2−2
エグラール大陸南にある、炎の国の王ライカーンには、火魔法と風魔法の適性があった。
さすが熱砂の国の若き王だわ。
火魔法は攻撃に、風魔法は防御に使える。
蓋をされていた力を解放するように、土が水を吸い込むように、彼は魔法の扱い方を覚えていく。
成長する教え子を見守るのって、楽しいわ。
理論ではなく感覚で力の使い方を覚えていくところが、脳筋という感じがする。
あ、怒られるかしら。
訓練に集中しているはずのライカーンから、じっとりとした視線が飛んでくる。
どうしてわかったのかしら。
「……クララどの、視線がおしゃべりだな……」
バッ、と口を両手で押さえる。声は出していなかったはずなのに。
「視線と表情が、語っている。何か、そこはかとなく失礼なことを考えていただろう」
拗ねたような口調が面白くて、ふふっと笑いが漏れた。
彼の傍に近寄る。そっと、額に触れた。
彼の肩がびくっと跳ねた。殴ったりしないわよ?
「魔力が空っぽになりそうね。疲れは?指先は痺れたりしていない?」
尋ねると、自分の手を見つめながら握ったり開いたりしている。
首を横に振るライカーン。
「いや、不調はどこにもない」
そう言って立ち上がった彼の顔は、私よりずっと高いところにある。
「飯を作る。貴方には、花の香りのお茶を」
「淹れてくれるの?ありがとう」
最近は、彼が淹れてくれるお茶の時間が楽しみになってきたわ。
汗を拭き、襯衣を脱ぐために衝立の向こうへ彼が歩いて行った。
そちらを見ないように、視線を外す。
一度、着替えているところをまじまじと見ていたら、真っ赤になって体を隠されてしまった。恥ずかしいんですって。
しっかり鍛えられた、猛々しい王という体つきをしていたのに。
何がそんなに、恥ずかしかったのかしら。
でも、彼の嫌がることをしてはダメよね。
彼の炎に撃ち抜かれた木の的を、時魔法で消失させる。
これはまだ、ライカーンには見せられない。
魔力をごっそり使うから、彼には使えない魔法だし。
着替えた彼が出て来た。薄青の襯衣は、彼の褐色の肌によく似合っていた。
ライカーンが持ち込んだ着替えは何着かあったが、どれもとても似合う。
「待たせた」
「平気よ」
「……的はどこへ行った?」
私が立っている床に視線をやり、ライカーンは首を傾げた。
「魔法で消しちゃったわ」
肩を竦めた私に、彼は何も答えなかった。
私が見せなかったということは、彼にはまだ早いと考えているのがわかったのだろう。
賢い子は好きよ。余計なことを聞かない人も。
くるりと体の向きを変えて、厨に向かう彼の後をついて行った。




