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時果ての魔女  作者: 紫月 京
3章 時の神と対話

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3−20 クララ


窓から雪景色を眺める。

吹雪の中を、白兎が飛び跳ねているのが見える。

そう言えば、最初の狩りでライカーンが狩ってきたのは、兎だったわね。

ふふっ、と笑いが漏れて、自分で驚く。

私の世界を彩るのは、いつも貴方。

橙色で真っ直ぐに見つめる、私の王さま。


時の神が水晶石で吸い取って空にされた魔力は、すでに回復した。

でも、魔法を使う気にはならなかった。

彼が戻ってきた時のために、私の中に蓄えておきたかった。

塔に吸われて時の神の魔力に変換されても、この肉体に戻れば私の魔力として使える。

一体、どういう仕組みなのかしらね。

これまで考えたこともなかったわ。

けれど、考えなくてはいけないのかしら。

私の魔力と、時の神の力が、混じり合っているの?

嫌だわ、気持ち悪い。

私は、何故、ここにいるの?

壁際の本棚を振り返る。

ここからでも、漆黒の背表紙が目を引く。


無時域(むじいき)の書庫』


私にはどうしても読めない、この塔の成り立ちが書かれているはずの書物。

どうにかして、読めないかしら。

足を一歩、踏み出す。

本棚に収められた膨大な書物。

すべて読んだ。世界のどこにも、太陽神を復活させようという動きはない。

なかったはずだった。それなのに、彼がここまで来た。

この塔にやって来た初めての人間が、ライカーンだった。

彼が体当たりして扉を開けた時、歯車が外れたわね。時計を見に降りてみようかしら。


螺旋階段をゆっくりと降りる。

魔法を使えば一瞬で飛び降りられるけれど、自分の足で歩いてみたかった。

塔の一階、表の入口の扉の前に立つ。

埋め込まれた時計を見上げる。時の神が魔力を込め、この塔を封じている金の時計。

届くかしら。

そっと、扉に手を触れる。

ピリッとした痛みが指先に走った。

「……っ」

痛みを我慢してそのまま動かずにいると、時計の針が動き出す音が響いた。

短針と長針が、文字盤の中で重なる。

激しい頭痛が襲ってきて、その場で倒れそうになる。

滲む視界で時計を睨んでいると、文字盤の頂点で針の動きが止まった。

脳裏に浮かぶ、明るい世界。

「……?」

水の溢れる、緑豊かな国。

生まれつき魔力の高かった私を、大神殿に預ける両親の寂しそうな顔。

「今のは……?」

額を押さえる。

少しずつ、頭痛が治まっていく。


あぁ、あれは、私の記憶なのね……。

今まで忘れていたのは、この時計のせい?

時の神が、私の記憶を封じていたのかしら。

いいえ、理由は何でもいいわ。だって、私は……。

「私は、クララ。クララ=フィンセン。水の国の第一王女よ」

はっきりと声に出して、誰にともなく名乗る。

そうだ。太陽神を祀る大神殿で、魔力の制御を修行していた、水の国の王女。

そんな私の元に、あの性悪な神がやって来たのだったわ。



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