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時果ての魔女  作者: 紫月 京
1章 囚われの魔女と、異国よりの来訪者

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13/32

1−12


「今夜は、もう休みましょうか。初めての魔法を使って疲れているでしょう?」

そう言って立ち上がると、ライカーンがこちらを真っ直ぐに見上げてきた。

「……もう少し、訓練したいのだが……」

「焦ってはダメよ。今は平気でも、一気に魔力を使えば動けなくなるかもしれないわ」

黙り込む彼の手を取って、椅子から引っ張り上げる。

「昼寝をさせてもらったから、眠くはない」

「自分ではわかっていなくても、疲労しているのよ。いいから、いらっしゃい」

納得していないような顔の彼の手を引いて、階段を上がる。


昼間に寝かせていた予備の寝台に、そっと促した。

「さぁ、横になって。眠るまで、ここにいてあげるから

 ……子守唄でも歌う?」

からかうように言ってやると、諦めたように息を吐いて、身につけている襯衣の胸元をくつろげ始めた。

外から入ってきた時に纏っていた赤い外套と黒い軍服は、本棚の傍の上着掛けに吊るしてある。

雪で濡れていた為、乾かしているのよ。

風魔法も使えるのだけど、彼が入ってきた時は塔の扉が開いていたから、魔力が足りなかった。

私の魔力は、塔に吸われ続けている。

いえ、その話は今はいいわ。

彼を眠らせないと。


胸元をくつろげて身を楽にしたらしいライカーンが、寝台の上に体を乗せる。

白い襯衣の上から、鍛えている肉体が透けていた。

魔力を教えていた時にも上着を脱いでいたのだけど、あの時は彼に魔力を感じさせるのに夢中で気づかなかったわ。

「何を歌いましょうか」

「いや……歌はいい……」

「そう?よく眠れると思うのだけど……」

首を横に振った若き王は、大人しく目を閉じた。

綺麗な橙が見えなくなり、少し寂しい。

寂しい……?どうして……?

「おやすみなさい、ライカーン」

「……おやすみ、クララどの」

静かに答える彼の顔を見つめる。

まつ毛が長いわ。髪と同じ淡い金色のまつ毛。

南の国の人間の特徴を示す褐色の肌に、がっしりとした体躯。

話している時は精悍な印象だったのだけど、意志の強い瞳が見えなくなると、幼いわね。

じっと観察していると、ライカーンが身動ぎした。

「……クララどの、見られていると、落ち着かない」

「あら。ごめんなさい。では、私は自分の寝台へ行くわね。おやすみなさい」

「……おやすみ」

誰かにおやすみの挨拶をする日が来るなんて。

少し感動しながら、最上階の自分の寝台へと戻った。


私が去った後、青年王が甘く吐息を漏らしていたことになど、少しも気づかなかった。



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