3−12
とにかく、時の神の昔話とやらを最後まで聞くことにした。
それが真実か否か、俺の目的のために役立つか否か、それは後から考えればいい。
今は少しでも、手がかりが欲しかった。
「ほ。顔つきが変わったの。何やら覚悟を定めたようじゃ」
「とりあえず、貴方の話を聞かせていただきたい。今のままでは、何もわからず、何もできない」
「まあ、そこに座すとよい。年寄りの話は長いものじゃぞ」
渋々、俺はスズシロの運んできた椅子に腰を落ち着けた。
「さて。まずは何から話そうかの。儂も長き時を生きておるゆえ、あやふやなところも多い。
そうじゃな。お主の質問に答える形をとろうかの」
饗された茶の香りを嗅ぎ、毒の入っていないことを確認して、口をつけた。
口の中に百合の香りが広がる。
「……この茶は、何故百合の香りがするんだ?」
「儂を祀る神殿に供えられた供物じゃな。時の神の神殿には、すべて百合が植えられておる」
知らなかった。やはり、俺は無知な王なのかもしれない。
クララに脳筋の王さまと思われていたのが、すでに懐かしい。
「まず、俺は世界に太陽を再び昇らせたい。もうわかっているだろうが。そのために、俺は何をすればよい?」
そう、それが最も重要な目的だ。この神は、答えるだろうか。
「太陽神さまは、封じられておる。世界に太陽を取り戻すには、太陽神さまを解放せねばならぬ」
「どこに封じられている?」
「……」
黙りやがった。答えにくいことか?
「俺の質問に答えるんじゃなかったのか?」
言葉遣いが崩れる。不敬だとか、不遜だとか、知ったことか。
俺の詰問に、たっぷりと沈黙した後で、時の神がゆっくりと口を開いた。
「太陽神さまは、魔女の肉体の中に」
「!!!」
気づけば、立ち上がっていた。
時の神に掴みかかろうとしていたところを、後ろからスズシロに押さえつけられた。
「カーンさま、抑えてくださいませ」
「っ、離せ!一発じゃ足らんが、とにかく殴らせろ!!」
俺とスズシロのやり取りを、時の神がのんびりと眺めている姿に、腸が煮えくり返りそうだ。
頭の中が沸騰したように、熱い。
クララ……。
クララ……っ!
貴方の体に太陽神を封じていると。この神はそう言った。
貴方は、知っているのだろうか。
知らされて、いるのだろうか……。
神といえども、到底許せる話ではない。
何故、貴方がそんな目に遭わなくてはならないのか。
目の前が真っ赤に染まるようだった。
じんわりと、涙が滲んでくるのが自分でわかる。
泣くな、耐えろ俺!
こんな奴の前で、取り乱すな!
頭を大きく振って、荒い呼吸を整える。
まだ、怒りを抑えろ。こいつから、知っていることのすべてを聞き出してやる。
冷静さを失えば、負ける。
相手は、腐っても神なんだぞ。




