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時果ての魔女  作者: 紫月 京
3章 時の神と対話

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3−3


クララは今、どうしているだろうか。

勧められた茶に手をつけず、押し黙ったままの俺に何を思ったのか、時の神はふっと笑いを漏らしてどこかへ歩いていった。

視界の端で、白い小人たちがせっせと茶器を片づけている。

これは……精霊、だろうか。物語で読んだことはあるが、初めて見た。

体に風魔法の障壁を纏ったまま、辺りを見渡す。

クララと過ごした塔とは違い、天に浮かぶ月明かりが、陽の光のようにあたたかく照らしている。

……陽の光だと?あれは、太陽か!?

思わず立ち上がり、その拍子に卓の角で膝を打ち付けた。

「〜〜〜っ!」

声にならない声を堪え、それでも上を見上げていると、時の神がゆったりと戻ってきた。

痛みを我慢しながら身構えた。

「これは、スズシロ。お主の身の回りの世話をさせよう」

「……」

時の神の後ろに控えていた白っぽい人影が、すっと進み出てきた。

「スズシロと申します。ようこそお越しくださいました、人の子」

「名を名乗れとは言わん。儂のことなど、信じられぬと顔に書いてあるでな。じゃが、ここから出してやることも今はできぬ」

「……」

何と答えるべきか。いや、答えなど返さないべきか。

迷う俺の目の前に、スズシロと名乗った従者が歩んできた。

「っ!」

白い髪を真っ直ぐに伸ばし、耳の横で一つに束ねている。こちらを見上げる瞳は虚ろで、空洞のようだ。

時の神と同じような白い紗でできた、上下に分かれた装束に身を包んでいる。

「お部屋へ、ご案内致します」

「いや、結構だ。敵地の奥深くに入り込むつもりはない」

「ほっほ、敵地ときたか。ならば、お主は神と戦うためにここまで来た、と?」

面白そうな響きを声に乗せた時の神を、睨みつける。

そうだ、これは敵のはずだ。調子を崩されるな。

「傲慢なお主に、一つだけ、教えておこう。あの方は、しばらくここへは戻られぬ。絶対神などという面倒な立場を手に入れて、予想外の忙しさに苛立っておられる」

月の神のことか?

絶対神になることに手を貸したのは、自分であろうに。

「ここへは、疲れを癒しにやって来られる。ここにおれば、儂が甘やかしてやるからのう」

やはり祖父と孫のような関係だな。だが、癇癪持ちに見えた相手を甘やかすとは。

正気に見える。見えるが、やはりどこかおかしいのか?

油断するな、俺。ここは、神の住処だ。己の常識を当てはめるな。

「あの方が戻られるまで、退屈な儂の相手をしていてもらおう。魔女の話も、できれば聞かせてもらいたい」

誰が話すものか……!

クララを閉じ込めている奴に、何故情報を与えねばならん。

唇を噛みしめる俺を面白そうに見て、時の神はくるりと体の向きを変えた。

「では、スズシロ。後は頼んだぞ」

「御意」

恭しく頭を下げて、何も映していないような真っ暗な瞳がこちらを見た。



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