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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第6話:いざ、水の街へ

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6-6:新しい拠点へ

 掃除が終わり、カイルくんとアパートの外に出る。潮風がサッと頬を撫でて行って、気持ちが良かった。私もカイルくん程じゃないけど、汗はかいてるからね。掃除って何気に体力使うよねえ。


「それじゃあ次は、役所に手続きに行くよ。幸奈ちゃんたちも来るかい?」


「うん。折角だから」


 ここに置き去りにされても困るし。というか、よく考えたら。私たちって、王都に戻れるんだろうか。そこら辺もクエストの最後には確認しておかないとね。


「それじゃあ、あの小船を借りようか」


 そう言って、カイルくんは桟橋の端の方に係留してある小さな船を指さした。


「渡し船を呼ぶんじゃないんだ?」


「あはは。毎回呼んでたら破産しちゃうよ」


 それもそうか。大荷物だった往路はまだしも、身軽な状態なら自分で漕がないとなんだろう。


「よいしょ」


 早速、カイルくんは乗り込む。私たち姉妹も、さっきと同じようにして乗った。全員が船底に腰を落ち着けると、カイルくんはゆっくりとパドルを回し始めた。カヌーみたいに、船縁に固定されていないタイプだ。


「上手いね。カイルくん、馬車も扱えるし、船まで」


 普通に高スペックだよね。


「兵の訓練であったんだよ。こういう形で生きるとは思わなかったけど」


 まさか辞めた後にこそ、真価を発揮するなんてね。まあでも。日本でも自衛隊の人が、辞めた後でもそのスキルが役に立つってことも多いらしいし。


「ところで。これはももちゃんもやりたいって言わないんだね」


 ああ、確かに。なんでも面白そうなものは「ももちゃんが!」ってなるのにね。その顔を覗き込んでみると、全く興味を引かれてない様子。


「ももちゃん、お船漕ぐの、やってみたくない?」


「いい」


「なんで?」


「きょうはもう、ももちゃんつかれた」


 うーん……そりゃそうだろうけど。

 カイルくんが声をあげて笑った。


 ………………

 …………

 ……


 行きと同じ道順で、今度は細い路地からメインストリートへと踊り出る。流石は大運河、私たちの他にも船が沢山。そのどれもがアクア族の船頭さんが居るからか、私たちのより遥かにスピードが出ていて、そしてその速度で近くを通り抜けていくものだから。


「ひゃっ」


 ちょっと怖い。


「~~♪♪」


 ももちゃんは甲高い声をあげている。肝が据わってるというより、衝突した時の想像がつかないんだと思うけど。


「まあ大丈夫だよ。向こうは熟練だからね」


 意外に呑気なカイルくん。そのままマイペースで船を漕いでいく。私はなんというか、車がビュンビュン通り過ぎる幹線道路を自転車で横断しようとしてるようなイメージを持ってしまって、気が気じゃなかったんだけど。幸い、事故も無く、対岸の建物へ着いた。アパートの桟橋よりも一回り大きな物が張り出されているので、そこに登る。


「よいしょ」


 掃除でクタクタになった体には、この動作だけでも少し堪える。ももちゃんはカイルくんが持ち上げてくれて……3人とも桟橋へ上陸。そのまま玄関まで移動してドアをくぐった。


 建物の中には多くの人が居た。そのほとんどが職員らしく、窓口みたいなガラス張りカウンターの向こう側に犇めいている。概ね、日本の役所と似た構造だね。


「1階が市民課だね。冒険者ギルドも2階に入ってるから、幸奈ちゃんたちはそっちに行くと良いよ」


「あ、ギルドも入ってるんだ」


 この街のギルド、どんな感じなんだろう。


「うん。そこで今回の報酬も受け取れるから」


 あ、これで今回のクエストは達成って感じなのかな。本当に引っ越しまで付き添って、最後に部屋の掃除を手伝ったってだけの内容だったけど。

 そして王都で受けたクエストの報告を他の街でやっても大丈夫なんだね。銀行と同じ親切システムか。


「それじゃあ、行くね。カイルくん、ありがとう」

「ばいばい。べしちゃんも」


 最後に姉妹でベシーちゃんを代わる代わる撫でてから。カイルくんに手を振って別れた。そのまま1階の廊下に出て、階段を上がる。

 2階のフロアに来ると、ギルドのカウンターと掲示板が見えた。構造は王都のと似てるかな。


「いらっしゃ~~い」


 そしてカウンターの奥には男性。金色の髪を、フランスパンみたいに長いリーゼントにしてる。ワインレッドのシャツの胸元が大きく開いていて、金の胸毛が見え隠れ。わあ、環境型セクハラだ。ももちゃんも初めて見るタイプのお兄さんに、口をポカンと開けてるし。


「見ない顔だ~~ね。新規の……いや~~ブロンズか。となると移住してきたの~~かな?」


「あ、いえ。えっとクエストの関係で、こっちに来てて」


「ああ~~なるほど。完了報告~~かな。承る~~よ」


 話し方のクセも強いなあ。ちゃんと仕事はしてくれるみたいだけど。


「自己紹介がまだ~~だったね。オイラはポール。31歳~~さ」


 微妙なお歳。あと、申し訳ないけどあんまり興味ないかな。

 私たちも簡単に自己紹介して、今受けているクエストの番号を伝えた。すると、ポールさんは帳簿をパラパラと捲って、


「ああ、これ~~だね。うん、確かに完了~~だ」


 言いながら、ハンコをポンと押す。そしてカウンターの下からお金が入った皮袋を持ち上げ、ドンと置いた。その脇にフラワーコインも添えて。


「ありがとうございます」

 

 ももちゃんにフラワーコインを渡すと、ガマグチさんに仕舞い込んで、喜びのクネクネを披露してくれた。


「さてと、今日はここまで……じゃなかった」


 私たちが王都に帰れるのか、確認しておかないと。


「ポールさん、王都に帰るための乗合馬車とかってあるんですか?」


「あるよ~~当然。だけど帰る~~のかい?」


「そりゃあ……まあ……」


 答えながら、よくよく考えてみると。別にあそこがホームというワケじゃないし、どうしても帰らなきゃいけないワケでもないことに気付く。ていうか、ゲームコンセプト的には、色んな街を巡ってフラワーコインを集めるのを推奨してる感じだもんね。


「ウチにも沢山~~クエストはある~~よ? そっちを片付けて~~戻っても良いんじゃ~~ない?」


 そうだね。乗合馬車があるなら、いつでも帰れるワケだし。


「ももちゃん、しばらくこの街でクエストしてみよっか」


「ん? いいよ」


 お許しが出ました。

 と、そこで。


 ――くううぅ


 ももちゃんのお腹が鳴った。現実世界のお昼時が迫ってることだし、今日はここまでだね。

 サクッとログアウトし、ゴーグルもマットも片付けて。私たちは階下にご飯を食べに行くのだった。

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