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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第7話:花小路

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7ー3:お水をあげます

 しばらく見惚れた後、姉妹でゆっくりと顔を上げる。舳先側に居たクオルさんが、ニッコリと微笑んでいる。ご自慢の花小路だもんね。


「凄いです。こんなにキレイな水路、見たことない」


「えへへ~~頑張ったからね~~」


 実際、これだけ植えたんだよね。凄い情熱だと思う。


「このおはなの、おせわするの?」


「そうだよ~~と言っても~~アレを撒いてもらうだけだけど~~」


 と言って指さすのは、船の後ろに積んであるバケツ。乗った時から、なんかあるなあとは思ってたけど。


「やかん!」


「ヤカンじゃなくてバケツね」


 金属製だから、まあ色だけは似てるけど。


「ばけつ……」


「お水を入れておく物だよ」


「そうなの? したにいっぱいあるよ?」


 そうだよねえ。私たちが居るのは水路の上だもんねえ。

 私はクオルさんを見る。立ち上がり、私たちの横を抜け、そのバケツを持ってきた。


「運河の辺りの〜〜水なの〜〜」


「えっと?」


「この子たちは〜〜水の中に居る〜〜小さい生物を〜〜食べてるみたいでね〜〜」


 地上の植物みたいに、土から栄養を摂ってるワケじゃないんだね。あるいは土と生物のダブルかも知れないけど。


「ここら辺は〜〜水の入れ替えが無いから〜〜どうしても枯渇がちみたいで〜〜」


 食べ尽くしちゃってるってことか。


「元気が無いお花を見つけたら〜〜そこに撒いてあげて〜〜」


 言われて、私たちは水中をよく見る。幸い、水はとても澄んでるので、お花の様子もよく見える。


「あれ、くしゃってなってる」


 ももちゃんが指したのは、萎んでる紫色の花。


「あっちも」


 少し離れた場所で咲いてる白い花も、項垂れてしまってる。こっちは更に、白い花弁の先が茶色がかってきてるから、より栄養不足なのかも。


「じゃあ、ここに撒こうか」


 ただ、バケツからダイレクトは重そうだし……


「ももちゃん、柄杓とか作れるかな?」


 言いながら、検索タブで画像を出力。


「きんぴか!」


 色は別になんでも良いんだけどね。

 ももちゃんは早速、粘土をコネコネ。増量した分、少しやりにくそう。だけど、構造が簡単だからか、サクッと作ってくれた。

 金色の杓部分と、木の質感の柄の部分に具現化していく。


「わあ〜〜凄い凄い〜〜」


 今度はクオルさんが驚く番だね。


「そっかあ〜〜こういう道具があれば〜〜」


 この街でも売ってるのかは知らないけど、もし無かったら進呈しても良いよね。早速、買い足した粘土が役に立つ感じ。


「取り敢えず、掬って撒こうか」


 ももちゃんが頷いて、出来立て柄杓をバケツに突っ込む。擦り切り一杯入れようとするので、8分目くらいに修正。零したら元も子もないからね。


「良いよ〜〜そのまま〜〜」


 クオルさんも見守ってくれる。


 ――バシャ!


 水面に向かって柄杓を傾けた。中身が落ちて、波紋を広げる。ちょうど、白い花の真上辺りだ。


「よし、良い感じ……ですよね?」


「うん。完璧だよ〜〜」


 お墨付きも貰えた。

 ももちゃんも(あまり実感は湧かないだろうけど)上手くいったと分かって、嬉しそうに柄杓を振る。あ、ちょっと。ねえねに当たりそうだから、やめて。


「それじゃあ〜〜この調子でお願いね〜〜」


 と。クオルさんが立ち上がる。いきなりだったので、軽く船が揺れて驚いた。


「え? え?」


「アタシは〜〜水を汲んでくるから〜〜」


 あ、そういう役割分担なワケか。そうだよね。このバケツ1杯では、小路全体は賄えない。


「そっちに〜〜パドルがあるから〜〜適宜、場所を変えて〜〜続けて〜〜」


 漕いで位置調整しろと仰る。うう、出来るかなあ。でもまあ、全部やってもらってたら、私たちが雇われた意味無いもんね。やるしかない。


「じゃあね〜〜20分くらいで戻るから〜〜」


 と、言いながら。クオルさんがジャンプ。え!? 水に飛び込んだ! いや! え!?


 ――ちゃぷん


 クオルさんの足が、水面を踏んでる。うわ、凄い。ていうか、人間業じゃない。


「にんじゃさん!」


 そうだよね。水蜘蛛? だっけ。アニメかマンガか忘れたけど、ももちゃんと一緒に見た覚えがある。

 そしてクオルさんは私たちの驚愕を他所に、スススと走っていく。うわあ、本当に忍者みたい。凄すぎるよ、アクア族さん。


「……」


「……」


「ももちゃんも、れんしゅうしたらできる?」


「無理だから、絶対ダメだよ。溺れるからね」


 もしかして、教育上よろしくないの? アクア族。いやまあ、フィクションの世界のマネをしないように大人が見張れば良いだけなんだけどね。こないだのインビジブルマント模倣事件では、私まで監督不行き届きの罰を受けたばっかりだし……後でもう1回くらい言い含めておこう。


「さあ、続きをやっちゃおう。ここが終わったら……ねえね、頑張って漕いでみるから」


 気は重いけどね。なんか下手な人が漕ぐと、その場をグルグル回るとか聞いたことあるし。なんとかファンタジーパドルパワーとかで、良い感じに補正がかかってくれることを祈ろう。


 それから私たちは2人で船の縁を周り、元気の無さそうな花の上に片っ端から水を落としていった。流石に目に見えての変化はまだまだ先なんだろうけど、「今これで栄養摂れてるのかな」なんて話しながら、360°を終わらせた。

 そして船を動かして、また同じことを繰り返す。ちなみにファンタジーパドルパワーは存在せず、普通にグルグルしてたら偶然前に進めたというグダグダぶり。


「ねえね、ほうこうおんち」


 違うんだよ。この場合は運動音痴だね。行きたい方向は分かってるけど、行けないだけだから。

 ……まあ、どっちにせよ誇れるようなことではないけどね。

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