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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第10話:絢爛! アクアサーカス

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10-7:サーカス開演です

 そして、いよいよ開演時間が迫ってきた。私たちは席番を確認して……あ。


「やじるしさん」


 チュートリアルモラトリアムが終わった頃から、めっきり姿を見せなくなった矢印さん。それが中空に現れて、下向きにチカチカしてる。多分あそこが私たちの席だね。

 近づいて見てみると、やっぱり番号と合致した。


「ん……ん」


 ちっちゃな体で椅子の上に登るももちゃん。木製の椅子だけど、小さな座布団みたいなのが敷かれてる。

 ちょっとだけ最後にお尻を支えてあげると、ももちゃんは登りきった。嬉しそうなピカピカ笑顔。なんか今日は1人で座るのがトレンドみたいだね。とはいえ、サーカスが実際に始まったら抱っこしてあげないと見えないだろうけど。

 と、そこで。


「あら。2人も来ていたのね」


「さっきぶりだね」


 声に振り返ると、カイルくんとヒューリンさん。ベシーちゃんも彼女の胸に抱えられている。


「あ、もしかしてお隣?」


「みたいだね」


 ももちゃんの隣にカイルくん、ヒューリンさんと続く席順みたい。ももちゃんが隣にやって来たベシーちゃんをナデナデしているのを、2人も微笑ましく見つめている。

 と。


「あ~~さっきぶり~~」


 私の反対隣にもお客さんが来たみたいだけど……ふんわりウェーブの赤毛に、眠たげな奥二重。クオルさんだ。

 更には私の前の席には、ヴィンボー家の面々がやって来て。


「知り合い勢揃いだ」


 ゲームならではの粋な計らいだね、きっと。

 と。全員の席が埋まったところで、照明が少し落ちる。ていうか、よく考えたらこの大きなハコの中に照明が満ちてるのって……


「光の魔石だよ」


 私が不思議そうにしてるのに気付いたのか、カイルくんが教えてくれる。ああ、光もあるんだね。テントの上部を見ると、いくつものランタンがぶら下がっていて、その中には白い石が入ってる。サーカス側がそのいくつかをダウンさせたから、少しテント内の明度が落ちたのか。


「始まるわよ」


 小声でヒューリンさん。

 テントの奥、大きな舞台が設置されてるんだけど、そこに人が出てきた。ジェーヴァさんだ。


「本日は当サーカスへお集まりいただき、誠にありがとうございます。支配人のジェーヴァでございます」


 タキシードを着て、折り目正しく礼をするジェーヴァさん。遠目にもよく映えるなあ。

 そのまま流れるような口上をいくつか述べた後、


「それでは、紳士淑女の皆様。今宵はどうぞ、ごゆるりとお楽しみくださいませ」


 もう一度礼をして〆た。途端、更に照明が落ちる。そして視界の左端にだけ強い光源。そちらを見ると、スポットライトが当たっていた。その中心には1人の女性。


「あ」


 女性の周囲に水の玉が浮かんでくる。1つ、2つ、3つ。ここからでは、彼女の額までは見えないんだけど……この離れ業を見るにアクア族さんみたいだ。


「っ!」


 女性が跳んだ。向かって左側の水球の上に着地。


 ――お~~!!


 どよめき。隣のももちゃんもビックリして、椅子の上で立ち上がってしまってる。ていうか、抱っこしてあげないと……なんだけど。


 ――わ~~!!


 目にも止まらぬ速さで、女性が2つ目、3つ目とジグザグに球の上を飛び移る。その度に高度が上がり、最後に大ジャンプ!


「わあ!」


 ももちゃんの感嘆の声。と同時、女性は空中に両腕を伸ばして、何かを掴んだ。多分、周囲と同化するような細いワイヤーだね。そのまま女性は開脚。体をグンとしならせ、勢いのままに1回転。体操の鉄棒競技みたいだ。

 女性の体は1回転の後、ポーンと宙へ放り出される。


「あっ!?」


 危ない!

 と思ったところで、乗り捨てた水の球が一斉に弾ける。そして宙に虹が架かった。女性はそのアーチの上に、トンと着地。


 ――わーー!!


 今度はどよめきではなく歓声。

 凄い。虹の上を歩いてる。本物の虹じゃなくて、色の着いた水の橋をそう見せてるのか。

 女性はそのまま涼しい顔で、壇上へ着地すると……先程のジェーヴァさんのように優雅に一礼した。


 ――ぱちぱちぱちぱち


 会場中から割れるような拍手。ももちゃんも甲高い声をあげながら椅子の上を跳び回っている。喜びを爆発させてるところ悪いけど、素早く回収。お行儀が悪すぎるからね。抱っこしてもなお、バタバタと興奮の舞を踊るので、胸や腕を叩かれて痛かったけどね。


「あ~~次の演目みたいだよ~~」


 クオルさんの声に、再び壇上へ視線をやれば。今度は男性2人組が壇上に居た。既に複数の水球を持っている。片方がそれらでジャグリングをし始め、もう1人はリフティング。


「お、おお」


 凄い。ただ少し見た目的に、さっきより弱いかなあ。なんて思ってたら、


 ――おお~~!!


 ジャグリングの球とリフティングの球が入り乱れ、入れ替わり。目まぐるしく交差する。す、凄い。片方の人の手元を見てたら、ボールが飛んで来て。受け取ったかと思えば、その人が元々持ってたボールは飛んで行く。それを相手の男性が足でキャッチ。


「凄いですね。どっちがどっちか分からなくなってきます」


 リンピアちゃんも驚きと感嘆の入り混じった声。

 クライマックスは全ての水球が、一斉に飛び回り。


 ――ピタッ


 ジャグリングしてた男性の両掌に3つ×2の6個。リフティングしてた男性の頭に2個連なって載り、両足の甲に2つ×2で4個。計12個の水球が、寸分たがわず収まっていた。

 一瞬の静寂の後。さっきの虹を歩いた女性に負けずとも劣らない拍手の洪水が鳴り響いた。ももちゃんも他のみんなに合わせて、小さなお手々でパチパチしてる。私も倣った。


「さあ! ショーはまだまだ続きますよー!」


 どこからか、ナレーションの声が響き渡る。観客のうちの何人かが指笛を吹いて答えた。

 そして大歓声。新しいキャストさんが壇上へと現れたのだ。次はどんな芸を見せてくれるんだろう。

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