよ……ローザちゃん? ローザちゃん最近できた友達と一緒に漫画研究会立ち上げて、その第一作目が……私、あっち系も読むけどさ……あんな過激なのはダメだと思うんだよね、高校生なんだからさ…あんなB――」
「アアァワワワワッ!!? 何で知って!? 言わないで! それ以上は後生ですからっ! 気の迷いだったんだですの! お願いぃ! なんでもするから! どこにでも付いて行きますから! それだけは、それだえは秘密にしてくださいましぃいいいいい!!」
一発。瞬殺。まさに即落ち。優子の足にすがりついて許しをこう姿は敗北者そのもの。おい、誇りはどうした?
最後の方がよく聞き取れなかったが、ローザが書いた漫画が原因のようだ。なんだろう、気になる。こんど読ませてもうらおう。きっとファンタジー系じゃないかな? ローザだし。
「よし! 決まった! 今日は肝試し!」
「「「今日っ!!??」」」」
私も含めた三人がその唐突さに驚く。
「そうだよ。いいでしょう、別に。今日、皆この後用事……“ないんだからさ”?」
なぜ、私たちのプライベートを把握しているのか……そう質問できる勇敢なる者はココにはいない。
もうこの疑似勇者きっと止まらない。
「じゃぁ、今から出発っ! 実は、“あそこに”面白い噂がたくさんあってさ。前々から行きたい場所あったんだよね!」
私は元気ハツラツな優子が“あそこ”と呼んだ場所の方向を、血の気が引いたように青い顔の二人を視界に収めながら見つめる。
丁度、窓の方ではあるが、ココからの目視は難しい。
日本は、いや、この世界は“あそこ”を隠すように壁を建てた。
その周囲に建築物を作ることを禁じて、周囲の点在する人の住めぬ廃墟とビルニ階分程度の壁が境界線となり日本と、そして、日本以外として区別するように建てられているのだ。
それは人が三度起こした過ちの傷跡。
ここは第三次世界大戦を起こしてしまった世界。
シェルター技術の革新と普及が功をそうしたのか、犠牲者が前例と比較しても少ないと言われた戦争ではあったが、平和の国である日本も無関与ではいられず、“どこかの”国から未だ理由もわからぬ砲撃を受けた。
日本に落とされた新型兵器は東京二十三区東側を壊滅させ、人の住めぬ地に変えた。その傷跡から生まれたのが“あそこ”だ。
復興資金すらも出せないほど疲弊していた当時の政府により隔離され、未だ復興の目処が立たない見捨てられた地区。
現在そこには戦争で土地を奪われ、または世界のどこにも居場所がない者達の居場所となっていた。
その地区に正式な名前はない。どこの国からも認められていないのだから当然だ。しかし、ある時から皮肉めいた名を冠するようになったと言われている。
かつて神により燃やされた地、多くの人々が心乱れた所とされた場所、神に見捨てられた者たちの巣窟。
人は言う、そこには死体が石ころのように転がっていると。
人は聞く、そこは一日中、銃声が鳴り響いていると。
人は語る、あそこは常識が呆れかえり、どこかに去ってしまった場所だと。
いつの間にか人は、あそこを隔離区“ソドム”と呼んでいた。
「目指すはソドムの今は使われてない教会! そこに夜な夜な出るって噂の“待ち人を探し続ける戦死者の幽霊”!!」
……本当に、誰が呼び始めたのだろうか? 戦後に生まれた自分には知ることもできない。
――――視点?????――――
“それ”は“そこ”に確かに“あった”。
例年、稀に見る大雨の夜。誰もが外に出たがらなぬ天気の日。
それ……“カレ”は傘もささず、肌に当たれば痛い大粒の雨も気にせずに、そこに“あった”。
『…………』
カレは何をしているのだろうか? カレは何を考えているのだろうか?
カレは何を見ているのだろうか? カレは何を求めていたのだろうか?
“我々”には、わからない。知ることもできない。
我々は首のない身で、はて? と首をかしげる。
カレはどうしてこんな日に、傘ではなく“白鞘に納められた刀”を片手にぶら下げているのだろうか?
ザンッ、と斬撃のような稲妻が空に走る。
その雷光に、今日の曇り空にも似て暗かった世界が一瞬、照らされる。
廃棄されて長い、薄汚れた工場跡。
決壊間近な河川。
工場の外壁にもたれ掛かるように座りこんで、腹から血を流している“死体”
そして、その死体を見下ろすカレが照らし出された。
光は一瞬。再び、世界は雨と暗闇に包まれる。
それ以外は写らなかった。後は周りには誰もいない。
『……ドコダ……ドコニイル……』
カレがボソリと呟く。その声は豪雨を介さずに周囲に響き渡った。
口を動かさぬ言葉はカレ以外がいないのだから、その言葉を聞く者はいない。
『ヤクソクヲ……アノバショデ……イソガネバ……マッテル……マッテルンダ……』
カレはココを立ち去る。ユラユラと、ユルユルと、スゥーっと、――――足音一つたたせずに、その“足の無い体”が動き出す。
『……キメナクテハ……ケッチャク……ノ……“右”……キメルノダ』
豪雨の中を、雨にも“当らず”、カレはそのまま雨の中へ溶ける様に消えていく。
『ヤクソク……ハタス……“組長”……ドチラカガ』
それを最後にカレの存在を“我々”は見失う。
だが、それでいい。
XXXXは見ていた、聞いていた。ここに、そこに、どこにでもあって、どこにもない我々が確かに確認していた。
今は、それだけで、いい。
これは、契約の物語。
――――未だ、果たされない約束の物語。
次話へ
おはようございます。最近、アニメ作品、境界の彼方に影響され、眼鏡をかけた女子が可愛くて思えて仕方のない桐識 陽です。
やっと、書き上げたのでアップしていこうと思います。これから2クール目。張り切っていこう……そう思っていたのですが、かなりひどい腰痛を患って、スタートダッシュに失敗しました。
クッソッ! 腰痛めっ! オマエのせいで! こんな、こんな……
だから、決して英雄伝説“閃の軌跡”をプレイしまくくってて遅れたわけでは、な、ないんだからね!
ここまで読んでくれた方に、そして、こんなくだらないあとがきの内容を即行で忘れてもらえる方々に感謝を。
桐識 陽