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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第10話:絢爛! アクアサーカス

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10-2:サーカスと老紳士

 サーカスのテントはすぐに見つかった。というか、このフロートでは知らない人は居ないレベルだったみたいで。私たちがキョロキョロしてると、親切な住人さんの方から「サーカスかい? それなら島の真ん中だよ」と教えてくれたんだよね。


 というワケで、私たちは島の更に南東を目指す。ももちゃんと一緒にマップを確認すると、島全体はアーモンド形になっていた。上陸した場所から進んで、中央の膨らんでる所、そこに広場があるそうだけど……


「あ。ゆうえんち!」


 ももちゃんの小さな指が差したのは、黄色と赤の縞模様のテント。三角屋根と丸っこい胴体の部分を合わせると、かなり大きい。ももちゃんの言う通り、遊園地のアトラクションで見るようなサイズだ。まあ実際、それくらいの動員があるんだろうね。


「テントの周りにも、小さな出店があるね」


 まだ何も作ってないみたいだけど、アーケードの下に鉄板が設置されているのが見える。さっき美味しい物を食べさせる約束もしたし、出店の準備が整ったら物色してみたいね。


「後で見に来ようね」


「うん!」


 ももちゃんは出店というものがイマイチ分かってないだろうけど、どうも食べ物屋さんっぽいなというのは理解してるみたい。

 私たちはテントの傍まで来る。中に入って良いんだろうか。と思ったら、入口らしき所に紅白のロープが掛かってる。まだ準備中みたいだ。

 団長さんに会わないといけないんだけど……


「おや? もしかして依頼を受けてくれた冒険者さんですか?」


 声に驚く。いつの間にかサーカステントの脇の方(通用口があるのかな)から人が出てきていた。

 声の主は、老紳士だった。黒いタキシードを着て、シルクハットを被ってる。白いおヒゲはキレイに整えられていて、清潔感がある。紳士はシルクハットを取って、華麗に片膝を曲げた。ああ、古い外国映画で見るような挨拶だ。


「っ!」


 ももちゃんもすかさず、自分のズボンの両端を摘まんで対抗。シンシアー王妃とのご挨拶でも披露した「なんちゃって上流階級仕草」だけど……


「あれれ」


「危ないよ、また」


 バランスを崩しかけるので、慌てて背中を支える。前回の二の舞だよ、もう。


「ははは。これはこれは、可愛らしい淑女さんですね」

 

 老紳士さんが優しく笑う。


「申し遅れました。私は当サーカスの支配人、ジェーヴァです。この度は、当方の依頼を受けていただき、ありがとうございます」


「あ、いえ。そんな……私は幸奈、こっちが妹の百花です」

「ももちゃんです」


「はい、よろしくお願いします」


 やはり優雅で余裕のある笑み。なんか、なんとなくデジャヴ。うーん?


「ほてるのおじちゃんみたい」


「あ」


 ももちゃんに言われて気付く。確かにグランド・アクアホテルの支配人ローヴィルさんに雰囲気が似てる。


「おや、ローヴィルを知っているのですか?」


「は、はい。色々とお世話になったり、依頼を受けたり」


 1つ前の依頼は彼がクライアントだったし。


「なるほど……」


「お知り合いですか?」


「ふふ。親子ですよ」


「ええ!?」


 似てるどころの騒ぎじゃなかった。


「息子が独り立ちしたからこそ、私はこうして道楽でサーカスなぞ出来るのです」


「ああ、そういうことなんですね。ということは、グランド・アクアホテルの前支配人はジェーヴァさん?」


 彼は胸元に手を当てて、軽くアゴを引く。こういう所作が、サマになるね。


「まあ今は……しがない道楽ジジイでございます」


 そう言って、ジェーヴァさんは身の上話を切り上げ、掌で一点をさす。さっき出てきた通用口かな。先導するように歩き出すので、私たちもついて行く。テントシートを軽く捲り上げると、中は事務所のようになっていた。


「ゆうびんきょく」


「そうだね。郵便局の事務所みたいだね」


 郵便配達のクエストを受けた時に入らせてもらった部屋に似てる。

 小部屋の中央には長テーブルと、それを挟むように椅子が左右に配置されてる。ジェーヴァさんはそのうちの2つを引いて、


「どうぞ、お掛けください」


 と、勧めてくれる。私はももちゃんを抱っこして、1席に座ろうとする。けど。


「ももちゃんも、ひとりですわるの」


 拒否られちゃったよね。そう言うけど、アナタ最後まで1人で座ってられないでしょ。


「すわるの」


「……」


 こうなると聞かないんだから。結局、途中で退屈になってチョロチョロ動き回りそうだけど。


「それではお願いするお仕事の内容を話していきます」


 私たちのやり取りが終わったところで、ジェーヴァさんが切り出す。

 内容としては……つまりはチラシ配りらしい。どうもこのアクアサーカスは各地を巡業していて、今回は里帰り公演とのこと。ただSNSも無い世界なので、意外と帰って来てることを知らない人たちも居るらしい。折角の里帰りなのだから、町中の人に(実際に見に来るかは別として)周知したい。そこでチラシ配りというアイデアみたいだね。

 配り終えたら自由ではあるけど、報告には戻って欲しい。またサーカスの席も用意するので、出来れば観て行って欲しいとのこと。


 ちなみにここら辺の説明の途中で、ももちゃんが椅子から下りたので捕まえた。暴れる彼女に手を焼いてると、色々察してくれたジェーヴァさんが、公演に合わせて商う屋台の料理について話してくれた。それでピタリと大人しくなるんだから、ありがたいやら恥ずかしいやら。

 

「ももちゃん、ちらみすたべる」


「ティラミス、ね」


 憎きティラノサウルスの『ティ』は発音できるのに、何故なのか。

 まあとにかく、彼女が食べ物に想いを馳せて大人しくなっている間に、話は大詰め。


「最後に……お二人には衣装に着替えていただきます」


 え? 衣装?

 ジェーヴァさんが席を立つと、事務所の奥のカーテンを開ける。木製のハンガーに掛かっているのは、


「くまさん!」


 そう。クマの着ぐるみだった。その隣に小さな服も。カラフルで目にも鮮やかな……アレはピエロの衣装か。どうやら、クマさんは私の方で、ももちゃんはピエロさんみたいだね。

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