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荘厳な柱が等間隔に並んでいる。
天井は高く、透明度の高いガラス張りのようにも見える。
透ける天井から差し込むのは、太陽の光なのだろうか。何故。
俺の国にも神殿はあるが、火の神を祀るものだからな。何というかこう、飾り気のないもっと頑強な建物だ。
神殿とはそういうものだと思っていたんだが、ここは空気が違う。
緩やかに時が流れているような、静寂が心を落ち着けるような、不思議な心持ちになる。
前を歩く真っ白な背中を睨みつけてみる。
しかし、何の効果もなさそうだな。そもそも、人ではあるまい。敵意をぶつけてみたところで、何の手応えもない。
くるり、と頭を回してこちらを振り返ってきた。
「!!」
何だその、人形のような動きは。
……え?人形なのか?
「人の子は、この宮に何をしに来られましたか?」
人の子……あ、俺のことか。
会話をして、少しでも情報を得るべきだろうな。
得体の知れない相手でも、言葉が通じるならば、情報源だ。
「その、人の子という呼び方は、何とかならんか」
「お名前を伺っておりません」
ここで名を名乗るのは悪手だしな。どうするか。
『……王さま』
ダメだ、あれはクララにだけ呼んでほしい呼び方だ。
しばらく悩んで、俺は口を開いた。
「カーン、でいい」
「では、カーンさま。貴方さまの、この宮での目的は何でしょうか」
淡々とした口調で、スズシロが尋ねる。
時限宮に来た目的など決まっている。
だが、こいつは時の神の配下なのだろう。正直に答えるわけにはいかない。
「……それを聞いてどうする?」
「主に害をなさないのならば、それで結構でございます」
「時の神のことか?害をなす存在になるかどうかは、相手次第だが」
脳裏に浮かぶのは、微笑むクララの姿。
あの笑顔を、ずっと傍で見ていたい。塔から解放してやりたい。
彼女を閉じ込めているのだから、時の神とは敵対することになるだろう。
……いや、違うだろ、俺!まずは、世界に太陽を取り戻すことだ。
そうだ、あの天に浮かんでいるのは、本物の太陽か?太陽神は、ここにいるのか?
「スズシロ、と言ったな?あれは、太陽か?」
そもそも俺に、腹芸なんぞできん!
開き直って、直接尋ねることにした。
俺の視線を追いかけ、天を仰ぐスズシロ。
ああ、と頷き口を開いた。
「あれは、太陽神さまの影でございますね。主と主の想い人さまが、閉じ込めた太陽神さまが、辛うじて飛ばしている影で……」
「ちょっと待った!」
何か、すごい重要なことをさらっと口走ったな!?
「何か?」
首を傾げているが、いいのかそんなポロッと!
「何か?じゃない。お前、そんな簡単にそんなこと漏らして、大丈夫か?主から罰されたりしないのか?」
「罰……そのようなものはございませんが。太陽神さまは、ここにはおられませぬし、あれは影ですのでお気にされることはございません」
……言葉が通じると思ったのが間違いだったのか。
いや、言葉は理解できるんだが、話が通じない。これが、人と神のすれ違いというやつか。
そう言えば、クララにもそんなところがあったな。そこが可愛いところだったんだが。
いや、呑気なことを考えている場合ではない。
気を引き締めろ、俺。相手の調子に乗せられるな。
だが、この相手からはもう少し、話を聞けそうな気がしていた。




