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時果ての魔女  作者: 紫月 京
1章 囚われの魔女と、異国よりの来訪者

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14/34

1−13


塔の窓から、吹雪く外を眺める。

太陽神がこの世に顔を出さなくなってから、朝が来ても薄暗いまま。

月明かりが、一日を支配している。


『君はこの塔で、僕に捧げるための魔力を蓄え続けてね』


……誰に言われたのだったかしら……。

遠い記憶のような、昨日のことのような、頭の中がはっきりしない。

緩く頭を振って、本棚に視線を戻した。

私から吸った魔力で、塔が維持されている。

世界中から知識を集め、魔力で本という形にして、あの神さまは何がしたいのかしら。

……神さま?

首を傾げる私の耳が、小さな物音を拾った。

螺旋階段から、吹き抜けを覗き込む。

炎の国の青年王が、剣を鞘から抜かず素振りをしていた。

朝から頑張るわね。

ふふっと笑いが漏れて、自分で驚く。

昨日から私、笑ってばかりじゃないかしら。

自分の頬に手を当ててみる。

ふ、と鍛錬中のライカーンが上を見上げた。

視線が絡み合う。

この高さからでも、下から見上げる橙色が見えた。

つい、吹き抜けをふわりと舞い降りてしまった。


「!!!」

驚きに目を見開いて、ライカーンが慌てたように両腕を広げた。

あら、あの中に着地していいのかしら。

嬉しくなって、彼の広げた両腕の中に収まる。

ほおっ、と息を吐く彼は、私の肩に手を置いてあちこち確認している。

「おはよう、ライカーン」

「おはよう、クララどの。驚かせないでくれ。怪我はしていないだろうか」

「怪我?ふふっ、私が?」

彼の腕の中から逃れて、その場でくるりと回ってみせた。

「大丈夫よ。貴方は、何をしていたの?鍛錬?」

彼の手に握られた剣に視線を向けると、しっかりと頷いた。

「ああ、ここで貴方に魔法を教わることになったが、素振りは日課でな。体が鈍っては困る」

「素敵ね。体を鍛えるのが好き?」

「好きなのもあるが、必要だ。弱き王では国を守れない」

揺るぎない信念に瞳を燃やしている彼からは、今を必死に生きる力強さが伝わってくる。

泥臭く生きる人間を、私は嫌いではなかった。


剣を腰に差し直して汗を拭いている彼に、尋ねる。

「朝食は、何がいいかしら?と言っても、この塔に大した食料はないのだけれど」

「それなんだが、クララどの。この塔から外に出る許可をいただけるだろうか」

彼の言葉に動きが止まった。

この塔を出る?もう、ここで過ごすのが嫌になったの……?

答えられない私に、彼がさらに続ける。

「雪の中で生きる獣がいるだろう。肉を狩ってきたい」

震えだす腕をさすりながら、彼を振り返る。

「肉……」

「貴方は言った。塔の中は時が止まっている、と。狩りに出る数刻でも、何か影響はあるだろうか?」

ライカーンは、真っ直ぐに私を見ている。

嘘などついていないのがわかって、ほっと息を吐き出した。

「貴方は食事の必要がないと言った。ならば、自分の糧は自分で用意する。何から何まで貴方に甘えるわけにはいかない」

そう、そうよね。ここには碌な食べ物がないのだから、彼が不満に思っても仕方がないわ。

自分に言い聞かせるように頷いて、私は彼の傍に歩み寄った。



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