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時果ての魔女  作者: 紫月 京
2章 通いはじめた心

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24/103

2−3


黙々と料理を口に運ぶライカーンを眺める。

今日は、山菜を使った炒め物と、木の実のスープ。

塔に来た最初の夜以来、料理を作らせてくれなくなっちゃったわ。

美味しいって言ってたのに、どうしてかしら。

ふ、と彼が視線を上げる。

「……茶は、美味いだろうか?」

手元に目線を落として、ふふっと笑う。

「ええ、とっても」

「そうか。よかった」

そんなこと心配していたの?

「食事の後は、また風魔法の訓練をする」

「狩りに出なくていいの?食料が尽きてしまうわよ」

「……」

黙っちゃったわ。どうしたのかしら。

もう一度、尋ねる。

「ライカーン、狩りに出ないの?」

「……何か、空腹を紛らわせるような魔法はないのだろうか」

「えっ?」

首を傾げると、苦々しい表情を浮かべるライカーン。

「何も食べなくともこの体を維持できるような、空腹を感じなくするような、そんな……」

「ああ」

彼が何を言いたいのかわかって頷く。

「できるかもしれないけど、お勧めはしないわ」

「何故?」

「それは、魔法で空腹を誤魔化すだけだもの。貴方の体にいいことではないわ」

「……」

俯いてしまった彼に続ける。

「私のことを心配してくれているのかもしれないけれど、貴方がちゃんと食事できないと、私も心配なのよ」

「……貴方が倒れるところなど、もう見たくはない……」

泣きそうな声をしているわ。仕方のない王さまね。

小さく笑って椅子から立ち上がる。彼のほうへ回り込んで、下を向く彼の頭を両腕でそっと包んだ。

「……っ!」

「大丈夫よ。魔力は吸われるけれど、枯渇するわけじゃない。少し休めば治るのだもの」

彼の頬を両手で挟んで、こちらを向かせる。

「……クララどの……」

「心配してくれて、ありがとう。でも、貴方には目的があるでしょう?それを忘れてはダメよ。

 貴方にとって、最優先は、何?」

下から見上げてくる橙色をじっと覗き込んだ。

「……魔法を鍛えて、時の神の元へ……正気に戻し、太陽が再び昇るように……」

「そうね。貴方はそのために、こんな北の果てまでたった一人でやって来たのでしょう?」

そっと、彼の頭を撫でる。


強くて優しい王さま。

私の解放を望んでくれているけれど、そんなこと考えなくていいのよ。

貴方は貴方の国を守ることだけを、考えていて。

太陽が再び昇るように、明るい世界に戻るように、私も力を貸すわ。

貴方がここに来てくれて、私の世界は今、眩く彩られているの。

そのお礼に、時の神の住処へ貴方を必ず届けるわ。

塔から出られない私にできる、精一杯。

そのためなら、この肉体が滅んでしまっても、悔いなんてないのよ。



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