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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第10話:絢爛! アクアサーカス

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66/70

10-6:仕事終わりの買い食い

 ゲーム内時間でいうと、恐らく夕方の4時前後。無事にチラシを配り終えた。ちなみに『ももちゃん8:私2』くらいの割合だったので、妹に頭が上がらない。


「おーい、終わったー?」


 かなり良いタイミングでミッテさんの船が橋の付け根に現れる。手を振ろうとして、欄干から少し顔を出したところで。


「うわ……」


 オレンジに染まる大運河がキラキラと瞬いていた。建物も陰影を濃くしており、どことなく物悲しさを感じさせる。渡しの小船たちも、少しずつ数を減らしてるみたいで。まさにアクアニルスの店仕舞いという風情だった。

 私は足元に居るももちゃんを抱き上げ、彼女にもその景色を見せてあげる。


「れっがんおじちゃんのえみたい」


 そうだね。レッガン先生がこれを描いた気持ちが、今ならよく分かる。

 っとと。そうだった。ミッテさんが呼んでるんだった。

 私は頃合いで橋の下へ降り、彼女と合流した。


「すいません。またニルスウェイン島まで」


「はいよ」


 そうして15分ほど、夕焼けの街を眺めながら船に揺られ……ニルスウェイン島に戻ってきた。

 上陸してみると、島の広場は様変わりしていた。いくつも屋台が建ち、そこで料理が売られている。


「♪♪♪」


 甲高い声をあげて大喜びのももちゃん。まあそうなるよね。ていうか、私も良いニオイに釣られて、お腹が鳴りそうだよ。


「トリッパの煮込みに、ウィンナーもあるな」


 ミッテさんも心躍ってる様子で、ももちゃんみたいに目をキラキラさせている。


「ねえね! ねえね!」


 着ぐるみの生地を引っ張られる。


「はいはい。先にジェーヴァさんに報告してからね」


 ももちゃんは膨れるけど、なんとか聞き分けてくれた。少しお姉さんになったよね。去年くらいだったら、その場に寝転がって手足をブンブン振り回してる案件だけど。

 というワケで、先程もお邪魔した事務所へ。外から声を掛けると、ジェーヴァさんの返事があったので入室。


「ああ、お疲れ様です。チラシは終わったんですね?」


「はい。手配り分と、花小路やトラットリア・ヴィンボーさんにも協力いただいて」


「そうですか。ありがとうございます」


 優しい声音で労ってくれる。その後、姉妹だけにしてくれたので、着替えを済ませる。

 事務所の外に出るとジェーヴァさんが待っていて、紙片を2枚くれた。チラシと同じ絵が描いてあるそれは……どうもチケットみたいだ。席番の数字が下部に記されている。


「これにて依頼内容は終わりですが、是非とも公演も観て行ってください」


「あ、はい! もちろん。ありがとうございます」

「ありがとございます!」


 姉妹でお礼を言って、事務所を後にする。

 さあ、これで本当に自由だね。仕事終わりの一杯は……私はお酒は飲まないから、とにもかくにも食べ物だね。ももちゃんもグイグイ手を引っ張ってくるし。


「何食べようか?」


「ぜんぶ!」


 全部は食べすぎでしょ。ちょっとお預け食らったから、ボルテージが上がってるのは分かるけどね。


「お、帰って来たかい」


 既にミッテさんは両手に食べ物を持っていた。羨ましそうに見上げるももちゃんに、皮つきフライドポテトを1つ恵んでくれる。


「幸奈も要るかい?」


「あ、ありがとうございます」


 1つ貰って食べてみる。うん、ホクホクしてて美味しいね。塩気も適量だ。しかもこれ実質ゼロカロリーなんだもんね。本当、VR様様だ。


「トリッパサンドも美味いよ。あそこの屋台だ」


 ミッテさんが指さす先、5人くらいの行列が出来てる。

 って、屋台で調理してる人……ロッコさん(トラットリア・ヴィンボーのオーナシェフ)だ。


「ももちゃん、行ってみよう」


「うん! さんどいっち!」


 大喜びだね。


「んじゃあ、アタシはテキトーに見て回ってるから」


「あ。はい」


「たまにはアタシもサーカス観てみるかあ」


 なんて呟きながら、ミッテさんはフラフラと歩いて行ってしまった。サーカスの後に私たちを送って行く関係で、ここに居なきゃいけないんだよね。ちょっと申し訳ない。


「ねえね、とりぱ!」


「トリッパね」


 ももちゃんに急かされるので、列に並ぶ。ヴィンボーさんは熟練の手捌きでサンドウィッチを作っていくので、前に5人居てもすぐに私たちの番が回ってきた。


「おや、幸奈さんにももちゃん」


「こんにちは」

「ちは」


 そろそろ「こんばんは」の時間帯に差し掛かってるけどね。


「今日は夜営業は……お休みですか?」


「はい。ここの屋台の方が稼げるからと。リンピアが」


 相変わらず、経営戦略は長女頼みだなあ。ただその長女さんの姿が見えない。


「今日は僕だけですよ。リンピアや妻も手伝うと言ってくれましたが、2人には子供たちとサーカスを楽しんでおいで、と」


 うう、お父さんだなあ。

 見通しが甘かったり、楽観主義すぎたり、色々あるけど。家族想いなのは絶対に間違いなくて、だからリンピアちゃんも呆れたり怒ったりしながらも、決して嫌うことはないんだろう。


「おじちゃんは? みないの?」


「おじちゃんは、子供の頃に飽きるほど観たからねえ。もうお腹一杯だ」


「そうなんですか? そんなに昔からあったんですか?」


「昔は違う人が運営してたんですけど、ご高齢で引退して。その際にジェーヴァさんが買い取ったという経緯ですね」


 なるほど。受け継がれていってるんだね。ジェーヴァさんが辞めた後は、ローヴィルさんが継いだりしてね。で、ホテルの支配人さんの方はローヴィルさんの子供さん(居るのかどうか知らないけど)が継いだり?

 なんて考えてると、ももちゃんがズボンを引っ張てくる。ああ、はいはい。早く食べさせろってことね。ロッコさんも苦笑して、


「……2つですか? ももちゃんと半分こしますか?」


「ふたつ、ください!」


 ありゃりゃ。

 トリッパってホルモンだし、実際ももちゃん食べれるのかなあ。やっぱり形状が気持ち悪いとかで……


「はい、どうぞ」


「ありがとございます!」


 ――もぐっ、もちゃ、もちゃ


 うん。なんの躊躇も無く食べてるよね。


「お、美味しい?」


「おいひー!」


 それは良かったよ。本当にこの子は好き嫌いがないね。それが仇になってる部分もあるけど。


 その後、私たちはフランクフルトも買って(流石にこれは2人で半分こした)楽しい屋台巡りを終えた。ちなみにももちゃんが仕事前に食べたがってた「チラミス」は、本人が忘れてるらしかったので、指摘せずにおいた。藪蛇になるからね。

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