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時果ての魔女  作者: 紫月 京
4章 神の庭にて

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4−25 クララ


ドクン!

胸を引き裂かれるような痛みに、体が跳ねた。

眩暈でふらふらする。冷や汗が止まらない。

ライカーンの剣を吸い込んだ天井を見上げる。

穴が空いていたことなどなかったかのように、いつも通りの高い天井。

体が震える。自分で自分の肉体を、上手く扱えない。

何?このどうしようもない不安感は。

ライカーンの身に何か起きたの?

震える足を叱咤し、何とか立ち上がる。

胸に手を当てる。鼓動など、何も聞こえない。なのに、どうしてこんなに苦しいの?

「……ライ」

そっと、請われた愛称を呟いてみる。

とても大切な、心を温かくする名前。私の王さまの、強くて優しい橙色を思い浮かべる。


バサリ。

背後で聞こえた物音に振り返る。

無機質な床に、赤い背表紙の本が落ちていた。

「炎の国の本……」

最上階から落ちてきたの?どうして……。

重たい足を引き摺って、本に近づく。

震える手を伸ばすと、本がゆっくりと後ろへ動いていく。

「何……?」

塔の魔力が動かしているの?こんな、意思を持っているみたいに……。

ふわり、と本が浮いた。そのまま、吹き抜けを上がり始める。

「どこへ……」

ライカーンの剣に魔力をありったけ込めたから、今の私は飛べないのよ。

一歩ずつ、階段を上がる。

ふよふよと漂いながら、炎の国の本が吹き抜けの途中で本棚の方へと向かう。

どこに行くのかしら。

壁一面の本棚の前を通り過ぎ、窓際に置かれた上着掛けの傍まで本が飛んでいく。

吊るされたライカーンの赤い外套が目に入る。急に力を失ったかのように、本が床に落ちた。

やっとの思いで上着掛けの傍までたどり着き、外套と本を交互に見やる。

ここまで、連れて来たかったのかしら。どうして……?

きゅ、と唇を噛んで、外套に手を伸ばす。

深い赤で刺繍された炎の国の紋章を、指でなぞる。

彼の体温を感じるような気がして、上着掛けから外しそっと抱きしめてみる。


『……魔女よ』


あぁ、聞きたくもない声がまた聞こえてきたわ。

どうせなら、ライカーンの声を届けてくれないかしら。


『すまぬ。儂が油断した』


えっ?

時の神が謝った?そんな感情、あったのね。

私が答えずにいると、焦れたような声が再び脳内に響く。


『しばらく、王の身柄は儂が保護しよう。お主は、信じてそこで待て』


「ちょっと待って」

思わず顔を上げる。時の神が保護?一体何があったの。


『どれほど時がかかるかわからぬが、お主からすれば瞬きほどの間じゃろう。王の再訪を、そこで待つがよい』


「どういうこと?彼は無事なの!?」

返事はなかった。

相変わらず、神々というのは勝手なものね。

塔から出られない私には、ここで待つ以外の選択はできないのよ。

わかっているわ。私には、何もできない。

でも……。

ライカーン。貴方を信じているわ。

無事なら、それでいいわ。



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