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時果ての魔女  作者: 紫月 京
1章 囚われの魔女と、異国よりの来訪者

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1−20 ライカーン


狩りから戻ると、クララどのが床に倒れていた。

心臓が冷えた。

慌てて駆け寄り、脱いだ外套を掛けて、その華奢な体を抱き上げた。

彼女の寝台に横たわらせ、熱がないか確かめる。

少し休めば回復すると、彼女は言うが心配でたまらない。


クララどのは、ぽろぽろと不穏な言葉を漏らす。

塔の結界のこと、誰かに監視されていること、そして、自分の魔力を吸われていること。

そんな重大なこと、部外者の俺に漏らしてしまって大丈夫なのか?

達観しているように見えて、幼い笑顔を浮かべる。

俺よりずっと年上のようにも、見た目どおりの少女のようにも見える。

自分のことには無頓着で、俺のことは一生懸命面倒を見ようとする。

俺を少しの間塔から外へ出すだけで、倒れるなんて……。

不甲斐ない自分に苛立ちが募る。

どうして俺は、こんなに無力なんだ。

国と民を守る為、力を磨いてきたのではなかったのか。

儚げな少女一人、救えないなんて……!

茶器を並べた台に、思わず拳を打ちつける。

いや、少し落ち着け、俺。

頭に血が上っていると、冷静な考えなどできるはずがない。


塔に囚われている。

俺から見たクララどのの印象だが、伝えた時には目を丸くしていた。可愛かったな。

話している時より幼く見えた表情を思い出し、ふっと笑う。

湯が沸いた。

茶壺(ティーポット)の中で紅茶の茶葉を蒸らし、時間を置いてから慎重に淹れる。

クララどのの口に合うだろうか。彼女に言われたように、俺は茶など祖国でも淹れたことはない。

だが、嗜好品だと言った彼女は、茶の時間を楽しんでいるように見えた。

喜んでほしい。笑っていてほしい。

何故こんな気持ちになるのか。

昨日会ったばかりの相手だ。得体の知れない魔女のはずだった。

俺の目を見て話す、無邪気な笑顔。

魔力を感じさせる為に、俺に触れる白く細い指。

初めて魔法を使えた俺に、全身で喜びを表してくれた、愛らしい人。


……そうか。俺は、彼女に惹かれているのか……。

腑に落ちた。だから、こんなに心配なんだ。

囚われている彼女を救いたい。この塔から、解放してやりたい。

自分の気持ちを自覚すると、彼女の力になりたいこの想いの理由もわかってくる。

惚れた女は、助けたいし、守りたい。笑っていてほしい。

会ってからの時間なんて、関係ないものなんだな。

ふう、と息を吐いて、淹れたばかりの紅茶を乗せた盆を手に、俺はゆっくりと階段を上り始めた。



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