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時果ての魔女  作者: 紫月 京
4章 神の庭にて

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4−5 クララ


自然から遮絶された塔の中で、壁一面の本棚を巻き込むほどの強風が吹き荒れている。

書物が風に晒され、吹き抜けを巻き上がっていく。

風圧に立っていられずに、その場で膝をつく。

床に落とされたライカーンの剣を拾いたいけれど、近寄れないわ。


『いい加減っ、答えなよっ!』


吹き抜けの中央あたりにふよふよと漂う黒い影が、揺れたように見える。

月の神の感情に左右されているのかしら。

あの影を中心に風が起こっているわ。いつ攻撃が飛んでくるかわからない。

でも、反撃するために魔法を使えば、位置が知られる。

魔力の気配を探って、私のいる大体の場所は把握されているはず。

せめて少しでも、隠さなければ。


『ねえっ!あの男はどこに隠したのさっ。僕が……この僕がっ、聞いているんだよっ!さっさと答えろっ!』


そっと、後ずさる。

癇癪が治まるまで、このまま気配を消してやり過ごせないかしら。

塔からは、出られない。ここで、影を窺いながらその時を待つ?

黒い影から再び風の刃が飛んでくる。

頬が切れる。腕も、肩にも切り傷ができていく。

「……っ」

息を詰めて痛みをやり過ごす。

声を出してはダメよ。傷は塞がる。耐えられるわ。


『ほんっと、生意気になってっ!どうしてっ、僕の思い通りに動かないのっ!』


待って、泣いているの?

我儘が通らない子供みたいね。あ、そういう相手だったわ……。

一瞬動揺してしまったわ。


『……ねぇ、本当に何の気配もしないけど……あの男、まさか……』


!!

何に気づいたの?彼を時限宮に飛ばしたことには、気づかれていないはずだった。

まさか、感づいたの……?


『……まさか、じゃあ、あいつも……?どういうこと?僕の魅了、効いてないの……?』


影から聞こえる声が震え始めた。

何かに動揺している?


『……許さない、許さないよ。君も、あいつも……君は後回しだ。この鳥籠の中で、己の無力にのたうち回るがいい』


低い、低い声で不吉なことを呟いて、黒い影がすうーっと消えていった。

巻き上げられていた書物が、風の支えを失ってバサバサと落ちてくる。


はあーっ、と深く息を吐き出す。

震える足を動かして、床の剣を拾う。

赤い炎の装飾の、美しい剣を胸に抱きしめる。

立っていられなくて、その場に座り込んでしまったわ。

ライカーン、どうか、どうか……無事でいて。

ぎゅっと目をつぶって、ただ祈ることしかできなかった。



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