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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第5話:キッチン狂想曲

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5ー8:連帯責任?

 メイド長さんは、料理人さんの1人にお願いし、シンシアー王妃を呼びに行ってもらった。

 残った私たちは、カルアちゃんの確保だ。


「ももちゃん。粘土に戻せる?」


「うん」


 ももちゃんを抱っこして2段目まで近づける。ももちゃんが手を伸ばして、トリモチシートに触れると、途端に粘土に戻ってしまった。


「う、うごけますわ!」


 立ち上がるカルア姫。その場で足踏みしてみて、なんともないことを確認する。

 ただ喜んでいられたのも束の間のことで。


「さてと……姫様」


「うぐ」


 助けを求めるように周囲を見回すが、誰も目を合わせない。


「何故このような王族にあるまじき行いをしたのか……」


 メイド長さんは静かな怒りを滲ませながら、カルア姫の脇の下に手を入れる。2段目から抱っこして捕獲すると、


「じっっっくりと……聞かせていただきましょうかね?」


 そのままメイド長さんはカルア姫を小脇に抱えて、階段へと向かう。


「あ〜〜れ〜〜ですわ!」


 イマイチ緊張感の無い断末魔をあげながら、犯人は回収されていった。

 後に残されたのは、私たち姉妹とアロッカさんたち。


「……いやあ、まさか姫様だったとは」

「でもメイド長が来てくれて助かったよね」

「ああ、俺たちだけではね」


 カルアちゃんの立場が立場だけにね。そう考えると、メイド長さんみたいに愛情を持って叱ってくれる人が傍に居るのは、1つとても尊いことなのかも。


「かるちゃん、おこられるの?」


 ももちゃんが不安げな声を出す。


「いやあ。そこまで酷いことにはならないよ」

「王妃様も王様も彼女には甘いからね」

「まあ少しの間、部屋で謹慎くらいはさせるだろうけど」


 また勝手に外出させるとイタズラしそうだもんね。


「きんしんって、なに?」


「お部屋の中でジッとしとくことよ」


「え? それだけ?」


「うん。けどあのお転婆姫には、それはそれで堪えると思うけどね」


 調理人さんたちはそこで一斉にクスクス笑いをする。

 だけど、ももちゃんはよく分かってない雰囲気だ。割とインドア派の彼女からすると、1日2日お部屋でジッとしておくことくらい何でもないもんね。パズルとかルービックキューブとかで遊んでたら、あっという間だろうし。


「……」


 案の定、それが罰になるのか、という顔。

 まあ子供の性格も千差万別ってことだね。

 

「とにかく、今回は助かったよ。報酬はギルドで受け取ってね」


 アロッカさんが、そう締めくくる。調理人さんたちからもお礼を言われ、手を振られ。私たちは調理場を後にした。

 その足でギルドまで行って達成報告をし、報酬を受け取る。今日はここまでかな。


「今日も沢山歩いたね」


「あるいたねー」


 階段の昇降は良い運動になったでしょう。

 心地よい疲れを抱えながら、ももちゃんと手を繋いでログアウトした。






 その翌日のことだった。

 大学から戻り、「ただいま」と挨拶すると、台所からママの返事があった。今日はももちゃんのお迎えもママだから、彼女も家に居るハズなんだけど。お返事が無くて寂しい。お昼寝かな?


 私は取り敢えずリビングを素通りして洗面所に向かおうとした……その時。横目に見たキッチンの様子、そこに違和感があった。なんかモゾモゾ動く物体があったような。

 慌ててバックすると、改めキッチンルームの中を覗く。


「……」


 やっぱなんか居る。ママのブランケットの中に誰かが入ってるみたいだ。そのちっこいモコモコ人間は、モゾモゾとテーブル近くの椅子を登り始める。

 

 ……ねえね、それは無理だと思うなあ。まずママのブランケットはインビジブルマントじゃないし。そもそもインビジブルマントを以てしても、カルアちゃんは見つかったのに。よく自分も挑もうと考えたね。


「……」


 やっぱり、ももちゃん基準では『謹慎』は大した罰じゃないからだろうね。きっと見つかってもローリスクと高を括ってるんだ。


 ――モゾ、モゾ


 登りきったところで。

 ブランケットから、まんまるお手々が出てくる。テーブルの上を探し回り……ようやくお皿の上の唐揚げを掴んだところで、


「あ! こら! ももちゃん!」


 何かの気配を感じたらしく、振り返ったママに見つかった。

 ブランケット越しにもビクッと体が跳ねる動きが分かって、私は噴き出しそうになる。


「あぁ……みちゅかった」


 みちゅかるよ、そりゃ。

 ママが調理場から出てきて、ももちゃんは簡単に捕まった。ほっぺをモチっと摘まれてしまって、身動きが取れない状態。


「もう……私のブランケットも引き摺って……」


 洗濯しないと、だね。


「ユキも見てたんなら、止めてよ!」


 あ、こっちに飛び火してきた。


「そんなこと言われても。私が見つけた時には、もうブランケット纏ってたし」


 手遅れ、というヤツだ。

 ママは1つ嘆息。私の方は放置することにしたらしく、再びももちゃんに向き直る。


「ももちゃん、悪いことしたのは分かる?」


「……」


 ママと目を合わせない辺り、ちゃんと分かってるみたいだね。


「唐揚げ、1つ減らすから」


「や! からあげ!」


「やじゃないでしょ? ももちゃんが悪い子だから、こうなるの」


「きんしん! ももちゃんもきんしんする!」


 ママが訝しげに眉根を寄せて私を見る。なので、ブロッサム・クエストの中でお姫様が同じことをして、謹慎処分を受けたことを話した。


「なるほどね。それで、ももちゃんも謹慎」


「うん!」


 良い流れになったと、ももちゃんは元気良くお返事するが……ママの方が上手うわてだった。


「じゃあ、恐竜博物館も謹慎で行かないね?」


 ももちゃんが絶望的な顔をする。こんなハズじゃなかったと言いたげだ。


「や! やあ〜〜! ぷてやのどん! ぷてやのどんみるの!」


 これは流石に可哀想だ。明後日、家族で行く予定の博物館。ももちゃんは何週間も前から楽しみにしてたのに。私が助け舟を出そうとしたところで、ママがアイコンタクト。


「じゃあ……唐揚げ我慢できる?」


「うん……」


 お、おお。より最悪の処分をチラつかせて、最初のヤツで妥協させた。


「ふふ。止めなかったねえねにも責任はあるから、2人で唐揚げ半分こね」


 え!?

 まさかの飛び火、第2弾。


「ねえね……」


 そんな目で見られると……はあ、仕方ないか。


「分かった。ねえねと半分こしようか」


 こうして、各自5個の唐揚げが私とももちゃんだけ4個半になってしまうのだった。

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