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時果ての魔女  作者: 紫月 京
3章 時の神と対話

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3−4


荘厳な柱が等間隔に並んでいる。

天井は高く、透明度の高いガラス張りのようにも見える。

透ける天井から差し込むのは、太陽の光なのだろうか。何故。

俺の国にも神殿はあるが、火の神を祀るものだからな。何というかこう、飾り気のないもっと頑強な建物だ。

神殿とはそういうものだと思っていたんだが、ここは空気が違う。

緩やかに時が流れているような、静寂が心を落ち着けるような、不思議な心持ちになる。


前を歩く真っ白な背中を睨みつけてみる。

しかし、何の効果もなさそうだな。そもそも、人ではあるまい。敵意をぶつけてみたところで、何の手応えもない。

くるり、と頭を回してこちらを振り返ってきた。

「!!」

何だその、人形のような動きは。

……え?人形なのか?

「人の子は、この宮に何をしに来られましたか?」

人の子……あ、俺のことか。

会話をして、少しでも情報を得るべきだろうな。

得体の知れない相手でも、言葉が通じるならば、情報源だ。

「その、人の子という呼び方は、何とかならんか」

「お名前を伺っておりません」

ここで名を名乗るのは悪手だしな。どうするか。


『……王さま』


ダメだ、あれはクララにだけ呼んでほしい呼び方だ。

しばらく悩んで、俺は口を開いた。

「カーン、でいい」

「では、カーンさま。貴方さまの、この宮での目的は何でしょうか」

淡々とした口調で、スズシロが尋ねる。

時限宮に来た目的など決まっている。

だが、こいつは時の神の配下なのだろう。正直に答えるわけにはいかない。

「……それを聞いてどうする?」

「主に害をなさないのならば、それで結構でございます」

「時の神のことか?害をなす存在になるかどうかは、相手次第だが」

脳裏に浮かぶのは、微笑むクララの姿。

あの笑顔を、ずっと傍で見ていたい。塔から解放してやりたい。

彼女を閉じ込めているのだから、時の神とは敵対することになるだろう。

……いや、違うだろ、俺!まずは、世界に太陽を取り戻すことだ。

そうだ、あの天に浮かんでいるのは、本物の太陽か?太陽神は、ここにいるのか?

「スズシロ、と言ったな?あれは、太陽か?」

そもそも俺に、腹芸なんぞできん!

開き直って、直接尋ねることにした。

俺の視線を追いかけ、天を仰ぐスズシロ。

ああ、と頷き口を開いた。

「あれは、太陽神さまの影でございますね。主と主の想い人さまが、閉じ込めた太陽神さまが、辛うじて飛ばしている影で……」

「ちょっと待った!」

何か、すごい重要なことをさらっと口走ったな!?

「何か?」

首を傾げているが、いいのかそんなポロッと!

「何か?じゃない。お前、そんな簡単にそんなこと漏らして、大丈夫か?主から罰されたりしないのか?」

「罰……そのようなものはございませんが。太陽神さまは、ここにはおられませぬし、あれは影ですのでお気にされることはございません」

……言葉が通じると思ったのが間違いだったのか。

いや、言葉は理解できるんだが、話が通じない。これが、人と神のすれ違いというやつか。

そう言えば、クララにもそんなところがあったな。そこが可愛いところだったんだが。

いや、呑気なことを考えている場合ではない。

気を引き締めろ、俺。相手の調子に乗せられるな。

だが、この相手からはもう少し、話を聞けそうな気がしていた。



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