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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第8話:崖っぷちのトラットリア

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8ー5:寂れた南西部

「それじゃあ……」


 腕まくりするビシェルさんだったけど。


「私が行くよ。お母さんたちは、まだ店やってて」


 階段の方から声が聞こえる。出てきたのはリンピアちゃん。少し疲れた顔をしてる。また赤ちゃんを寝かしつけたんだろうね。私も思い出すなあ。ももちゃんも2年くらい前は、こんなだっけ。


「そう? 閉めちゃう気だったけど……」


「お金も無いのに、すぐ閉めない」


 ピシャリと言われてしまうビシェルさん。どうも初めてのやり取りには聞こえないから、休みたがりのご両親と、そのお尻を叩く長女という図式は常態化してるんだろうね。


「下の子たちも、お昼寝に入ったから……そんなに手は掛からないよ。調理補助しながら様子見るだけで大丈夫」


 ということらしかった。


「まあまあ、お弁当作戦で目途も立ちそうだし」


「まだ立ってないの!」


 奥さんの援軍に回ったロッコさんも一蹴されてしまった。


「どうしてそんなに楽観的なの?」


 リンピアちゃんは眉間を揉む。

 なんか親近感が湧くなあ。ウチもパパがこういう所あるから。幸い、ママがキッチリしてるタイプだから私が孤軍奮闘することにはならないけど。


「とにかく。1人でもお客さん来るかも知れないんだから、CLОSEの看板は仕舞っといてね」


 とだけ言って、リンピアちゃんはお弁当の紙箱を両手に持つ。そして私たちの方を振り向いて、


「行きましょう」


「あ、うん。1つ持つよ」


 カツレツの方を受け取ると、手すきのももちゃんがパタパタと駆けていく。そしてドアを開けようと、背伸び。なんとかノブを掴んで回してくれる。


「ありがとう、ももちゃん」


 爪先立ちのまま、開くドアに連れて行かれてるの可愛い。


「賢い子ですね。お手伝い、言われなくてもするなんて」


 優しい大人が大勢見てるからっていうのもあると思うけどね。褒められるの好きだから。

 案の定、ももちゃんは、


「ふふっ♪」


 ご満悦。褒めてくれる人が居ないところでも、これくらい自発的にお手伝いしてくれたら良いんだけどなあ。

 まあ何にせよ、ドアを開けてくれたのでリンピアちゃんと一緒に外に出る。


「通りの端に、ウチの船も係留してますので」


 彼女の案内に従って、進んでいく。水面から少し高い位置にある、このストリート。石畳が所々割れているみたいで、躓かないように注意しながら歩く。ももちゃんの足元もよく見ておかないとね。


「……ボロいでしょう?」


「え? あ、えっと」


 顔に出てるつもりは無かったけど。


「良いんです。事実ですから」


 リンピアちゃんは気分を害した風でもない。


「私が子供の頃は、もう少し活気があったんですけどね。最近は南東の方が再開発が進んじゃって……」


 そうなんだ。


「こっちは廃れる一方で。なのにお父さんもお母さんも、何もしなくてもお客さんが来てくれてた頃の感覚が抜けないんですね……本当に危機感が無くて」


 愚痴が零れてくる。うん、やっぱり苦労人気質&ヴィンボー家の引き締め役だね、これは。


「まあ何とかなるでしょって……そればっかりで」


 ますますウチのパパみを感じてしまうなあ。


「さっきだって、まだ何も成果は出てないのに、もう皮算用で店を閉めようなんて……」


 まあそれは私も思ったよ。早過ぎでしょって。


「あ、す、すいません。こんな話……」


「ううん、良いよ」


 色々溜まってるんだろうしね。

 さっきチビちゃんたちを寝かしつけて戻って来た際の、彼女の疲れた顔を思い出す。


「私もちょっと気持ち分かるし。そんな簡単に上手くいく前提で動いちゃダメだよね」


「そ、そうですよね!」


 同調すると、嬉しそうに声を弾ませるリンピアちゃん。

 と。ちょうど通りの端、船がいくつも係留されている場所まで到着した。


「おふね、いっぱい」


「ね。通りの家のが全部、ここに集まってるのかな?」


「全部ではないですけど……あ、アレがウチの船です」


 リンピアちゃんは、指で1艘の船をさした。周囲の他の船に比べて大きめだ。大家族だもんね。

 そして、まだ皮算用ではあるけど。お弁当作戦が軌道に乗った時には、これくらいの大きさの船があるのは心強いよね。


「今、動かしますね」


 リンピアちゃんが近づいて行って、ロープを係留杭から外す。そのまま船に乗り込むと、すぐさま彼女の体が青く光り始める。


「わあ! りんぴあちゃんもあおい!」


 船頭さんやクオルさんと比べても遜色ない光だ。そうして、彼女の光に導かれるように船が私たちの前までやってくる。


「さあ、乗って下さい」


「う、うん」


 手を伸ばしてくれるので、カツレツのお弁当箱を渡す。船尾側に回ると、私だけ先に乗り込む。そこから妹の脇の下に手を挿し入れ、


「いよいしょ」


 ああ、重たい。すぐに船の床に下ろした。アクアニルスにずっと居たら、私の腕がムキムキになっちゃいそう。


「出します」


「うん、お願い」


 船はゆっくりと進み始める。と、そうだった。


「花小路って、場所分かる?」


「はい。行ったことありますから」


 あ、そうなんだ。


「けど最近は人が増えちゃって、行けなくなっちゃいましたけど」


 あー。それは何というか。認知度を上げて観光客を呼び込んだせいで、地元の人が行けなくなる。現実でもあることだけど、自分が当事者(というか火付け役)になると、こんなに居たたまれないものなんだなって。


「多分、ここからなら……裏道を使って10分から15分くらいですね」


 結構、良い感じだ。現実世界のピザの配達も、それくらい時間は掛かってると思うし。味も温度もそこまで落ちないとみて良い。

 あとは、本当にクオルさんの許可さえ取れれば……ロッコさんたちほど楽観視は出来ないけど、希望は持てるよね。

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