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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第9話:未完成の風景

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9-1:開かずの間の正体は

 ログイン後、早速前回のクエスト完了報告をする。今回はお金は少なめだけど、フラワーコインが計4枚も手に入った。報酬額が少なくても、こういう特典でバランス取ってる場合があるってことかな。まあどうせ、1つ1つこなしてくから、安くても高くてもやるんだけどね。

 私はステータス画面を開く。




 ====================


 達成クエスト数:8


 所持フラワーコイン:23/100


 ====================




 うん、良い感じだ。確か20枚毎に開花イベントがあるって言ってたよね。それを見に、一旦王都へ戻るというのも手だけど。

 ……ちょっと聞いてみようかな。


「ポールさん、この街でのクエストって残りはどれくらいなの?」


 教えてくれないかも知れないけど。

 と、思ったら。


「ブロンズランクだと残り〜〜2つだけ~~だね」


 アッサリ明かしてくれた。なるほど。


「大体5つくらい〜〜が基準だから〜〜」


 各都市、各ランクで5個ベースぐらいってことかな。

 とにかく、ここは後2つなら終わらせてから考えよう。


「それじゃあ、後回しにしたコレを」


 私は『No.9』の依頼書を掲示板から剥がし、ポールさんに渡した。ハンコを押してもらい、クエスト開始だ。

 

「また、ほてるいくの?」


「うん。ローヴィルさんに話を聞かないとね」


 手を繋いで階段を下りる。役所の建物を出ると、すぐ向かいがアクアホテルだ。この距離で渡し船使うの、なんかバカらしいけど……仕方ないね。


「すいませーん」


 手を挙げると、すぐに何艘か止まってくれた。うわ、入れ食いだね。この役場やホテルの前は、日本の駅前ロータリーくらいの過当競争スポットみたいだ。


「あ。前回の……」


 姉御っぽいアクア族さんだ。向こうも「お」という口の動き。私たちは、彼女のお世話になることにした。他に止まってくれた船にお詫びを入れようとしたけど……その時には既に1艘も残ってなかった。切り替えが早い。


「昨日ぶりだね。今度はどこに行きたいんだい?」


「あー、えっと……」


 すぐ向かい側のホテルを指さす。少し固まった姐さん。


「えっと、役所はこの近辺に乗り捨てても良い共用ボートを持ってるぜ?」


 ああ、やっぱりそういうのあるよね。現実でも自転車とかでやってるし。

 ただ……


「私、船を真っ直ぐ漕げないので」


 うう、だって仕方ないよ。普通に生活してて、船を漕ぐ機会とか無いし。


「あー。アンタら他所モンだったな」


「はい」


「アタシも最初はヘタクソだったし、まあ追々慣れるさ」


「へえ……アクア族さんでも、そうなんですね」


「まあね。みんな船の扱いから始めて……」


「おーい! ミッテ! 早くどいてくれ!」


 と。世間話の途中で、他の船頭さんが姐さんにクレームを入れる。あっと、そうだった。こんな駅前ロータリーみたいな所で話し込んでちゃダメだ。


「っとと、わりい! お客さん乗って!」


 姐さん(ミッテさんというらしいね)も慌てて乗船を促してくる。ももちゃんを乗っけて、私も続いた。

 船はすぐに発進し……運河の幅分だけ航行して、すぐに止まる。うん、早いね。


「そ、それじゃあ……」


「ああ、200Gな」


 恐らく最低運賃だろうなあ。ちょっと切なくなりながらも、支払いを済ませる。


「んじゃあ、今後ともご贔屓に」


 ミッテさんは颯爽と船をターンさせ、今度は運河沿いの別の建物の方へ。そこで出待ちするんだろう。渡しの船頭さんはみんなチャキチャキしてて、逞しいなあ。


「ねえね?」


「あ、うん。ホテル、入ろっか」


 ということで、私たちは中へと入る。以前と同じく、仰々しいまでのご挨拶を受けてたじろいでいると……


「幸奈さん、ももちゃんさん」


 すぐにカウンターの向こうからローヴィルさんが出てきてくれた。


「あ、ローヴィルさん。こんにちは」

「ちは」


 彼はビジネススマイルを浮かべながら、前回も使った応接室を掌でさす。あそこでお話するんだね。

 これまた前回と同じように、ノブを回して先に入り、扉を押さえてくれるローヴィルさん。


「あ、ありがとうございます」

「ありがとござます」


 先に入らせてもらい、ソファーへ。ローヴィルさんと対面の形で腰掛けた。


「早速ですが……この度は当ホテルの依頼をお受け下さり、誠にありがとうございます」


 座ったまま両膝に手をついて、ローヴィルさんが深く頭を下げる。


「あ、わ。こちらこそ」


「どういたしまして!」

 

 ももちゃんの元気なお返事に、ローヴィルさんが優しく微笑む。


「……えっと、それで。少し困ったお客さんが居るとのことでしたけど……」


 文面はそこまでストレートではなかったけど。開かずの間なんて銘打ってる辺り、割と手こずってるんだろうなあ、と。


「え、ええ。といっても、ご利用代金を頂けないとか、そういったことではないんです」


 あ、そうなんだ。正直、不法占拠されてるのかと睨んでたんだけど。


「最初から順に話しますと……」


 ローヴィルさんの話を要約すると、つまりこういうことだった。

 件のお客さんは非常に有名な画家先生らしく、ここアクアニルスに絵の題材を探しに来たとのこと。超有名人ということもあって、アクアホテルも大喜びで受け入れた。そこまでは良かったんだけど……数日の滞在予定だった画家さんは、今日で2週間近くホテルの一室を占領しているという。


「さっきも言ってましたけど、利用料を踏み倒されてるとかじゃないんですよね?」


「はい。係の者が当初の滞在期間経過時にお声掛けしたところ……金貨が100枚ほど入った袋をそのまま渡されたそうです」


「わあ」


 100万円かあ。


「これで足りなくなったら、また来い。それまで俺の邪魔をするな、とも言い付けられたようで」


 なるほど。なんか気難しそう。まあ芸術家の人って、大なり小なりこういうイメージあるけどね。

 けど、ここまで聞いた限りでは……


「当初の予定より長引いてるだけで、他には問題は無い気がするんですけど」


「ええ。幸い今の季節は寒いですし、空き室には若干の余裕がございます。お金も支払われているので、むしろそこに関しては当方としてもありがたいことなのですが」


 この盛況ぶりでオフシーズンってのが恐ろしい話だけど。とにかく、それなら予定より延びる分にも歓迎されるよね。


「ただ……お部屋にこもられていますので。少々、ニオイの方が」


「あ」


 お風呂(シャワー?)にも出てこないのかな。


「お食事も摂られたり忘れられたりと、あまりに不規則なものですから」


 直截には言わないけど……このホテルで病気になったり、最悪死なれても困るもんね。


「なるほど。それで冒険者に……」


 第三者を挟めば、ホテルの人間が直で言いに行くよりは、いくらかは緩衝になるもんね。


 正直、そんな気難しいオジサンの相手は私だって御免こうむりたいところだけど……クエストだからね。仕方ない。腹を括ろう。

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