2−12
木の的に向かって、ライカーンが炎を撃ち込む。
的が弾ける。
私が風魔法で周囲を包んでいるから、木の破片はこちらまで飛んでこない。
けれど、撃つたびに威力を上げるライカーンは、魔力を空にすることもなく、風の魔力を高め始めた。
「……纏え」
そう呟いて、体の周りに風の壁を作るライカーン。
上達が早いわね。
「クララどの、攻撃してくれ」
床から少し浮いて、こちらに向けて無防備に両腕を広げている青年王に、火魔法で炎の矢を撃ってみた。
彼を包む風の防壁ごと、撃ってしまったわ。
「……ぐっ……」
床に崩れ落ちるライカーンに慌てて駆け寄る。
「ごめんなさい、怪我はない?」
「……大丈夫だ、手加減してくれているのはわかっている」
額に浮かぶ汗を拭い、ライカーンは再び集中し始めた。
「もう一度だ、クララどの」
「……」
次に時の神がやって来るのが来月の終わりと聞かされたライカーンは、魔法の訓練を凄い形相で熟し始めた。
ああいうのを、鬼気迫るって言うのかしらね。
焦ってはダメだと言いたいのだけど、きっとそれは、彼もわかってる。
けれど、じっとしていられない、といった感じ。
私は、彼の訓練を見ていることしかできない。
もどかしいわ。
グラリ、と彼の体が傾いた。
「……!」
床に倒れる寸前で、風魔法で彼の体を支える。
「魔力切れ、ね。今日はもう、お終い」
悔しそうに唇を噛む王さまの橙色を覗き込んだ。
「ライカーン、約束したわね?魔力切れになる前に、訓練は終わるって」
「……すまなかった」
「無理をするのも無茶をするのも、訓練の間に避けるようにならないと。肝心な時に魔力切れを起こす、なんてことになったら困るわ」
これまで魔法なんて使ったこともないライカーンは、肉体の鍛錬と同じように魔法の訓練をしてしまう。
倒れるまで、魔法を使おうとする。
鍛錬ならばそれでもいいけれど、魔力切れは今回の場合、命に関わる。
無茶する癖を、何としてもやめさせなければ。
「……お仕置きね」
バッと視線を上げるライカーン。
そんな顔してもダメよ。約束なんだから。
「……クララどの、その、他の方法にしてもらえると……」
「ダメよ、お仕置きなんだから。貴方が反省しないと意味ないわ」
ぐぅっ、と変な唸り声を出して、青年王はその場でうなだれた。




