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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第1話:初めてのクエスト

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3/35

1-3:幼児特典をもらった

 お庭を歩いて真っすぐ進む。ももちゃんが草花を触ろうとするけど、手を引っ張って連れて行く。やがて城の建物入口に辿り着いた。ここまででも100メートル近く歩いたかも。

 入口の前にはメイドさんみたいな恰好の中年女性が立っていた。アングロサクソンな顔立ちをしている。


「どうぞ。王がお待ちです」


「あ、はい」


 王様と会えるみたい。


「おうさま……えらいひと?」


「そうだよ。大人しくしてないとダメだからね」


 騒いだりしたら、捕まって牢屋に入れられちゃうかも。そんな脅し文句も浮かんだけど……そこまでしないでも、ももちゃんは賢い子だから大丈夫なハズ。


 私たちはメイドさんに連れられて、城中央の階段を上る。2階、3階へ。長い。

 ももちゃんが途中でダレちゃって抱っこしてるのもあって、階段を上るだけで息が切れてしまう。これは私にとっても、このゲーム、良い運動になるかも。


「ふう、はあ、はあ」


 やがて階段の終点が見えてきて、上りきったところで妹を下ろす。はあ、腕が疲れてる。ちょっと休憩……あ、ダメだ。王様と目が合ったし。

 王様は柔和な顔つきの中年男性だった。肩までありそうな金髪の毛先が左右ともクルッと外巻きになっているのが少し可愛い。赤いガウンのような物を羽織っていて、肘掛けの立派な椅子にジッと座っている。


 メイドさんはここまでのようで、サッと道を譲って掌で前方を示された。赤い絨毯の敷かれた道を歩いて、玉座の少し手前へ。どれくらいまで近づいても良いのかな。不敬とかいきなり言い出したりは無いだろうけど。

 と思っていたら、


「よく来たな。冒険者を志す者たちよ」


 イベントが始まった模様。


「へあーろん!」


 ヘアーアイロンのことね。クルッと巻いてるからね、王様。でも静かにしようね。


「しー! だよ。ももちゃん」


 繋いでいる手を少し揺らしてあげると、ももちゃんも静かになる。「大人しくしてて」という言いつけを思い出してくれたみたいだ。


「……お主らも知ってのことと思うが、今この国は存亡の危機に瀕しておる」


 話が進む。存亡の危機、そこまで深刻だっけ? 確か……


百花樹ひゃっかじゅの開花が、大祭までに間に合わぬかも知れぬのだ」


 そうそう。あらすじに書いてたのは、そんな設定だった。百花というところに、ちょっと運命感じちゃったのもあって、買ったんだよね。


「百花樹が咲かねば、人々はションボリし、仕事をやる気も失ってしまう」


 花が咲かないだけで、そこまでなっちゃうモンかなあ。


「そうなれば国も終わりである」


 脆弱……

 まあもしかしたらファンタジーお花パワーみたいなのが、この世界の人たちの生きる原動力という可能性もあるけど。


「ファンタジーお花パワーが尽きてしまう」


 本当にあった!?


「そこで、余は冒険者を広く募ることにしたのだ」


 繋がりがあまり見えないんだけど……質問とかしても良いものなのかな。

 と思ったら、


「百花樹のエネルギーはフラワーコイン。冒険者がクエストをこなすと貰える報酬なのだ」


 ということらしかった。なるほど。けどそのコインは王様が発行しているのでは? とかツッコんじゃダメなんだろうな。基本、子供向けだしね。


「フラワーコインを100枚集めるのだ。さすれば百花樹も100の花を咲かせるだろう」


 ということは、クエスト100かな。あるいはボーナスとかもありそうだけど。


「ゆけ! ももちゃんと、付き添いの者よ! まずは街へ行き、冒険者ギルドに登録するのだ!」


 付き添いの者!? 保護者に対する扱いが雑過ぎるよ。

 そして王様の話は終わったみたいで、端の方で固まっていたメイドさんたちが徘徊を始める。イベントはここまでか。

 ……これは立ち去れば良いのかな? 


「ももちゃん、行こうか」


 繋いだ手を軽く振って、ももちゃんを促す。

 歩き出し、階段の手前まで行ったところで、


「ああ、そうだった! 忘れるところだった」


 王様が急に大声を出した。ビックリしたよ。

 振り返ると、王様はメイドさんに指示を出し、その彼女がパタパタと駆けてくる。


「ももちゃんは7歳未満であったな。幼児の冒険者にはお助けアイテムを渡す決まりになっていてな」


 おお。これは……プレイヤーパーティーに7歳未満の子供が居た場合の追加イベントかな。居なければ、あのまま普通に見送られてたんだと思う。


「こちらになります」

 

 メイドさんが差し出してきたのは……


「ねんど!」


 ももちゃん大喜びだ。手を繋いだまま、ピョンピョンするモンだから、腕が引っ張られて痛い。


「ねえね、ねんど!」


「分かったから」


 手を離すと、ももちゃんが両手を伸ばす。メイドさんは軽くしゃがむようにして妹にソレを渡した。

 白い紙粘土みたいに見えるけど……これがお助けアイテム?


「魔法の粘土……それで成形した物は、実際の物体として具現化するのだ」


「へえ! 凄い!」


「ぐげんか?」


「目の前に、本物になって出てくるんだよ」


 説明が難しいな。実際にやってみた方が早いかも。


「ももちゃんが好きな物を作ってみて。そしたらそれが本物になるから」


「ぷてやのどん!」


「プテラノドンはちょっと……」


 ここで具現化したら大変なことになりそう。


「じゃあ、おぼうし! あつかったらかぶるの!」


 保育園での教育が行き届いてるね。先生たち、ありがとう。

 ももちゃんは、その場にしゃがみ込んでしまう。そしてお城の床でコロコロと粘土を転がす。カーペットの毛とか全くつかないし、粘土の方もそっちに粘着することもない。凄い。ファンタジー粘土パワー(ご都合主義)だ。


 真剣な表情でペタペタするももちゃん。手の甲のもっちりと手首のもっちりの間に、深い線が出来てる。赤ちゃんの頃の名残だね。触ると気持ち良いんだけど……集中してる時は、邪魔すると怒られるから我慢する。


「……」


 粘土はちょっとずつ帽子の形になっていく。ヘタッと柔らかい園児帽。後ろに日よけ用のタレまで作ってる。本格的だ。


「できた!」


 ももちゃんが持ち上げる。すると。白い粘土で成形された帽子は、みるみる桃色に色づいて、質感まで布になっていく。


「わあ! 凄い!」


「おぼうしになったよ!」


 あっという間に、本物の帽子に変わってしまった。

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