2−3
黙々と料理を口に運ぶライカーンを眺める。
今日は、山菜を使った炒め物と、木の実のスープ。
塔に来た最初の夜以来、料理を作らせてくれなくなっちゃったわ。
美味しいって言ってたのに、どうしてかしら。
ふ、と彼が視線を上げる。
「……茶は、美味いだろうか?」
手元に目線を落として、ふふっと笑う。
「ええ、とっても」
「そうか。よかった」
そんなこと心配していたの?
「食事の後は、また風魔法の訓練をする」
「狩りに出なくていいの?食料が尽きてしまうわよ」
「……」
黙っちゃったわ。どうしたのかしら。
もう一度、尋ねる。
「ライカーン、狩りに出ないの?」
「……何か、空腹を紛らわせるような魔法はないのだろうか」
「えっ?」
首を傾げると、苦々しい表情を浮かべるライカーン。
「何も食べなくともこの体を維持できるような、空腹を感じなくするような、そんな……」
「ああ」
彼が何を言いたいのかわかって頷く。
「できるかもしれないけど、お勧めはしないわ」
「何故?」
「それは、魔法で空腹を誤魔化すだけだもの。貴方の体にいいことではないわ」
「……」
俯いてしまった彼に続ける。
「私のことを心配してくれているのかもしれないけれど、貴方がちゃんと食事できないと、私も心配なのよ」
「……貴方が倒れるところなど、もう見たくはない……」
泣きそうな声をしているわ。仕方のない王さまね。
小さく笑って椅子から立ち上がる。彼のほうへ回り込んで、下を向く彼の頭を両腕でそっと包んだ。
「……っ!」
「大丈夫よ。魔力は吸われるけれど、枯渇するわけじゃない。少し休めば治るのだもの」
彼の頬を両手で挟んで、こちらを向かせる。
「……クララどの……」
「心配してくれて、ありがとう。でも、貴方には目的があるでしょう?それを忘れてはダメよ。
貴方にとって、最優先は、何?」
下から見上げてくる橙色をじっと覗き込んだ。
「……魔法を鍛えて、時の神の元へ……正気に戻し、太陽が再び昇るように……」
「そうね。貴方はそのために、こんな北の果てまでたった一人でやって来たのでしょう?」
そっと、彼の頭を撫でる。
強くて優しい王さま。
私の解放を望んでくれているけれど、そんなこと考えなくていいのよ。
貴方は貴方の国を守ることだけを、考えていて。
太陽が再び昇るように、明るい世界に戻るように、私も力を貸すわ。
貴方がここに来てくれて、私の世界は今、眩く彩られているの。
そのお礼に、時の神の住処へ貴方を必ず届けるわ。
塔から出られない私にできる、精一杯。
そのためなら、この肉体が滅んでしまっても、悔いなんてないのよ。




