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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第8話:崖っぷちのトラットリア

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8-4:お弁当作戦

 ということで、立地の悪さと認知度の低さというのが、主な原因だろうという結論が出ました。


「立地に関しては、動かせるものでもないので仕方ないんですけどね」


 聞けば持ち家兼店舗ということだし。正直、今耐えられてるのも、賃料が要らないからっていうのも大きいと思う。


「なので宣伝ですね」


 奇しくも前回の花小路と同じ展開になった。それくらい商売において宣伝は大事ということでもある。


「うーん。実は私、店が暇な時は渡し船をやってることもあるんですけどね」


 ビシェルさんがおずおずと切り出す。


「その時に乗せるお客さんに宣伝していて……けど全然なのよ、これが」


 なるほど。でも多分、それは微々たる努力すぎるかなあ。実際、同業者の姐さん船頭には、「潰れてる」って認識されてたくらいだし。


 それに店の人が「ウチは美味しいですよ」と宣伝しても、あんまり効果って無いんだよね。   

 花小路みたいに、何か圧倒的に目を引く魅力があれば別だけど……


「このお店、名物とかあります?」


「名物かあ……」


「基本に忠実にやってきましたからねえ……」


 ダメっぽい。

 となると、どうしたものかなあ。


「ももちゃん、おしゃしんとる?」


 宣伝という言葉で何となく必要とされてるのかな、と思ったみたいだね。

 ただ繰り返しになるけど、花小路レベルのビジュアルがあってこそ、あの広告作戦は奏功したワケで……


「多分、ももちゃんには別の物を頼むことになると思うよ」


「んん?」


 疑問符を浮かべるももちゃんの頭をそっと撫でてから。


「こうなれば……お弁当販売ですね」


 これしかないと思う。この店の強みは堅実な味。ビジュアルや奇抜さじゃなくて、料理の出来で勝負するしかない。だけどその味を知ってもらおうにも、お客さんがここまで来ないのだから……逆転の発想でこっちから持って行く。


「な、なるほど。お弁当か」


 ロッコさんがアゴに手を当てて考える。


「けどねえ。ピザを作って持って行こうにも……」


「そんな容器ないからねえ」


 夫婦が困り顔を見合わせる。


「ももちゃん、ピザ用の紙箱って分かるかな?」


「ぱかってあくやつ?」


 そうそう、と私は頷く。とはいえ、流石に細かい構造まではソラでは厳しいだろうから……検索をかける。すぐに出てきた段ボール製のピザ箱。拡大して、ももちゃんに見せる。立体的に捉えないと難しそうだけど、ももちゃんなら出来るかな。


「やってみる」


 そうして、店のカウンターの上に粘土を展開。コネコネし始めた。


「おや。なんか生地みたいだね」


 さっきまでコネコネしてたロッコさんが「ふふ」と笑う。

 ももちゃんはそんな声も聞こえていないのか、紙箱の画像を見ながら成形に入った。薄く伸ばした粘土を土台にして、横の辺をつけて……


「大したモンだねえ。凄い子だ」


 集中してて聞こえないももちゃんの代わりに私が誇らしくなってしまう。やっぱりウチのももちゃんは、特別な才能があるのかも。明らかに3歳児の腕じゃないもんね。


「できた」


 薄茶色の段ボールの質感へと変じて。紙箱は具現化した。


「これなら確かに。うん、ピザも入りそうよ」


「そうか、こんな容器があれば」


 ちょっとこのゲーム世界の紙加工技術の水準が分からないから何とも言いづらいけど……恐らくプレイヤーの補助が無くても近い物は作れるんじゃないかと。


「保温性も多少はありますので、あまりに遠い場所じゃなければ」


 配達時間にもよるけど。奥さんはアクア族だし、船でスイッと届ければ……下手したらドローンと同じくらいの速さで行けるんじゃないかな。あ、でも。奥さんは調理補助とかで残らないとダメかな。私では残念ながら船で配達なんて逆立ちしたって無理だし……


「というか、そもそも注文してもらえないと、結局は持って行きようも無いんじゃないですか?」


「いえ。不特定多数相手に売るんです。運河とか、人の多い場所へ、ご飯時に持って行って」


 ビジネス街のランチタイムなんかは、店先や路面に小さなワゴンを出してお弁当を売り出している所も少なくない。アレくらいの需要があればこそ出来る戦略だけど……


「あ」


 そこで閃いた。

 多分だけど、今の花小路はそんな感じになってるんじゃないかな。放っておいてもお客さんが押し寄せる状態。

 幸い、花小路の管理人のクオルさんとは顔馴染みだし、交渉してみる価値はあるかも。そのためにも……


「ロッコさん、ピザをもう1枚焼いてください」


 まずはクオルさんに味を見てもらって、それで彼女のおメガネに適えば、というところ。


「な、なにか策が?」


「はい」


 私は閃いたアイデアを、ヴィンボー家とも共有する。


「なるほど。流石は冒険者さんねえ。顔が広いわあ」


 ビシェルさんが感心したように言ってくれるけど。広いワケじゃなくて、ピンポイントで今回のクエストに関連しそうな人脈があっただけなんだよね。


「よし、それじゃあ焼きます。少し待っていてください」


 早速取り掛かってくれる。


「おはなのみち、またみれる?」


「うん。けど今回はクオルさんに会いに行くのがメインだけどね」


「くおるさん。やさしいおねーさん」


 そうだね。


「ももちゃんは、もう少しピザの箱を作ってくれる?」


「うん。いいよ」


 素直で良い子。

 ももちゃんは再び粘土をコネコネし始める。そのカウンターテーブルの向こうでも、ロッコさんが生地をコネコネ。絶妙にシンクロしてる動きに、私は思わず鼻から息を漏らしてしまった。


 そうして。約20分後。ピザ箱の余剰生産と、ピザの方も完成する。なんというか、私はロッコさんとももちゃんを働かせてるだけで非常に居心地が悪かったよね。


「それじゃあ、この箱にピザを入れて……」


 お弁当完成だ。そしてもう1つ、ビシェルさんがやっていた揚げ物も終わったみたいで、


「はい。仔牛のカツレツも揚がったよ」


 こちらは木のお弁当箱に入れる。カツレツも作れると言うから、ももちゃんに急遽作ってもらったんだよね。

 カツレツの上にトマトベースのソースを掛けてメインディッシュ、その横にブロッコリーなどの添え野菜。


「バゲットも箱に詰めて……こっちのお弁当も完成ね」


 これで2種類の料理をプレゼン出来そうだね。どっちか(出来れば両方)引っ掛かってくれれば良いなあ。

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