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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第10話:絢爛! アクアサーカス

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10-8:アクアニルスにお別れ

 夢のような時間は、あっという間に過ぎて。

 全ての演目が終わり、ジェーヴァさんの〆の挨拶も終わったところで解散となった。係員が現れて、帰りの案内をしてくれる。


 私たちも順番を待って外へ出た。ももちゃんは興奮が冷めやらないようで、テントを出た後も、


「すごかったね。あくあぞくさんのさーかす!」


 と繰り返していた。

 うん、実際凄かった。アクア族さんの能力には、ああいう使い方もあるんだなって。これがもし戦闘とかもあるゲームだったら、もっと物騒な使い方も……いや、やめとこう。折角、素敵で楽しい使い方を見せてもらった後なんだから。

 と。前方にジェーヴァさんの姿。帰って行くお客さん全員に、深々と頭を下げている。


「……」


 あれだけ高いクオリティのサーカス、そのオーナーでありながら、1人1人のお客さんに感謝を忘れない。いや、逆か。こういうオーナーさんが範を垂れてるから、サーカスもあの練度なのかも知れないね。

 そりゃお客さんも来るハズだよ。街の人たちも観光客も、みんな笑顔でテントを後にしてるしね。


「ジェーヴァさん」


 私たちも挨拶に向かう。カイルくんやヴィンボー家、クオルさんも続いた。


「ああ、みなさん。本日はありがとうございました」


「いえ。こちらこそ」


「たのしかった!」


「楽しかったです」


「久しぶりに拝見しましたが、相変わらず素晴らしいショーですね」


「また~~見に来ますね~~」


 口々に感想を伝える。嬉しそうに笑うジェーヴァさんの目元の皺が深くなった。なんというか、営業スマイルも含まれてはいるんだろうけど、とても自然に感じる。仕事でもありながら、その仕事が好きなんだなって。そういう笑顔に見えた。


 広場を抜けると、ミッテさんが待っていてくれた。船も発着エリアに停めてあるみたいだ。


「それじゃあ、またね」

「ばいば〜〜い」

「またです」

「じゃあね」


 みんなと挨拶。この街でのクエストは、これが最後だけど……今生の別れみたいな雰囲気にはしたくなかった。ていうか、またここでもクエスト出るかも知れないしね。

 ただ、ももちゃんは子供ながらに暫しの別れを察してるのか、大人しかった。

 最後にベシーちゃんも撫でさせてもらって、私たちは船に乗り込む。三々五々、みんなの船が発進するのを見送って。


「んじゃ、アタシらも行くか」


 船が出る。真っ暗な闇の中に飛び込むみたいで怖すぎるんだけど……と思ったら。


「わあ! でんきついた!」


 ももちゃんが驚きに声をあげる。船の出発に合わせるように、水上が光り始める。


「灯籠……じゃなくて。ランタン?」


 ガラスの小さな四角形の中に、きっと光の魔石を入れてあるんだ。オレンジの光が、転々と波間に揺れてる。


「紐の先に重石をつけて、水深の浅い所に沈めて固定してんだ」


 なるほど。錨の要領だね。だから揺れることはあっても、流されはしない。


「キレイ……」


 灯籠流しほどには数は無いけど、それでも光のラインは美しかった。でも帰り道を示してるせいか、なんとなく物寂しさも感じる。あるいは、この街との暫時の別れが私を感傷的にしてるのかも知れないけど。


「……」


 ももちゃんも、そっと私に体を寄せてくる。その丸い頬をオレンジの光が照らし続けていた。






 役所の前の桟橋に、船はゆっくりと着けた。ミッテさんとも、ここでお別れだね。

 ももちゃんが小さくハグをすると、彼女も目尻を下げた。今日でアクアニルスを発つことは告げてあるからね。


「まあ今生の別れってワケでもないし……また遊びに来なよ」


「はい。それにまたアクアニルスでもクエストあるかもですし」


「はは、違いねえ。ももちゃんも、またな」


「うん……」


 やっぱり寂しそうだ。どれくらい事情を理解してるのかは分からないけど、「別の街に行くので、しばらくは会えない」ということくらいは、きっと。

 

「……」


 手を振って、ミッテさんの渡し船を見送る。と、その途中で、対面の建物から人が出てくるのが見えた。ランタンを持っている、身なりのピシッとした男性。


「ローヴィルさんだ」


 向こうも私たちに気付いたらしく、小さくお辞儀をしてくれる。その洗練された所作が、だけどジェーヴァさんに似ていて、少し笑いそうになってしまう。

 サーカスには来なかった(というか仕事があるから来れなかった)けど、確かな親子の絆を感じるよ。


「……っ」


 ももちゃんが小さなお手々を振り振り。ミッテさんの後ろ姿にも、ローヴィルさんにも。忙しいね。

 やがてローヴィルさんもホテルの中に入ってしまい、私たち以外に誰の姿も見えなくなった。

 

 黒い大蛇のような運河に背を向けて、私たちも建物の中へと入る。

 2階に上がって、ギルドを訪ねた。


「あ、お疲れさ〜〜ま。報告か〜〜な?」


「はい。よろしくお願いします」


 ポールさんが書類にポンとハンコを押した。

 そして、報酬のお金とフラワーコインをカウンター上へ。


「ありがとうございます」


「これでこの街~~のクエストは一旦終わり~~だね」


 一旦、という言い方からしても、やっぱり物語の進行次第では新規が出ることもあるんだね。


「ポールさんも、ありがとうございました」

「ました」


「いやいや~~これが仕事だ~~からね」


 私は何も貼られていない掲示板を一瞥だけして。


「ちなみに、これからどうするべきでしょうか?」


 王都でクエストを5つこなした後は、ここに来るクエストが発生したワケだけど。


「王都に~~戻ると良い~~よ。何か新し~~いクエストが出てると思う~~から」


 あ、そういう感じなんだね。王都以外の街でクエストが尽きたら、一旦王都に戻ってみる、と。今後も同じことが起きたら、そうしよう。


「それじゃあ~~ね。他の街でも頑張る~~んだよ」


「はい、頑張ります」

「ばいばい」


 ギルドを出て、ログアウトする。

 

 ……またね、アクアニルス。美しい水の都。

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