表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時果ての魔女  作者: 紫月 京
5章 目覚め、そして再び極北へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/106

5-6


「さて、お主の国の砂漠化についてじゃが……」

「ちょっと待て!」

さらっと月の神の話を終わらせるな!

手で額を押さえ、一つ息を吐く。

「月の神、は……もう脅威ではないのか?」

俺の問いにしばし首を傾げ、時の神が口を開く。

「脅威、か……。そうじゃのう……お主があの方の胸を貫いた時に、剣に込められた光の御子の魔力があの方を包んだ」

「光の御子の魔力……」

「あれは、太陽神さまの御力でもあるからの。姉神さまに包みこまれているような心持ちであったろう」

紙のような手応えだった月の神を思い出す。

確かに胸を貫いたというのに、強大な敵を倒したという感じはしなかった。しかも……。

「その割には、物凄い形相で俺たちを斬りつけてきたが……」

楽な寝着を身に着けていることに気づき、胸元をくつろげてみた。

鎖骨の下から脇腹まで、斜めに伸びた傷跡がほんのり朱色に線を描いている。

ハッとして、時の神に視線を向けた。

「スズシロは!あいつはどうなった!?」

何故忘れていられたのか。俺を庇って、俺の目の前で倒れた真っ白な精霊。

あれほど助けられたというのに……。

「案ずることはない。あれは無事じゃ」

のんびりとした時の神の返事に、ほっと胸を撫で下ろした。

主である時の神が言うのなら、スズシロは無事なのだろう。

「お主に斬りつけた時のあの方は、何と言おうか……最後の、まぁ、悪あがきじゃな」

「悪あがき……」

「お優しい太陽神さまに宥められておる気持ちで、昔を思い出して苛立ったのを、お主にぶつけたのじゃろう」

何だその、子供の我儘は。

いや、あいつはそういう神だったな。


はぁっとため息を漏らす。

「さすがに、神につけられた傷を完治させるのは、無理であった。お主の命を繋ぎ止めるのが精一杯じゃった。儂が油断したせいじゃ。悪かったのぅ」

時の神の言葉に目を丸くした。神が人に謝るなど、想像もしていなかった。

「いや……死をも覚悟してあの場に赴いたのは俺だ。彼女の心臓を取り戻して、全て終わったつもりになっていた」

時の神の隣の椅子で、宰相の眉がピクリと上がった。

まずい、これは説教されそうだな。

ゴホンと咳払いし、宰相から視線を逸らす。

「月の神は、月森宮に籠って出てこないということだったが」

話題を戻した俺に時の神が頷く。

「あの方のことは、儂に任せておくがよい。魔女の心臓を取り返され、太陽神さまの復活はもはや避けられぬ。それを悟ったあの方は、今は大人しい」

「今は、か。暗示をかけたと言ったな?そんなことができるのならば、初めからそうすればよかったのでは?」

それなら、世界から太陽が失われることも、太陽神が封じられることも、そもそも、クララが囚われる必要もなかったのではないだろうか。

俺の疑問に、時の神がバツの悪そうな表情を浮かべる。

あ、嫌な予感がするぞ。

「あの方に、儂だけを見てもらうために、一度全てを手に入れ、その後絶望していただく必要があったからのう……」

がっくりと、俺は肩を落とした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ