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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第8話:崖っぷちのトラットリア

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48/60

8-1:順番に受けます

 とある日の昼食。

 ももちゃんが小さな手で、必死にフォークをクルクルしている。だけど中々パスタは巻き付いてくれず、パラパラと離れてしまう。つい手伝ってあげたくなるけど、グッと我慢。


「んん」


 少し苛立ってる感じだけど、投げ出さずに頑張ってる。

 そうこうしてるうち、クルンと大きめの束が巻き付いてくれた。やった。


「っ」


 ももちゃんは大口を開けて、パクリといった。その途中で、パスタは2本くらい滑り落ちたけど、構わず口に入れる。力強く唇を閉じてパスタを抜き取り、フォークを口から出す。


 ――もちゃ、もちゃ


 唇が突き出てしまって、タコさんみたいになってるし。そのまま嬉しそうに笑う顔が愛らしい。前髪が垂れてきてるので、そっと手を伸ばしてお耳に掛けてあげた。


「美味しい?」


「おいひー!」


 良かった。以前アルデンテにしたら、ちょっと硬いと言われたことがあったから、今日は気持ち長めに茹でたんだけど。これくらいが、ももちゃんの口には合うんだね。


 ――カチ、カチ


 またフォークとお皿が格闘する音が響く。そのうち少しずつコツを掴んでくると思うから……頑張れ、ももちゃん。






 今日もブロクエの世界にログイン。アクアニルスのギルド前からだね。

 前回の報酬を受け取ってないから、そこからだ。2階に上がって、ポールさんを訪ねる。


「任務完了か〜〜な?」


「はい。お願いします」


 ハンコが押される「ポン」という小気味良い音。そして、ポールさんはカウンターの上に皮袋とフラワーコインを2枚置いた。やった、ボーナスがついてるね。


「凄く感謝〜〜してたからね〜〜クオル氏は〜〜」


 あ、クオルさんとも話したんだね。 

 ……この2人の間延びしたセリフ同士の会話か。見てみたかったような、見なくて良かったような。


 報酬をありがたく受領し、フラワーコインはももちゃんのガマ口の中へ。皮袋の方を確認すると、中には11000G入ってた。


「ねんど、かえる?」


「まだ粘土は大丈夫だよ」


 前回のクエストで写真をリメインした分は目減りしたけど、微々たる量だから。あんまり買い足すと、プテラノドン作られるかも知れないし。


「それより次のクエスト、見てみよ。ももちゃん」


 話を逸らす。ももちゃんを抱え上げ、コルクボードの前へ。依頼書は2枚貼ってあった。




 ====================


 No.8


 <トラットリアの再建策>


 依頼者:料理人ロッコ


 内容:店の経営建て直し


 報酬:3200G

    フラワーコイン1枚


 備考:南西の路地にあるトラットリアを訪ねよう。報酬額が他のクエストより低いが、敬遠せずに受けられたし。


 ====================

 


 ====================


 No.9


 <アクアホテルの開かずの間>


 依頼者:支配人ローヴィル


 内容:部屋から出てこられないお客様への対処


 報酬:10000G

    フラワーコイン1枚


 備考:アクアホテルの支配人ローヴィルを訪ねよう。


 ====================

 



 という内容だった。

 あのローヴィルさんが手を焼いてるお客さんか。これは難物だろうね。トラットリアの方は味見とかもさせてもらえるかもだし、ホテルのクエストを終わらせてから、ご褒美的な立ち位置でやるのが良さそうだなあ。


「ねえね、とらとりやってなに?」


 虎鳥屋になっちゃってるけど……


「イタリアンレストランかな。パスタとか、ピザとかを出す」


「……じゃあ、ももちゃんこっちからする」


 やっぱりそうなるよねえ。


「こっちの難しそうなのからやらない?」


「じゅんばんにするの」


 ケーキ屋さんの時は入れ替えたクセに。

 まあ仕方ないか。前回も結局ごねたりせずに次のクエストもやってくれたしね。


「じゃあ、順番ね。その次は9だからね」


「うん!」


 というワケで、No.8の依頼書を剥がし、カウンターへ持って行く。

 ポールさんが受け取って、受領のハンコ。それじゃあ早速、行こう。


「ぱすた♪ ぴ~ざ♪」


 ゴキゲンだなあ。まあ水は差さないでおこう。

 階段を下りて、役所の建物を出た瞬間、


「さあ! 花小路行きの渡し船はこっちだよー!」


「こっちの方が速いよー!」


 向かいのホテルの前に停まった2艘の船から、威勢の良い声が飛んできた。競い合うような張り上げ方だ。


「おお。人気になってる」


 船はどちらも8~10人くらいは乗れそうな中型サイズだし、桟橋の上には観光客の待機列まで出来てる。


「あのふね、おはなのみちにいくの?」


「うん、そうみたい。やっぱりみんな気に入ったんだね」


「きれいだもんね!」


 そうだね。まあ私たちだけじゃなく、観光のプロであるローヴィルさんのメガネにも適ったワケだし。こうなるのも必然だね。


「よかったね、くおるさん」


「そうだね」


 花小路の手入れも、船の往来が増えれば楽になるだろうし。もちろん見物客を入れる以上、代わりに他の問題も出てくるんだろうけど。

 ともあれ。私たちのお手伝いが、こういう風に目に見える形で成果をあげているのは嬉しいよね。


「さ。じゃあ今日も頑張りますか」


「ますか」


 ももちゃんが語尾だけマネしてくる。ウリウリとほっぺを撫でてから、大運河を見やる。今日もキレイなエメラルドグリーンの流れ、そこに乗ってフリーの渡し船がいくつも行ったり来たりしてる。


 私が手を挙げると、ももちゃんもまたマネして手を挙げる。姉妹2人だから目立ったのか、すぐに船が止まってくれた。


「どこまでだい?」


 小麦色の肌が眩しい姉御って感じのアクア族さんが船頭だ。


「えっと……南西の路地にあるトラットリアって、分かりますか?」


 と訊ねるけど。姐さんは黙考してしまう。そして10秒ほどして、


「あ。もしかしてあそこかな。多分、潰れてるんじゃねえかな、もう」


 なんてことを言い出す。


「その周りに同じようなレストランってあります?」


「いや、無いと思う」


「じゃあ多分、そこです。潰れてないハズなんですけど……」


 なにせクエスト出してきたくらいだし。姐さんは「ふうん」とだけ返して、


「まあアタシは送るところまでが仕事だから。店がどうなってても、責任は持てないよ」


「あ、はい。それで大丈夫です。お願いします」


 そうして渡し船は発進する。初っ端から躓いちゃった感じだけど……大丈夫かな、このクエスト。

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