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プロローグ
カツン、と足音を響かせて、彼が近づいてくる気配がする。
窓の外をぼんやりと眺めていた私は、振り返る。
淡い金髪、褐色の肌、橙色の瞳をした青年が、手に百合の花束を抱え、ゆっくりと歩んでくるところだった。
彼の国を示す紋章が胸元に刺繍された、黒く凛々しい軍服をきっちりと着込んでいる。
「約束通り、迎えに来た」
私は微笑む。彼が約束を果たそうと、必死に戦っていたことを知っている。
「来てくれて嬉しいわ」
差し出された花束を受け取り、芳しい花の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
途端、頭がグラリと揺れる。急速に意識が遠のいていく。
「クララ……愛している」
彼の声が耳鳴りのように、頭の奥で鳴り響いた。




