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時果ての魔女  作者: 紫月 京
3章 時の神と対話

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3−7


果ての見えない廊下を進む。

金の装飾がされた白い柱は大理石だろうか。光を反射して、きらきらと眩しく見える。

案内された部屋から覗いた廊下には誰の気配も感じられなかったが、そこかしこで白い精霊が忙しなく動き回っている。小人のような大きさのためか、随分と可愛らしく見える。

そう言えば、スズシロは人と同じくらいの大きさだった。姿形を自在に変えられるのだろうか。

足音を立てず気配を殺し、周囲を見回しながら進むと、真鍮の扉が見えてきた。

扉に耳をつけ、音を探ってみる。

何も聞こえない。無人の部屋か?罠か?

扉から離れ、腕を組んでみた。入れるところはどこへでも入っていいと言われている。罠でなければ、見つかっても罰せられることはないだろう。

そっと、扉の取っ手に手をかけてみた。何の反応もない。魔力で罠が張られているということはなさそうだ。


すっと息を吸い、取っ手を握る手に力を込めて、扉を大きく開け放した。

「!!」

身構えていた俺の目に飛び込んだのは、壁中を覆い尽くす、様々な時計だった。

大きさも色も形も不揃いな時計が、規則的な音を立てている。

部屋の壁を覆う時計の中に一箇所、白い壁の見えているところがあった。

ゆっくり、近づく。

「……壁画?」

壁に直接描かれた、戦いの絵だった。


太陽を背に、黄金色の髪を揺らす女神。

月を背にして、濃紺の髪をたなびかせている男神。

それぞれの周囲に、眷属だろう神々が描かれている。

どの神も、それぞれの武器を構え雄々しく立っていた。

これは、神話の時代を描いたものだろうか。

祖国で受けた教育でも、教本に似たような絵が描かれていた。

この世の支配権をかけて争った姉弟神。

時の神の仲裁により、昼と夜の時間を半分ずつにして、世界を二分して治めるようになった姉神と弟神。

教本で習うのは、そこまでだった。

クララによれば、その後も月の神は世界を欲し続け、時の神を誘惑して、この世のすべてを己のものにしたという。

だから、太陽は昇ることができない。

では、太陽神は今、どこにいるのか。

この時限宮の天に浮かぶ太陽に見える光は、太陽神が辛うじて飛ばしている影だと言う。

ならば、太陽神自身は、一体どこにいるのか。月の神に囚われてでもいるのだろうか。

……クララと同じように?

急激に腹が立ってきた。

何としても、時の神から情報を聞き出し、月の神の呪縛からクララを解放してみせる。

いや、太陽を世界に取り戻すのだ。また彼女に窘められる。目的を見失うな、と。


じっくりと壁画を眺める。

神の息吹を感じられそうな、生き生きとした絵だった。

今にも動きだして、こちらを見つめてきそうな……。

「!!」

太陽神の視線が、俺を見たような気がした。

そんな馬鹿な。これは、ただの絵だろう?

どんな匠が描いたのか、まるで本物を閉じ込めたような出来だとしても、絵は絵だ。動くはずがない。


「おや、お主には微笑みかけると見える」

嗄れた声が、背後から響いた。



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