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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第7話:花小路

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7-6:花小路の価値

 そこからのローヴィルさんは速かった。そしてビジネスマンだった。ももちゃんがオレンジジュースを飲み干すのを待ってから、


「今からこの目で確認に行こうと思います。案内していただけますか?」


 立ち上がる。なんというか、本当に180°変わってしまったね。


「は、はい~~」


 クオルさんも立ち上がり、私も慌ててそれに倣う。


「ももちゃん、もうカップ置いて。立って」


 お手々を繋いで引っ張る。

 こうして私たちは花小路へとUターンした。


 船2隻でやって来た小路の入口。そこでローヴィルさんは少し難しい顔になった。


「ちょっと暗いですね。ツタのせいではなく、雰囲気自体が」


 うん、それは私も初見で思ったよね。ただ中に入るとコレも含めて「味」なんだけど。多分、彼はビジネスの観点から物を言ってるんだよね。


「花屋の店先に、明るい花を置いたりして軽減した方が良いかも知れません」


 ああ、それは良いかも。潮風に強い品種なら陳列できるだろうし。


「では入ってみましょう」


 そう言って、ローヴィルさんがパドルをゆっくりと回した。すうっと静かに船が小路に進み入る。クオルさんもアクア族の能力を使って、その後ろに私たちの船をつける。


「お、おお! これはまた」


 前の船から歓声があがる。写真で見るのより更に壮観だもんね。


「……」


 ローヴィルさんは船の中を移動して立ったり座ったり。色んな場所からの景観を確かめてるみたいだ。


「おじちゃん、きにいった?」


「ああ。凄くキレイな景色だね」


 ももちゃんに返事しながら、ローヴィルさんは検証を終えて船の中央に戻る。検分は終了みたい。一旦、花屋に戻って作戦会議だね。

 というワケで旋回。2艘はスムーズに小路入口へと戻る。


「すごい! いっかいだよ!」


 ねえねだったら、クルクル回って運任せだもんね。

 圧倒的な技術の差に凹みつつも、戻って花屋さんに入る。クオルさんが椅子を出してくれたので、みんなで腰掛けた。


「……結論から言いますと、十分に当ホテルの掲示板へ貼りだすに値する美観かと思います」


 少し興奮気味なせいか、ローヴィルさんの本音が垣間見えた。まあ本来なら、あの大きさのグランドホテルと、個人の趣味では釣り合わないのは事実だけど。


「そ、それじゃあ~~」


「ええ。新たな観光スポットとして売り出しましょう」


 やった。ビジネスにシビアな感じの彼にお墨付きを貰えた。


「やっぱり私たちだけじゃなかったでしょ? 誰が見ても目を奪われる、そういう素敵な小路なんですよ」


 クオルさんにそう言ってあげると、彼女は少し涙ぐむ。別に誰かに認められたい、人気を得たいと思って始めたものではないけど、それでもいざそうなると嬉しいものだよね。努力が報われるっていうか。


「あ……」


 ももちゃんが私の膝の上に立って、隣のクオルさんの頭を撫でる。


「よしよし。よしよし」


 悲しくて泣いてるワケじゃないんだけど。ももちゃんとしては励ましてあげたい一心なんだね。


「ふふ、ありがとう~~」


 小さなお手々に横髪を撫でられながら、クオルさんは涙声に笑みを混ぜたような声で応えた。

 まあ……ねえねの膝が痛いから、正直そろそろ下りて欲しいんだけどね。


「……広告を掲示するには当然いくらか頂戴いたしますが、こちらは小路の入場料を取って充当されるのが良いかと思われます」


 そうだね。アクアホテルだって慈善事業じゃないんだから、広告掲載費はマストだ。


「ある程度の知名度が出てくれば、ウチに出す広告は取り下げられるのも良いと思います。費用対効果が薄くなりますからね」


 そこまで言ってくれるの誠実だよね。多分、他にも広告主が一杯居るからこその余裕もあるんだろうけど。


「後は、そうですね。恐らく掲示を始めると、すぐに観光客が押し寄せますから、交通誘導員の配置や、ルール決めもなさった方が良いでしょう」


 おお、本当に色々アドバイスしてくれる。

 具体的には、1艘の観覧時間に制限を設けるとかだね。


「でも……良いんですかね~~? お金を取ったり~~見る時間を区切ったり~~」


 クオルさんは少し躊躇ってるみたいだ。彼女からすると、見てくれるだけで嬉しい、自分の作ったキレイを共有してくれるだけで嬉しい。そういうマインドなのかも知れないけど。


「そこは割り切るしかないでしょうね。この街は、貿易と観光ビジネスの両輪で成り立っています。観光客の皆様に全て無料サービスを行っていては、私たちが食い詰めてしまいます」


 観光客相手のグランドホテル支配人の言葉だから、中々に実感が伴ってるね。

 それに花の維持にも、現実問題としてお金は掛かるワケだし。というようなことを自分でも考えて呑み込んだのか、クオルさんが頷く。


「貰いすぎちゃったら~~寄付に回します~~」


 とことん善良な人だね。私は思わず笑顔になってしまって、ももちゃんも多分よく分かってないまま、けど釣られて笑っていた。


 ………………

 …………

 ……


 その後。ローヴィルさんはホテルへと戻って行った。


「体制を整えて、3日後くらいから動き始めましょう。こちらも掲示板のスペースの確保など、調整しておきます」


 とのことだった。


「本当に~~今回は助かったよ~~」


 クオルさんは私たちをホテル向かいの役所まで送ってくれた。


「ももちゃんの~~写真が無かったら~~門前払いだったよ~~」


 うん、それは間違いなかっただろうね。


「優しくて~~モチモチで~~凄い能力を持ってる子~~」


 しゃがんで、ももちゃんの頬を撫でるクオルさん。ももちゃんはまた腰に手を当てて胸を張るポーズ。それ好きだよね。


「それじゃあ~~アタシも色々と~~手配があるから~~」


「はい。頑張ってください」


「ばいばい!」


 クオルさんは船に乗り込み、すぐに青い光を伴って遠ざかっていく。心もキレイで、育ててるお花もキレイで、去り際までキレイ。素敵な人だったね。


「おはなのみち、おきゃくさんくるかな?」


「うん。きっと、間違いなく。沢山ね」


 嬉しそうに笑うももちゃんの手を引いて、私たちもギルドへ報告に向かうのだった。

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